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31 カツオ インド洋

Skipjack

Katsuwonus pelamis

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図1. EUまき網漁獲努力量分布図(2007 vs 2002-2006の平均)。ソマリア沖における海賊被害回避のためMPA(モラトリアム)のような海域が2007年に形成された。


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図2. インド洋カツオ国別漁獲量(1950-2008)(IOTC データベース)(2009年10月)


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図3. インド洋カツオ漁法漁獲量(1950-2008)(IOTC データベース) (2009年10月)


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図4. インド洋カツオ海域別漁獲量(1950-2008)(IOTCデータベース:2009年10月) 東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


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図5. インド洋におけるカツオ分布、繁殖域、および漁場


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図6. EUまき網ノミナルCPUEの年変動(付き物操業、素群れおよび2種合計)


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図7. 図6のノミナルCPUE(2種操業合計)が標準化されたCPUEの年変動 (漁獲効率が一定の場合、年に2%、3% 増加した場合)


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図8. EUまき網船(付き物操業)で漁獲された緯度帯別カツオ平均体重の年変動


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附表1. インド洋カツオ国別漁獲量(1950-2008) (2009年10月現在)


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附表2. インド洋カツオ国別漁獲量(1950-2008) (2009年10月現在)


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附表3. インド洋カツオ海域別漁獲量(1950-2008) (2009年10月現在) 東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


最近一年間の動き

2006年の総漁獲量は61万トンとなり過去最高を記録したが、2007-2008年にはそれぞれ45-41万トンと急減した。これは、ソマリア沖の海賊問題回避のため、EUがソマリア沖で500海里以内でのまき網操業を自粛したことが主因となっている。


利用・用途

缶詰、かつお節、乾燥品などの加工品の原料として利用される。


漁業の概要

インド洋でのカツオ漁獲量は、1950年から1983年(西インド洋でのまき網漁業が本格化する以前)までは最大7万トン程度であった。1984年から漁獲量は急増し10万トンを超え、1988年には20万トン、1993年には30万トン、1999年には40万トン、さらに2005年には50万トンを超えた。翌2006年には61万トンと最大漁獲量を記録した。しかし2007-2008年は、ソマリア沖の海賊回避のため、ECまき網船がソマリア沖500海里での操業を自粛したことにより(図1)それぞれ45-41万トンへと急減した(図2, 附表1)。

最近5年間(2004〜2008年)の平均漁獲量は49万トンと推定されている。漁業国としては、モルディブ(5年間の平均漁獲量:11.3万トン)、次いで スペイン(8.2万トン)、スリランカ(6.9万トン)、イラン(6.9万トン)、インドネシア(4.9万トン)、フランス(4.1万トン)、セーシェル(3.7万トン)となっている(図2、附表1)。特に、イランの流し網漁業による漁獲量が近年急増している。

最近5年間の平均漁獲量のうち、38%がEU(スペイン・フランス)とセーシェルを中心としたまき網漁業、31%が流し網漁業(主にインドネシア、イラン、スリランカ)、26%がモルディブなどの竿釣り漁業、5%がその他の漁業という内訳になっている(図3、附表2)。2006年までは全漁業の漁獲量が増加する傾向にあり、中でもまき網漁業の漁獲増大の比率が高く、FADsの利用拡大によるところが大きかった。最近年では、まき網による漁獲のうち80%がFADsでの操業によるものである。

また、西インド洋(FAO51海域)と東インド洋(FAO57海域)における最近5年間における平均漁獲量の割合は、76%:34%となっている(図4, 附表3)。

インド洋における日本のカツオ漁獲は、その殆どがまき網漁業によるものである。1957年以来、民間のまき網船1-2隻が1980年代半ばまで操業していた。1988年以降、まき網船数が増加し最大時には10隻となり、1992〜1993年の漁獲は3万トンを超えた。また、1977年からの海洋水産資源開発センター(現在:水産総合研究センター開発調査センター)の日本丸が試験操業を開始し、現在までほぼ毎年調査を実施している。1994年以降民間のまき網船数は徐々に減少し、最近5年間では日本丸の試験操業および1−2隻のまき網(民間)船が操業を行っているだけで、漁獲量は1,500〜4,400トンで推移している(図2, 附表1)。


生物学的特徴

カツオは3大洋すべての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する。インド洋では40°S以北に分布するが、紅海・ペルシャ湾には見られない(図5)。インド洋のカツオ資源は他2大洋とは別系群と考えられている(Matsumoto et al. 1984、St?quert and Marsac 1986、Adam 1999等による。)。

インド洋のカツオの成長研究は確実な年齢形質が確認されておらず、標識魚の放流・再捕データを使っても生活史の限定的な期間における成長を推定するに留まっている。体長組成解析からは満1歳で30 cm台、満2歳で50 cm台、満3歳で60 cm台に達する成長パターンが示されている。体長体重関係は、尾叉長50 cmで概ね2.5 kgとされる。寿命に関して言及されてはいないが6歳以上には達するであろう。

成熟は尾叉長39〜43 cmで開始し、産卵は表面水温24℃以上の水域で広く行われ、仔魚は30〜36° Sから11〜15° Nまで出現する。産卵期は海域によりピークが見られるが、周年と考えられる。

餌は魚類・いか類・甲殻類で、カツオ成魚の捕食者はさめ・かじき類が挙げられている。また、未成魚以下の成長段階における捕食者は、他大洋と同様、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他大型の魚食性魚類や海獣、海鳥であろう。


資源状態

インド洋のカツオ漁獲の半分近くを占めるまき網による漁獲量変動はエル・ニーニョやダイポール現象影響を受けることや、カツオに対する漁獲努力の変動もキハダ等の漁況の好・不調と関連することなど、本資源には多くの評価計算し難い要因がある。このことから、現在のところインド洋のカツオ資源についての数学・統計モデルによる資源評価は行われておらず、漁獲物サイズとCPUEの動向が資源状態の判断材料とされている(IOTC, 2008-2009)。

2009年の第11回熱帯まぐろ作業部会でCPUEおよび平均体重を解析した結果以下のことが分かった。(a) まき網CPUE(探索日あたり)は素群れ操業の場合変動が小さいが、付き物操業の場合には2002年のピークから2006年まで変動しながら緩やかに減少してゆき、2007-2008年には急減した(図6)。(b) 平均体重は、付き物操業の場合2.1-3.0 kg内で大きく変動したが、最近3年間は減少している。素群れ操業の場合には平均体重は大きな違いはなかった(図7)。(c) また、付き物操業で漁獲されたカツオは、緯度帯により平均体重の年トレンドは若干異なるものの、全体的には減少傾向にあることが示唆された(図8)。(d) EUおよびセーシェルのまき網漁業のCPUE解析の結果、漁獲効率増加率の仮定によりCPUEの年トレンドが異なるものの、全体には緩やかな減少傾向また最近年(2007-2008)では大きな減少が見られた(図9)。そのほか、カツオ漁獲の増加率(1980年から年間1万7千トン平均で増加)が継続していたが、最近年は増加率が減少しつつあることもわかってきている。


管理方策

第11回の熱帯まぐろ作業部会(2009年10月)における資源解析の結果を受け、第12回科学委員会(2009年12月)は、管理方策に関し以下の考え方を示した。カツオは生産性が高く生活史の特性から簡単には過剰漁獲になるとは思えない。しかしながら、最近年まき漁業CPUEが減少傾向を示しており資源動向が懸念されはじめている。そのため、2010年の第12回熱帯まぐろ作業部会で、標識データも取り込み本格的な資源評価を実施し資源動向を把握する予定である。したがって、現時点では資源動向に関する十分な情報が少ないため、科学委員会は管理方策に関する勧告を出さないことにした。

また、モルディブなど島しょ国・沿岸国が、EU諸国(遠洋漁業国)のまき網によるカツオの漁業相互作用(先取り)の悪影響を懸念しており、第11回熱帯まぐろ作業部会では両者の激しい対立(意見の相違)が浮き彫りになった。そのほか、まき網漁業によるFADsの利用拡大によるカツオ生態への影響が問題視されている。そのため、今後まき網およびモルディブ等の漁業データの包括的整理、各々の漁業におけるサイズ別漁獲量・CPUEデータの解析、FADsに集まるカツオの生態や資源との関連性等に関する調査が必要である。そして、その結果に基づき管理方策も検討してゆく必要がある。尚、2003年IOTC年次会議で初めて本海域に保存管理措置、全長24 m以上の漁船の総隻数等の制限が導入された。


カツオ(インド洋)資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
41.4〜61.3万トン 平均:49.4万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.5〜4.0千トン 平均:2.8千トン
管理目標 MSY
資源の現状 最近年(2007-2008)まき網付き物操業CPUEが減少し始めており、 以前に比べ資源の状況は悪くなりつつあると見られる
管理措置 特にない。一般の漁業管理に関してはインド洋メバチ参照。
資源管理・評価機関 IOTC

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 国際海洋資源研究員

西田 勤

参考文献

  1. Adam, M. S. 1999. Population dynamics and assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) in the Maldives. Doctoral thesis of the University of London. 302 pp.
  2. IOTC. 2008. Report of the Eleventh Session of the IOTC Scientific Committee. 167 pp.
  3. IOTC. 2009. Report of the Twelveth Session of the IOTC Scientific Committee. 190 pp.
  4. Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon. 1984. Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech. Rep. NMFS Circ., 451: 1-92.
  5. St?quert, B. and F. Marsac. 1986. La p?che de surface des thonid?s tropicaux dans l'Oc?an Indien. FAO fisheries technical paper 282. FAO, Rome, Italy. xiv +213 pp.