--- 詳細版 ---

29 カツオ 東部太平洋

Skipjack

Katsuwonus pelamis

                                                            PIC
[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]
図

図1. 東部太平洋における漁法別カツオ漁獲量 (データはAnon. 2009)


表

表1. 東部太平洋におけるカツオの国別漁獲量 (t) Anon. (2009) ただし、2008年は暫定値


図

図2. 東部太平洋におけるカツオの分布と漁場 (Matsumoto et al. 1984、Schaefer 2001)


図

図3. 東部太平洋におけるカツオの成長 (Matsumoto et al. 1984)


図

図4. A-SCALAで推定した月毎の漁獲死亡係数、9〜20月齢をグループ化しその平均を 示したもの(左)と21〜32月齢の平均(右)(Anon 2006)


図

図5. A-SCALAで推定したカツオの加入量(平均に対する相対値、上)と資源量 (千トン、下)(Anon 2006)


図

図6. データもしくは単純な資源評価モデルを基にした資源の現況の指数 (Anon 2009))


最近一年間の動き

2008年の東部太平洋におけるカツオの総漁獲量は29.6万トンであり、過去最大値を記録した2006年の29.9万トンに匹敵する。2009年6月のIATTC年次会合に提出された報告書では、この漁獲量集計値に含まれていない幾つかの国の漁獲量があることから、さらに漁獲量が増える可能性が高い(Anon. 2009)。資源評価における留意点は、2000年以降の平均体重の減少と過去20年間に及ぶ漁獲率の増加であるが、近年の漁獲物測定データとモデル計算から得られたCPUE等の指標値ではそれらを検証することができていないため、資源状態が変化しているかどうかは不確かである。


利用・用途

本資源は、主に缶詰原料として利用されている。


漁業の概要

2007年の東部太平洋におけるカツオ総漁獲量は約21万トンと推定され、2008年の暫定値では過去最大レベルの29.6万トンに増加した(表1: Anon. 2009、図1)。東部太平洋のまき網漁業では、漁獲物の一部が投棄されることがあり、1993〜2005年の平均投棄魚割合は約12.3% 〜23.1%と推定された(Anon. 2007)。国別の漁獲量ではエクアドルの漁獲量が全体の約半分を占め、パナマ、メキシコ、ベネズエラ等が続いている。日本は、本海域でカツオを主対象とした漁業を行っておらず、漁獲量ははえ縄によってマグロ類に混じって漁獲される数10トン程度の極めて僅かな量のみである。本海域では、1950年代までは沿岸での竿釣漁業が主であったが、その後大型の竿釣船がまき網船に転換し始め、1960年代からまき網による漁獲量が増大した。1978年に約17万トンとなってピークに達した後、1985年前後に5〜6万トン台まで減少したが、その後はほぼ右肩上がりに増加を続け、20〜30万トンレベルを維持している。漁場は沖合いに広がり、現在では漁獲量のほとんどがまき網漁業によるものである。

まき網漁場はバハ・カリフォルニアからペルー南部まで広がるが、メキシコ南部沖では漁獲量は比較的少ない。また、赤道海域では漁場は西経150度付近の沖合まで達している。付き物群操業 (漂流物とFADsが含まれる)は主に中米から北部南米沖で行なわれており、沖合にも広がっている。素群れを対象とする操業は、バハ・カリフォルニア、中米、北部南米沖で行なわれている。なお、イルカ付き群では僅かなカツオしか漁獲されない。

竿釣漁船は、南カリフォルニアからチリ北部にかけた距岸約250海里以内の海域と沖合いの島嶼周りで操業を行なっていたが、現在ではエクアドル、メキシコ、米国籍のわずかな数しか残っておらず、エクアドル、メキシコ、南カリフォルニアの比較的沿岸近くで操業している。


生物学的特徴

(Matsumoto et al. 1984、Schaefer 2001)

カツオは3大洋すべての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する(Matsumoto et al. 1984)。適水温帯の分布にあわせて、東部太平洋における分布域は中西部太平洋に比べて南北に狭くなっている (図2)。太平洋内については単一系群とする説と複数系群とする説があるものの、資源管理上は東部太平洋と中西部太平洋に分けて資源評価が行われる場合が多い。

産卵は表面水温24℃以上の海域で広く行なわれ、東部太平洋においても南北アメリカ大陸沿岸から西経130度、北緯15度から南緯10度付近の適水温帯で産卵が行なわれる。成熟体長は45cm程度とされ、性比は1:1で、キハダやメバチで確認された高齢魚におけるオスの比率の増大は見られない。

成長は、耳石日輪の検討から得られた結果と標識データを組み合わせて、満1歳で尾叉長40cm台後半、満2歳で60cm台後半、満3歳で70cm台と推定されている (図3)。体長体重関係は、W = 5.5293×10 -6 L 3.336 等 (Wは体重(kg)、Lは尾叉長(cm))が用いられ、40cmで1.2kg、50cmで2.6kg、60cmで4.7kgとなる。寿命は6歳を超えるであろう。

餌生物は他の海域同様、魚類・甲殻類・イカ類で、選択性は低くその海域で主要なものが主たる餌となっていると考えられている。また、捕食者も他大洋と同様、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他の魚食性魚や海鳥であろう。


資源状態

IATTC は、2004年にA-SCALAを用いた資源評価を行なっており(Maunder and Harley 2004)、2006年には追加・更新したデータを用いて解析が行なわれた(Anon. 2007)。本海域のキハダ・メバチでの解析と異なり、カツオでは月単位の資源評価が行われている。

9−20月齢の漁獲死亡係数は1980年代前半に高くなり、その後低下し最近は微増傾向にある (図4)。一方、21−32月齢の漁獲死亡係数は前者と同様に1980年代前半に極端に増加したが、1980年代中盤に下落し、その後増加傾向を示した。これらの漁獲死亡係数は自然死亡係数と同等かもしくは低いと推定され、標識データ解析結果とも一致した。加入量の変動は大きく、資源量は漁獲圧が高かったと想定される1980年代前半を除き、どの年も加入量の変動にともなって変化している (図5)。この傾向は解析モデルの仮定の変化にもほとんど左右されなかった。最近では2002・2003年に連続した強い加入があり、2003年の資源量と漁獲量を増加させていると示唆されているが、近年の加入は平均的な水準である。そのため、今後の資源量と漁獲量は低くなると考えられているが、近年の加入量推定値にはかなりの不確実性が含まれている。また、2006年の幾つかの豊度指数 (CPUE) は、高まる漁獲率とは反して増加傾向を示している(図6)。なお、親子関係が認められない条件下におけるAMSY (平均的な状況下で現在の漁業の強さと漁獲物重量から長期にわたって得られる平均最大生産量)は、現在の成長 (増重量)・減耗パターンからは無限大のFで漁業加入以前に獲り尽くすことにより達成されることになるため、非現実的であり示されなかった。これらを検討するには、確度の高い成長および自然死亡係数の推定が必要である。


管理方策

2007年まではまき網を対象とした年間42日間の禁漁を中心とした資源管理方策がとられていたが、2008年6月の第78回IATTC年次会合において、2008年以降の東部太平洋における保存管理措置が合意に至らなかったため、2008年は各国の自主規制を除いていかなる規制も実施されていない状況にある。しかしながら、資源評価の結果が前回の結果と一致していること、流れ物操業に関連するメバチ漁獲量とカツオの関係は認められないことから、本資源の管理に関する懸念はないと判断された(Anon. 2007)。2009年6月の第80回IATTC年次会合においても、本種の資源管理に関しては前年の判断が支持されている(Anon. 2009)。


カツオ(東部太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
20.1〜29.9万トン
平均:25.4万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
20〜97トン
平均:48トン
管理目標 MSY
資源の現状 MSY水準より高いと思われる
管理措置 各国による自主規制以外に特段の規制措置はとられていない。
資源管理・評価機関 IATTC

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 生物特性研究室

田邉 智唯

参考文献

  1. Anon. (IATTC). 2009. THE FISHERY FOR TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2008. 80th meeting of the Inter-America Tropical Tuna Commission. Document IATTC-80-05. 1-106 pp. http://www.iattc.org./ PDFFiles2/IATTC-80-05-Tunas-and-billfishes-in-the-EPO-2008.pdf (2009年12月1日)
  2. Anon. (IATTC). 2007. THE FISHERY FOR TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2006. 75th meeting of the Inter-America Tropical Tuna Commission.. Document IATTC-75-06. Cancun,Mexic. 1-105 pp. http://www.iattc.org/PDFFiles2/IATTC-75-Provisional-agenda-Jun-2007REV2a.pdf (2007年11月5日)
  3. Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon (1984): Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech.Rep. NMFS Circ., (451): 1-92.
  4. Maunder, M.N. and S.J. Harley. 2004. Status of skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean in 2003 and outlook for 2004. In IATTC (ed.), Status of the tuna and billfish stocks in 2003. 109-167pp. http://www.iattc.org/PDFFiles2/SAR5%20_SKJ_ENG.pdf (2005年10月14日).
  5. Schaefer, K. M. 2001. Assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) spawning activity in the eastern Pacific Ocean. Fish. Bull., 99: 343-350.