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36 ジンベイザメ 日本周辺

Whale Shark

Rhincodon typus

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最近一年間の動き

世界的には、特に目立った動きは見られなかった。また2008年の日本周辺での出現は 最近の中では最も多い23個体が確認された。


利用・用途

鰭はフカヒレスープの原料に、肉は食用になるが、日本ではほとんど利用されない。 まき網、竿釣り漁業のさめ付き操業の指標となっている。近年、幾つかの水族館で飼育・展示が 行なわれるようになってきた。


漁業の概要

我が国ではジンベエザメを対象とした漁業はない。定置網への迷入は相当数あると 思われるが、商業的価値はないので、放流あるいは廃棄されるのが普通である。市場に水揚げされる 例は少ない。定置網の迷入は主に沖縄本島から九州、四国太平洋沿岸で起きている(内田1995)。


図1

図1. 日本周辺と世界におけるジンベイザメの分布 (内田1995, Last and Stevens 1994)


表1

表1. 本邦周辺におけるジンベイザメの年別出現記録 (さめ付き操業は日本周辺海域のまき網漁船のさめ付き操業回数)


図2a
図2b

図2. 日本のまき網漁獲成績書資料から求めたまき網の日本東沖漁場(常磐沖から三陸沖合)と南方漁場(フィリピン東方沖合)における全操業数の経年変化とサメ付き操業数の変化


図3b

図3. 1970年から2006年までの日本沿岸における定置網漁労体数の推移 (農林省統計情報部 1972-1973、農林水産省統計情報部1974-2003、 農林水産省統計部 2004-2008)


生物学的特徴

【分布】

ジンベエザメは全世界の熱帯および温帯に分布し、外洋にも沿岸にも回遊する。赤道を中心に概略、南は35?S、北は30?Nの帯内に分布し、暖流の動きに従ってさらに高緯度にも出現する(図1)。太平洋西岸の北海道沖(43?N)や大西洋西岸のニューイングランド沖(42?N)などへの夏季の出現がその例である。適水温や餌料生物の状況に従って移動するのは確かであるが(岩崎 1970、Clark 1992)、いかなる距離をどのように回遊するのか、生息深度などもよくわかっていない。近年、衛星追跡によるジンベエザメの回遊経路の解明が試みられ、北米バハ・カリフォルニア沖で放流された個体が37ヵ月後に西部太平洋赤道域まで移動したことが確認された(Eckert and Stewart 2001)。

ジンベエザメの系群構造などについては、ほとんどわかっていない。ジンベエザメは世界の熱帯から温帯域に分布することから、大西洋に分布する個体群は太平洋・インド洋に分布する個体群から隔離されているであろう。太平洋・インド洋・大西洋における東西あるいは南北の系群が存在するかどうかは、まったく不明である。太平洋では長期にわたる東西方向の移動が知られているので、個体群内の東西交流はあるであろう。インド洋との関係に関しても不明である。


【産卵・回遊】

本種の繁殖については長い間謎であったが、1995年に台湾で漁獲された11 mの雌が妊娠しており、両子宮中に300個体の胎仔と卵殻を持っていた。この胎仔のうちの一尾は日本の水族館で143日間生存した。これにより、ジンベエザメが卵胎生であることが明らかになった。本種の小型個体は55〜93 cmまでで、世界に9例しか報告例がなく、出生時の大きさはこの範囲にあるであろうが、特定されていない(Joung et al. 1996)。


【成長・成熟】

本種は世界最大の魚類といわれているが、最大体長は17〜18 m、あるいは21.4 mという説もあるがはっきりしない。13.7 mというのが本種の最大としてよく用いられる数値である。最新の正確な計測は12.1 mである(Compagno 2001)。

ジンベエザメの飼育下(容量1,100トンの水槽)における年間の成長は29.5 cm(全長;搬入時3.65 mで5年7ヶ月間の飼育)および46 cm(搬入時4.4 mで1年9ヶ月間の飼育)であった。容量5,400 トンの水槽では45.5 cm(搬入時4.1 mで4年4ヶ月の飼育)であった(内田 1995)。年間の成長が29.5 cmという例もあるが、飼育期間の後半、体調不良が長く続いたため年平均成長率が低かったと推定される。これらのことから、全長3〜6 mくらいの若齢個体では、少なくとも年間45 cmくらいの成長があるものと推定される(内田 1995)。


【食性】

ジンベエザメはプランクトン捕食者である大型の4種の板鰓類のうちの1種である(他の3種はウバザメ、メガマウス、オニイトマキエイ)。大きな口を開けて遊泳し、コペポーダなどの甲殻類のほかに、イワシ、カタクチイワシ、サバ、小さなまぐろ類、ビンナガ、イカなども捕食する(Compagno 2001)。


資源状態

【資源の動向】

定置網における迷入は内田(1995)によれば、沖縄本島の定置網で1979〜1994年の16年間に78尾が報告されている。年平均4.9尾であり、季節は3〜9月であるが夏が多い。四国太平洋岸では1989〜1993年の5年間で25尾が報告されている。本海域でも年平均5尾であり、6〜7月に最も報告されている。

表1に1970年から2002年までの、文献情報等から収集したジンベエザメの日本周辺での出現記録およびまき網漁業のさめ付き操業の記録を示した。ジンベエザメは毎年2尾から16尾程度が定置網などに迷入している。また、まき網漁業のさめ付き操業の回数は1990年代に増大し、1996年から1998年では毎年200回を越えている。双方の情報を考慮すると、日本周辺海域には毎年かなりの数のジンベエザメが来遊してくると考えられる。

図2に日本のまき網漁獲成績報告書から求めたまき網の日本東沖漁場と南方漁場(常磐沖合から三陸沖合にかけてと、フィリピンの東方沖合)における操業回数の経年変化とさめ付き操業数(ジンベエザメ)の変化を示した(遠洋水産研究所内部資料)。日本の東沖漁場では、さめ付き操業の年間操業回数は1970〜1980年代には10〜50回程度で推移していたが、1990年代に入って年間50〜200回へと急増した。これは北部まき網船がカツオを主体とした操業を展開したためで、結果としてさめ付き操業が多くなった。南方漁場では1980〜1990年代前半まで年間20〜100回程度で推移している。これらの資料がどの程度ジンベエザメの出現頻度を表しているのかは検討中であるが、少なくともジンベエザメの出現頻度が歴史的に減少しているような様子はみられない。

【漁獲圧の動向】

本種を直接目的とする漁業がないので、最もよく迷入されると考えられる定置網の設置数を検討した(図3)。過去30年間で大型定置網の稼働統数は800から1980年代に900に増加し1990年代には再び800付近に減少した。小型定置の稼働統数は1980年代前半に16,000ヶ統に達し、以後減少して2005年では約11,200ヶ統である。さけ定置網の数は期間を通じて増加し、約400から900ヶ統となった。大型、小型、さけます定置網の合計では、1970年に約12,000ヶ統であったものが1980年代前半には最も多い約18,000ヶ統に達した。以後徐々に減少し、2005年では約12,800ヶ統になっている。これら定置網がジンベエザメに対し漁獲圧力となるかどうかは不明であるが、仮に漁獲圧として働いているのであれば、1980〜1990年代に漁獲圧が徐々に減少したことになるだろう。


管理方策

IUCN(国際自然保護連合)はジンベエザメを、過去に対象漁業によって漁獲量と資源が減少したこと、再生産率が低いこと、そして将来的に対象漁業と混獲により資源が減少する可能性があることから、危急種に分類している。ジンベエザメは2000年のワシントン条約第11回締約国会議では米国により附属書II掲載が提案されたが否決され、2002年の第12回締約国会議でインド、フィリピン共同の附属書II掲載が提案され、採決の結果、可決された。

我が国にはこの種を目的とした漁業が存在しないので、積極的な漁獲努力は行われていない。しかし、周辺諸国(台湾、フィリピンなど)ではジンベエザメの商業漁業が存在するので、わが国としてもこれらの種の消長を注意深くモニターする必要があるだろう。


ジンベイザメ(日本周辺)資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 調査中
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
年間数尾から数十尾程度の迷入?
管理目標 検討中
資源の現状 検討中
管理措置 ---
資源管理・評価機関 FAO, CITES

執筆者

まぐろ・かつおグループ
混獲生物サブグループ
遠洋水産研究所 混獲生物研究室

松永 浩昌


参考文献

  1. Anon.(鹿児島水族館). 2001. 鹿児島県の海にやってくるジンベエザメ. さくらじまの海 2001年4巻第4号 通巻13号: 2-3.
  2. Clark, E. 1992. Whale sharks. National Geographic, 182(6): 120-138.
  3. Compagno, L.J.V. 2001. Sharks of the world. An annotated and illustrated catalogue of shark species known to date. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes No.1, Vol.2. FAO, Rome, Italy. 269pp.
  4. Eckert, S.A. and Stewart, B.S. 2001. Telemetry and satellite tracking of whale sharks, Rhincodon typus, in the sea of Cortez, Mexico, and the North Pacific Ocean. Env. Biol. Fish., 60: 299-308.
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  8. 小笠原チャンネル. 2004. 小笠原の日々: ジンベイザメ. 2004年10月27日(水) http://www.ogasawara-channel.com/diary/archives 000394.html (2005年11月17日)
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注:ジンベイザメとジンベエザメの表記は原文のままとした。