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20 ミナミマグロ

Southern Bluefin Tuna

Thunnus maccoyii

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最近一年間の動き

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の科学委員会(2009年9月)は資源量が低水準にあることを踏まえた上で現行TACから意味のある漁獲量削減をするよう勧告し、年次会合(2009年10月)では前年から約20%減少したTACが合意された。


利用・用途

ほぼ全てが日本での刺身や寿司用途に用いられている。


図1

図1. ミナミマグロの国別漁獲量の推移 (Data: Anon. 2009a)


表1

表1. ミナミマグロの年齢別の体長と体重の関係


図2

図2. ミナミマグロの分布(赤)、漁場(青)、産卵場(黄)


図3

図3. ミナミマグロの緯経度5度区画別の漁獲尾数 (2007年暫定値。1-15はCCSBT統計海区。主に1海区での、インドネシアによる 漁獲を含んでいない点に留意。


図4

図4. CCSBTで用いているミナミマグロの成長曲線


図5

図5. . CCSBTのオペレーティングモデルのベースケースで計算した加入量(上図) 及び親魚資源量(下図)。中央値、四分位点、90%点、未利用資源(B0)の20%点、2004年の親魚資源量 (B2004)も示す。将来予測は、現状TAC(11,810トン)を仮定し垂直の点線から開始する。 (Anon. 2009aの図を改変)


漁業の概要

主な漁業国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、インドネシアであり、フィリピン、南アフリカ、EUからも漁獲が報告されている(図1)。漁法ははえ縄とまき網であり、まき網はオーストラリアのみが実施している。

ミナミマグロ漁業の歴史はオーストラリアがその沿岸で小規模にのみ漁獲していた状態から始まり、日本船が1950年代初期に産卵場でのはえ縄操業を開始し、本格的な漁獲が始まった。日本漁船は1961年に最高の77,900トンを漁獲したものの、その後は肉質の良い魚を求めて索餌域である西風皮流域(南緯35〜45度の海域)へ漁場を移すとともに、産卵場、及び小型魚が多獲される海域での操業を1971年から自粛した。これらの影響もあり、日本のはえ縄漁業による漁獲は1961年以降漸減し、1985年には約20,000トンにまで減少した。一方、オーストラリアの主に竿釣による漁獲量は次第に増加し、1982年には21,500トンに達した後、自主規制及び産業の衰退によって激減した。1989年からは日本、オーストラリア、ニュージーランドの間でそれまでの漁獲実績を下回る漁獲枠(日本6,065トン、オーストラリア5,265トン、ニュージーランド420トン)を設定し、その後は近年まで一定の漁獲枠を維持してきた。1980年代半ばから韓国、台湾、インドネシアによるはえ縄の漁獲も始まり、1999年には合計5,000トンを上回ったがその後は2,000〜3,000トンとなっている。

総漁獲枠は2007年漁期に11,810トン(日本は3000トン)に減少し、2010年・2011年漁期にはさらに平均9,000トン(日本は2400トン)に減少することとなった。

オーストラリアは1990年代半ばより蓄養漁業を発達させた。まき網で漁獲した種苗を約3〜6ヶ月間畜養した後、ほぼ全量の年間6,000〜10,000トン程度を日本へ輸出している。


生物学的特徴

産卵場はインド洋東部の低緯度域(東経100〜125度、南緯10〜20度)で、産卵期は9月から翌年4月までの約半年間に及ぶ(Farley and Davis 1998)。一回の産卵数は体重1 kg当り5.7万粒で、産卵雌個体はほぼ連日産卵すると考えられる。幼魚はオーストラリア西岸沖を南下したのち、オーストラリア南岸沖を東へ移動すると想定され、成長に伴い次第に南緯35〜45度の西風皮流域全体に広く分布、回遊するようになる(図2)。主な漁場は、はえ縄では南アフリカ沖、インド洋南東海域、タスマニア島周辺海域およびニュージーランド周辺海域、まき網ではオーストラリア大湾である(図3)。

成熟尾叉長は約150 cm、年齢8歳と考えられているが、産卵場で操業するインドネシアの漁獲物の年齢組成がより高齢であることから、成熟年齢はもっと高いとの指摘もある。最大報告尾叉長は210 cm、寿命は少なくとも20年以上、耳石の解析から得られた最高齢は45歳である。

成長は耳石の年齢査定結果と標識放流結果を総合して求められている。1970年代以前と1980年代以降で初期成長が変化したと考えられている。CCSBTの科学委員会では、1970年級以前にはvon Bertalanffy成長式を、1980年級以降にはvon Bertalanffy成長式とRichardsの成長式の平均値を、その間の年級は直線補完して用いている。体長−体重関係はいくつか求められているが、日本のはえ縄漁獲物に対してCCSBT科学委員会での資源シミュレーションでは以下の式を用いている。下記は内臓等を除かない重量であり、セミドレス重量は1.15で除して求めている。

            130 cm未満の魚 体重=0.0000313088体長^2.9058
            130 cm以上の魚 体重=1.15×0.000002942体長^3.3438            

年齢別の体長、体重を、図4、表1に示す。

はえ縄漁獲物の胃内容物分析から、外洋域に分布する尾叉長約90 cm以上の魚は、主に頭足類と魚類を捕食していることが分かってきている。本種の捕食者は、他のまぐろ類と同様、かじき・まぐろ類、さめ類、海獣類などであると考えられている。


資源状態

本種の資源評価は1994年に発効したCCSBTの科学委員会の下で行われている。本種は長寿命・世代時間が長いという生活史特性を持つことから親魚資源が短期間で急激に変動することはないため、モデルを用いた詳細な資源評価はおよそ3年に1回実施し、その他の年はCPUEなどの漁業指標及び科学調査結果から得られた情報を総合的に検討し、資源の現況を判断している。2009年は、管理方式開発のために作成されたオペレーティングモデルを条件付けしたものによって資源評価を実施した。CCSBT科学委員会では、この資源評価モデルによる解析結果と、漁業指標及び科学調査結果からの情報も合わせて、資源の現況を次のように記述している(Anon. 2009a)。

「報告漁獲量が近年減少し、また2003−2004年の加入量が2000−2002年級ほど低くないことが示唆されるなど、将来の資源維持を示す情報もある。しかし、様々な情報を統合した資源評価モデルの予測結果では、現在の親魚資源量は大変低く、漁業開始以前の親魚資源量の5%程度(図5;ベースケースで4.6%、感度分析3.6-5.1%)である。この親魚資源量はMSY時の資源量(BMSY)の15%に相当し、また近年の漁獲率はMSY水準を与える漁獲率(FMSY)の約2倍である。さらに2000−2002年級が今後成熟年齢に達するため、親魚資源量はさらに低下する懸念がある。

このような低位資源水準の状況を踏まえ、科学委員会は本委員会に対し、現行TAC(11810t)から意味のある漁獲量削減をするよう勧告した。


管理方策

本種の資源管理はCCSBTの下で行われている。科学委員会の勧告を受け、2009年のCCSBT委員会では、2010-2011年(2年間)漁期のTACは2009年比で約2割削減の9,449トンとすることが合意された。加盟国への割り当て(2年間の平均)は、日本2400トン、オーストラリア4015トン、ニュージーランド570トン、韓国859トン、台湾859トン、インドネシア651トン。協力的非加盟国へは、フィリピン45トン、南アフリカ40トン、EU10トンが割り当てられた(Anon. 2009b)。

2005年に決定した管理方式(TACを漁獲データなどの資源指標から自動的に計算するルール)は、インプットデータである漁獲量およびCPUEが不確実となったことから改めて開発することとなった。2010年に新たな管理方式を完成させ、2011年のTAC見直しは、新たに決定された管理方式を用いて実施される予定である。

CCSBTにおける資源の管理目標は、従来1980年の親魚資源量レベルへの回復であったが、現在、見直し作業中である。

第15回委員会において、ミナミマグロ漁業の監視取締措置として、漁獲から水揚げ、貿易を書類及びタグを用いてモニターする漁獲証明制度、人工衛星を用いて漁船の位置をモニターする漁船位置監視システムが採択され(CCSBT 2008)、2010年1月から漁獲証明制度が実施されている。(Anon. 2009b)。

日本は2005年まで、漁場ごとに漁獲開始日と上限漁獲枠を設定して漁獲状況に応じて漁獲終了日を決定して、自国はえ縄船の操業を管理してきたが、2006年からは漁獲枠の個別割り当て制を導入し、また漁獲したミナミマグロ全個体に識別標識を装着する制度を導入して漁獲の管理を強化した。


ミナミマグロ資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
11,000〜16,000トン
平均:12,600トン
我が国の漁獲量
(過去5年間)
2,840〜7,855トン
平均4,740トン
管理目標 見直し作業中
資源の現状 産卵親魚量は33,091〜50,095トン
2009年産卵親魚量は初期資源の3.6〜5.1 %
管理措置 TACの設定:2009年漁期は11,810トン(日本3,000トン)、ただし韓国、台湾の自主規制を考慮すると11,530トン。2010年漁期のTACは9,449トン(日本2,400トン)。CCSBT登録漁船以外の漁獲物の輸入禁止
資源管理・評価機関 CCSBT

執筆者

まぐろ・かつおグループ
ミナミマグロサブグループ
遠洋水産研究所 温帯性まぐろ研究室

伊藤 智幸・高橋 紀夫・黒田 啓行・境 磨

遠洋水産研究所 温帯性まぐろ資源部長

中野秀樹


参考文献

  1. Anon. (CCSBT) 2008. Report of the fifteenth annual meeting of the Commission, 14-17 October 2008 Auckland, New Zealand. CCSBT, Canberra, Australia. 113 pp. http://www.ccsbt.org/docs/meeting_r.html(2009年12月15日)
  2. Anon. (CCSBT) 2009a. Report of the fourteenth meeting of the Scientific Committee, 5-11 September 2009 Busan, Republic of Korea. CCSBT, Canberra, Australia. 115 pp. http://www.ccsbt.org/docs/meeting_r.html(2009年12月15日)
  3. Anon. (CCSBT) 2009b. Report of the sixteenth annual meeting of the Commission, 20-23 October 2009 Jeju Island, Republic of Korea. CCSBT, Canberra, Australia. 111 pp. http://www.ccsbt.org/docs/meeting_r.html(2009年12月15日)
  4. Farley, J.H., and Davis, T.L.O. 1998. Reproductive dynamics of southern bluefin tuna, Thunnus maccoyii. Fish. Bull., 96: 223-236.