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24 メカジキ 南大西洋

Swordfish

Xiphias gladius

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最近一年間の動き

2009年秋に開催されたメカジキ資源評価会議において、委員会は本系群で大きな問題となっているデータ不足による高い不確実性を低減する十分な調査研究が実施されるまでは、本資源の年間漁獲量を前回推定されたMSY(15,000t)以下に抑えるよう勧告を出した。また、同時に資源量の動向を推定するための今後のさらなる研究が必要であるとの勧告が出された。


図1

図1. 漁法別漁獲量の年推移(1950-2008) (ICCAT 2009b)


表1

表1. 近年の国別漁獲量


図2

図2. 国別漁獲量の年推移(1950-2008) (ICCAT 2009b)


図3

図3. 大西洋における漁法ごとのメカジキの累積漁獲量(2000〜2007年の合計)の分布図. 青色がはえ縄漁法、灰色がその他の漁法による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。 南北の系群は北緯5度(太い線)で仕切られている。(ICCAT 2009b)


図4

図4. 日本の大西洋でのメカジキ漁獲量(1950-2008) (ICCAT 2009b)


図5

図5. 本資源の分布域


図6

図6. スペイン(左)とブラジル(右)の漁業データから算出した資源量指数(青線)と ベースケースで得られた南系群全体の資源量指数(赤線)の経年変化。2つのグラフに示してある値は全て、 比較する2つの資源量指数が重複している期間の平均値を1とした時の相対値として示してある。(ICCAT 2009b)


図7

図7. プロダクションモデルのベースケースについて推定された相対的資源量 ( B/BMSY:赤線),及び相対的漁獲死亡率(F/FMSY:青線). (ICCAT 2009b)


図7

図8. 漁獲量を固定した場合(y軸)にB>BMSY, F<FMSYとなる確率を各年について示す コンター図。上の薄い線は75%、下の黒い線は90%のコンターを意味する。黄色い部分は50-75%の確率、 緑の部分は75%以上の確率を示す。(ICCAT 2009b)


漁業の概要

南大西洋においてメカジキは、1980年代末までは、主に日本・台湾・韓国といったまぐろ類を狙って操業するはえ縄漁業において混獲物として漁獲されてきたために、総漁獲重量は10,000トン未満と少なかった(図1、図2)。1989年からメカジキを主対象として浅縄操業を行なうスペインはえ縄船団が参入して漁獲量が急増し総漁獲量は1995年に21,780トンに達した。これは、一つには努力量が徐々に北大西洋及び他の大洋から南大西洋へとシフトしたことに起因しているが、加えて、ブラジル、ウルグアイ等の沿岸国が漁獲を伸ばした事にもよる。大西洋における2000~2007年のメカジキ累積漁獲量の分布図を図3に示す。1995年以降は、規制の導入、努力量の他の大洋への移動、及び主対象魚種の変更によって漁獲量は減少している。2008年の漁獲量は1995年の5割減の11,108トンであり、前年の2007年の漁獲量(15,621t)よりも29%低くなっている。但し、2008年の報告漁獲量は現時点での暫定値であり、おそらく実際の漁獲量はこれより多いと予想される(表1)。

大西洋で行われる我が国の漁業において、メカジキは主に熱帯・亜熱帯域で操業するメバチ操業の混獲物として漁獲される。1995年以降メバチの漁場がそれまでの南大西洋から徐々に北大西洋に移行したため、我が国のメカジキの漁獲量も南大西洋で減少した(図4)。この結果、2005年の我が国の南大西洋の漁獲量は480トンと過去最低を記録した。翌2006年には1,090t,更に2007年には2,223tと急増していたが、2008年の暫定的集計結果では658tと大きく減少した。


生物学的特徴

ICCATは2006年3月にメカジキの資源構造に関するワークショップを開催した。このワークショップで、地中海、北大西洋、南大西洋にはそれぞれ独立した系群が存在することが再確認された(2006a,b)。2009年の資源評価会議で提出された核DNAを用いた系群判別の結果はこの仮説を支持するものであった(ICCAT2009a,b)。大西洋におけるメカジキの南北の境界線については、便宜的に北緯5°線が境界として定められている。この境界線の妥当性に関しては、過去にChow and Nohara (2002)がアフリカ沿岸では本系群は北緯15°付近まで分布する可能性を示唆している。同様に、ワークショップでは境界線が現行の北緯5度よりも北側に存在する可能性を示唆する報告が複数提出された。しかし、どの研究も使用している標本がカバーする水域や時期が限られており、境界線を変更するには不十分であると判断された。現在の系群境界線を見直すためには、広範な水域及び季節をカバーする十分な量の標本を各国が協力して収集・解析する必要がある(図5)。

南大西洋のメカジキの産卵場は熱帯及び亜熱帯域と考えられており、成長したメカジキは、アフリカ沿岸方面やウルグアイ沖合水域に摂餌のために回遊すると考えられている。

南大西洋のメカジキの年齢、成長、成熟に関して本格的な研究はまだ行なわれていない。


資源状態

本資源の資源評価は、2009年に開催されたICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)メカジキ作業部会において更新された。2009年のメカジキ作業部会には、日本、台湾、スペイン、ブラジル、ウルグアイ(2種類)のはえ縄漁業のCPUEから推定された資源量指数が提出された。このうち、日本と台湾が提出したデータは、それぞれ解析期間に生じた漁具の変化や漁場の変化を十分に標準化できていない、前回と異なるモデルを用いた結果トレンドが大きく異なったという理由により前回の資源評価で提出された資源量指数が使われることとなった。これら5ヶ国の資源量指数のうち、混獲による漁獲がメインである日本と台湾のトレンドは減少傾向を示す一方で主対象魚種としてメカジキを漁獲している国々の資源量指数は、ブラジル・スペインでは増加傾向を示し、ウルグアイでは乱獲状態を示す結果となった。この様に、データによって1990年代中期以降反対の傾向を示しているが、どれがより正確に資源の状態を反映しているかを判定するには、さらなる研究が必要であると考えられた。例えば、漁業国によっては操業海域や操業に際してのストラテジーが異なると考えられ、従ってそれぞれのデータが資源の異なる部分の変動を示している可能性も考えられる。ただし、これらは現時点ではあくまで作業仮説であり、今後のデータ収集及び解析によって検証する必要がある。

上記の様に、非平衡プロダクションモデル解析(ASPIC)を行うにあたり、日本と台湾については前回の資源評価の際に提出した標準化CPUE(それぞれ2005年、2003年まで)、この他ブラジル、スペイン、ウルグアイについては今回提出した標準化CPUEが採択され、合計5ヶ国6つのはえ縄漁業データセットに基づき標準化した6つの時系列CPUEをインプットデータとしたものをベースケースとした。

ベースケースで推定した相対的豊度の経年変化は、1980年代はじめまでは安定しているものの、その後1990終盤まで減少傾向に転じ2003年ごろ再び増加する傾向を示した(図6の赤線。スケールを合わせてある)。各国の資源量指数と比較した結果、国によって当てはまりの良し悪しが見られ、スペインの資源量指数とは比較的よく一致するものの、ブラジルのデータとの当てはまりは悪くなった(図6)。本系群全体の資源状態に関しては、資源は良好な状態にあり、近年のFはFMSYよりも低く(F2008/FMSY=0.75)、近年の資源量はBMSYよりも上にある(B2009/BMSY =1.04)可能性が高いことが示された(図7)。資源量の将来予測については、一定漁獲量に対しての資源量の変化に着目してASPICによる解析を行った。その結果、14,000t以下であれば資源量は増加、15,000tであれば安定、16,000tであれば減少傾向を示すことが予測された。本系群の資源評価については、豊度の時系列変化が漁業データによって異なる傾向をしめすこと、最終年(2009年)のパラメータ推定値がどれもベースケースと異なる事などから、考慮すべき不確実性が大きすぎるとしてASPICで推定された資源量水準とあわせてCatch only modelによる解析結果を基に行うこととなった。

漁獲量データに含まれる情報のみを用いるCatch only Modelによる解析を行った結果、F2008/FMSY<1となる確率は77%、B2009/BMSY>1となる確率は82%となった。この推定値は非平衡プロダクションモデルの結果を支持しており、本資源は乱獲状態には無いと推測された。資源量の将来予測を行うに当たり、漁獲量を10,000t~17,000tまで1000tずつ増加させながら(8つの予測結果が得られる)、10年間の経年変化を調べた。2009年の漁獲量を2006~2008年の漁獲量の平均値として8つの漁獲量水準で将来予測を行った結果、漁獲量を15,000tにした場合80%の確率でB> BMSYとなり、17,000tにした場合は67%の確率でB> BMSYとなることがわかった。図8に漁獲量を一定にした際にB> BMSY、F<FMSYとなる確率の経年変化の推定結果を示す。

管理方策

資源評価結果には、不明な点が多く、それを明らかにできる十分な調査・研究が行われない限り、漁獲量は、現状の漁獲量レベルが維持できると期待される予備的に推定されたMSY(約15,000トン)を超えるべきではないと考えられる。

現在大西洋全域について、@下顎叉長125cm以下の魚の混獲率を15%以下に押さえる、A下顎叉長119cm以下の魚の混獲率を0%とする、という2つのオプションを持った最小体長規制がある。2006-2008年の大西洋全体で水揚げされた125cm以下の個体の割合は24%(尾数)と推定される(北系群では28%,南系群では20%)。

漁獲量規制の導入に伴って、混獲されるメカジキの水揚げ量を調節する目的で生きて漁獲されたメカジキを放流し、それらについて詳しい情報を集めていない国が有ることがかねてより懸念されている。こうした事は、今後の資源評価の信頼性を低めることに繋がるので、今後改善していく必要がある。

メカジキ(南大西洋)資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
11,108〜15,621トン
平均:13,443トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
480〜2,223トン
平均:1,027トン
管理目標 MSY
目標値 15,000トン
資源の現状 おそらくB_2009/B_MSY > 1
おそらくF_2008/F_MSY < 1
管理措置
  • 2009年のTACを15,000トンとする。
  • 小型個体(下顎叉長125cm/体重25kg未満)の水揚げ量を15%以下に抑えるか、下顎叉長119cm/体重15kg未満の水揚げ量を0%にする。
  • 日本のはえ縄漁業は、南大西洋におけるメカジキの混獲量を全ての魚の漁獲総重量の8%以下に抑えるよう努力する。
資源管理・評価機関 ICCAT

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 熱帯性まぐろ研究室

仙波 靖子

遠洋水産研究所 混獲生物研究室

余川 浩太郎


参考文献

  1. Chow, S. and K. Nohara. 2003. Further implication on boundary between north and south Atlantic stocks of the swordfish. SCRS/2002/141. ICCAT Col. Vol. Sci. Pap., 55: 1719-1722.
  2. ICCAT. 2006a. 8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/PLE-014%20EN.pdf (2008年10月31日)
  3. ICCAT. 2006b. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf (2008年10月31日)
  4. ICCAT 2009a. 8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 5 to 9, 2009). 111-127 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2009-SCRS_ENG.pdf
  5. ICCAT2009b. Report of the 2009 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 7 to 11, 2009). SCRS/2009/016. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2009_SWO_ASSESS_ENG.pdf