--- 詳細版 ---

23 メバチ 中西部太平洋

Bigeye Tuna

Thunnus obesus

                                                                                H21_17PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近一年間の動き

中西部太平洋におけるメバチの漁獲量は徐々に増加してきたが、1997年以降10万トンを超えた。2008年の太平洋における本種の漁獲量は例年並みの239,264トンであり、そのうち中西部太平洋(WCPFC条約水域)での漁獲は66%の157,865トンであった。本海域におけるメバチの包括的な資源評価は2008年に行われ、2009年にはデータの更新を含めた暫定的な資源評価が行われたが、使用したデータやパラメータの設定に問題が多い。


利用・用途

1970年代半ばまでは、キハダが主に缶詰や魚肉ソーセージの原料として重要であったが、急速冷凍設備の普及によって、刺身材料、寿司ネタとしてのメバチの需要・価値が高まった。まき網で漁獲される30〜60 cmを主体とする小型のメバチの大部分は、缶詰をはじめとする加工用として消費される。


図1

図1. 中西部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲量年変化


表1

表1. 中西部太平洋メバチの各年齢時体長


図2

図2. 主要漁業によるメバチの漁獲量分布(1990〜2007年)および2008年の資源評価に 用いられた海区区分(Williams and Terawasi 2009)
緑がはえ縄、青がまき網、黄がその他の漁業を表す


図3

図3. 中西部太平洋におけるメバチの国別漁獲量年変化


図4

図4. 中西部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲サイズ (Williams and Terawasi, 200).
横軸は体長、縦軸は漁獲重量(d)で示す。黄緑がはえ縄、黄色がフィリピン・インドネシア の漁業、、水色がまき網付群れ、濃い青がまき網素群れ操業を表す。


表2

表2. 中西部太平洋メバチの体長(尾叉長cm)と体重(kg)


図5

図5. 太平洋におけるメバチの分布


図6

図6. 太平洋におけるメバチの標識放流、再捕結果(Harley et al. 2009) ,(長距離再捕のみを示す)


図7

図7. 超音波発信機から得られた東部太平洋におけるメバチ(体長120 cm) の遊泳水深.
赤は水温20°C以上を黄色は15〜20°C、水色は15°C以下を、縦線は夜間 を表す(宮部 1998)


図8

図8. 中西部太平洋メバチの年齢と成長.
矢印はほぼ全ての個体が 成熟する体長(尾叉長120 cm)を示す


図9

図9. MULTIFAN-CLで推定された海区別加入の傾向. (Langley et al. 2008) ,
左下が全体の加入量及びその95%信頼限界を表す


図10

図10. MULTIFAN-CLで推定された海区別総資源量(灰色)と親魚資源量 (赤)の傾向(Langley et al. 2008)


図11

図11. MULTIFAN-CLで推定された各漁業の中西部太平洋メバチ総資源量に 対するインパクト.
縦軸は漁業が資源を減少させた割合(%)で、初期資源量に対して 示したもの。青がはえなわ、赤がまき網素群、黄がまき網付群れ、緑がフィリピン・ インドネシアの漁業、灰色がその他を表す。


図12

図12. B / B_MSYとF / F_MSYの経年的プロット(Langley et al. 2008) ,


図12 図12 図12

付表1. 中西部太平洋メバチの年別国別漁獲量 (単位;トン)


漁業の概要

本種ははえ縄、まき網、竿釣りの主要まぐろ漁業で漁獲される(図1)。主要な漁業はまき網とはえ縄であり、主に赤道域で漁獲されているが、はえ縄の場合にはある程度の漁獲を亜熱帯域(例えば日本東方およびオーストラリア東方沖)でも漁獲している(図2)。また、多くの小型魚がフィリピンとインドネシアの小型まき網やひき縄等によって漁獲されている。中西部太平洋におけるメバチの漁獲量は徐々に増加してきたが、1997年以降10万トンを超えた。2008年の太平洋における本種の漁獲量は239,264トンであり、そのうち中西部太平洋での漁獲は66%の157,865トンであり、2004年と並び過去最高の漁獲となっている。


【はえ縄漁業】

我が国のはえ縄を中心とする漁業は第2次大戦以前から本種を漁獲していた(岡本 2004)が、1952年のマッカーサーライン撤廃以降漁場は急速に拡大し、赤道はその年のうちに越えるとともに東方へも順次拡大した。熱帯域を中心とし、1960年には南アメリカ大陸沿岸にまで達した。その後、南北両半球の温帯域にも操業域を広げ、1960年代は地理的に最も広い水域をカバーした。1970年代の初めまではキハダ、ビンナガを中心に缶詰等の加工品原料を供給してきたが、その後刺身需要の増加と冷凍設備の改善によってメバチへの嗜好が強まった。韓国、台湾のはえ縄漁業も歴史が長く、前者は1958年から、後者は1964年から漁獲報告がある。

韓国は中・大型船のみで、中西部太平洋では1991年の220隻から減少し近年150〜180隻が操業を行ってきたが、2007年には122隻、2008年にはさらに減少し108隻が操業したと報告されている。台湾は大型船が当初ビンナガ操業主体に南太平洋の温帯域で操業していたが、その後熱帯域へも進出した。2008年に本水域で操業した100トン以上の漁船数は84隻であり、2006年の104隻から20隻減少した。台湾の100トン未満の小型船も多く、台湾近海および公海で操業を行っており、2008年には1260隻がWCP-CA海域で稼動したもようである。1980年代の後半に、中国のミクロネシア水域への進出も定着し(最大457隻)、これらアジア極東の小型はえ縄船による生鮮まぐろの日本市場への空輸事業がグアムやパラオ他を水揚地として盛んに行なわれたが、近年は我が国の景気停滞と漁獲の減少により、操業隻数は110隻程度とかなり減少した。2004年には中西部太平洋において約212隻のはえ縄船が操業し同じレベルで近年推移してきたが、2006年には157隻に減少し、2007年にはさらに86隻にまで減少したと報告されている。このうち36隻が氷蔵船、50隻急速冷凍船である。この他に、漁獲量は少ないもののオーストラリア、米国、南太平洋諸国(フィジー、ソロモン諸島、ニューカレドニア、仏領ポリネシア等)、ベトナム、エクアドルもはえ縄漁業に加わり、日本へ主として生鮮まぐろを供給している。

漁場は広範囲に渡るが、東西方向に帯状に形成される(図2)。中心となるのは赤道を挟んだ南北15度までであり、これらの漁場位置は南赤道流及び北赤道流域の水温躍層が100〜200 mの水深に相当する部分である。はえ縄漁具の設置水深と魚群分布域が重なる部分で釣獲率が高いと推察されているが、餌生物やメバチの摂餌水深との関連もあると思われる。更に南北30〜35度付近の温帯域にもそれぞれの冬場を中心にメバチの好漁場が形成されるが、魚体は小さく成熟の程度も低いため摂餌回遊にあるものと見なされる。最近は西経120度から160度の間の漁獲が多くなり、西経120度以東の漁獲が少なくなっている。中西部太平洋におけるはえ縄によるメバチの漁獲は1999年以上7万〜9.8万トンで推移しており、2008年におけるはえ縄の漁獲は8.7万トンであった(図1)。


【まき網漁業】

まき網漁業の漁場は熱帯太平洋の西部と東部に存在し、中央部では漁獲が少なかったものの最近やや多くなりつつある(図2)。まき網漁業ははえ縄漁業より歴史が浅く、特に中西部熱帯域でのまき網漁業は1960年代の後半に我が国によって試験的に開始された。1980年代には米式まき網を採用した台湾と韓国が参入するのとほぼ同時に米国も東部太平洋でのエル・ニーニョによる不漁を機会に漁場を移動し、操業が本格化した。主要国である遠洋漁業国の2008年における中西部太平洋での操業隻数は、日本が35隻、台湾42隻、韓国30隻であった。米国は2005年には1999年以降21隻減の15隻であり減少傾向にあったが、2008年に新船建造により急増し32隻へと倍増している模様である。太平洋島嶼国のまき網船は2005年には75隻まで増加したが、2008年には59隻まで減少している。その他フィリピンの遠洋船が15隻(500トン以上)、ニュージーランドが10隻、中国12隻となっている。

中西部太平洋では元来自然流木が多く、これを利用した漁法が我が国により行なわれてきた。その後、米国が人工浮魚礁(Fish Aggregating Devices; FADs)を導入したのに追随して、1990年代前半にFADsの利用が我が国を含め台湾・韓国の漁船に急速に普及し、それに伴い小型メバチの漁獲量が急増した。しかし、まき網漁業で漁獲された小型メバチは、水揚げ地においてキハダと機能的に区別されていないことも多く、また漁獲成績報告書でもキハダと区別して記録されていないことが多いため、我が国や米国を除いてその漁獲量は不正確である。2008年のまき網による漁獲量は46,811トンとなっており、過去最大の漁獲量となっている。このまき網漁業におけるメバチ漁獲量の推定において、オブザーバーデータや主要水揚げ港でのポートサンプリングデータなどが利用されてきたが、その標本抽出方法や漁獲物の漁艙の移し替え等などの要因により、その漁獲はかなり過小評価されているのではないかと指摘されている(Lawson 2008)。


【竿釣り及びその他の漁業】

中西部太平洋における竿釣り漁業によるメバチ漁獲量はこの10年、年間2,000〜4,000トンであったが、近年のインドネシアの竿釣り漁獲量の修正によって、2004年以降、竿釣り漁獲量は6,000〜11,000トンと推定されている。また、手釣り漁業も1990年代半ばから4000〜6000トンの漁獲をあげている。"その他の漁業"としては、フィリピン、インドネシアの小型船によるリングネット、ひき縄、及び日本の様々な沿岸漁業が、近年およそ1.1〜2.0万トンの漁獲をあげている(図1)。フィリピン、インドネシア漁業の場合、パヤオと呼ばれる固定式FADsを利用し、非常に小型(20 cm程度)のものから成魚までを漁獲している。フィリピン近海では、小型のまき網およびリングネット船が160隻ほど操業を行っている模様であるが、これら漁業の規模が零細であるのと、非常に多くの水揚地があることから漁獲量のモニタリングが十分ではなく、特にインドネシアの推定漁獲量は不確定要素が大きいと考えられる。


【国別漁獲量の動向】

国別に近年の漁獲量変化を見ると(図3、付表1)、我が国の漁獲は全体の約3分の2以上を占めていた1980年代半ばから徐々に減少し、1990年には50%に、1999年以降は30%前後に減少して、2004年には24%にまで低下した。しかし、日本の漁獲量自体はかつての4〜5万トン台からは減少したものの、近年も依然として3.2〜3.7万トンを漁獲しており、この海域では世界第1位を占めている。はえ縄国では、韓国、台湾の約1〜2万トンと続き、そのほかでは近年、フィリピンとインドネシアがそれぞれおよそ1〜3万トン台へと漁獲量を増大させている。


【漁業別漁獲サイズ】

主な漁業による年間サイズ別漁獲重量を図4に示す。はえ縄漁業は中西部太平洋における100 cm以上の大型メバチの大部分を漁獲している。このことは、はえ縄漁獲に加えてまき網の素群れ操業やフィリピンの手釣りなどによってもかなりの大型魚が漁獲されているキハダとは対照的である。中西部太平洋において大型メバチがまき網漁業で漁獲されることは非常にまれであり、はえ縄を除くとフィリピンの手釣りによってわずかに漁獲されるに過ぎない。まき網漁業で漁獲されるメバチは、ほぼ全てが付き物操業によって漁獲されるが、そのサイズは年によって、例えば2004年には50〜55 cm、2005年では70cm付近とかなりの変動を見せる。成魚を主とするはえ縄漁獲物における本種のサイズは尾叉張の範囲で90〜190cmであり、2008年には130〜150 cmにモードがあった。フィリピンやインドネシアの表層漁業では20〜60 cmの小型のメバチが漁獲されている。


生物学的特徴

太平洋におけるメバチの分布は非常に広く、陸棚上やメキシコからコスタリカ沖の低酸素水域を除く南北両半球の緯度40度未満のほとんどの水域に分布する(図5)。熱帯もしくは夏季の亜熱帯や温帯で生まれた稚魚は海流と共に、もしくは遊泳しながら移動し、多くは熱帯や亜熱帯に留まるものの、一部は温帯域へ索餌回遊を行い、成熟に達したら産卵に適した水温の高い水域に戻るのではないかと想定されている。しかし、標識放流の結果(図6)からは、他のまぐろ類、例えばビンナガやクロマグロほど明瞭な回遊の方向性は認められない。

メバチは他のまぐろ類より深層に分布することが知られており、網膜に光反射組織があって深層での遊泳に適応した構造になっている(川村 1994)。近年の超音波発信機による追跡調査やアーカイバル・ポップアップタグを用いた研究によると、成魚は特に深い水深に達するとともに日中は深く、夜間は表層に近い水深を遊泳することが判って来た(図7)。また小型魚は流れ物や海山に付く習性があり、まき網漁業で用いられているFADsに蝟集している場合には遊泳水深がより浅く、また体長が大型のものほど深い水深を遊泳することが知られている。

メバチの卵は分離浮性卵で油球が一個あり、受精卵の卵径は0.8〜1.2 mmである。船上で行われた人工受精によると、水温25.5〜29.0℃で孵化まで24〜30時間という記録がある(安武ほか 1973)。孵化後の全長は2.5 mmである。産卵は稚魚の分布から、熱帯・亜熱帯域の水温24℃以上のほとんどの水域でほぼ周年行われていると考えられている。ただ、場所によって産卵活動のピークが異なり、中西部太平洋では赤道の北側で4〜5月が、南側では2〜3月が、一方東部太平洋では赤道の北側で4〜10月が、南側で1〜6月が盛期である。メバチは多回産卵型で、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間の7時から真夜中にかけて行われ、一回産卵量はハワイ南西沖のサンプルから体長150 cmで約220万粒であるという結果が得られている(二階堂ほか 1991)。生物学的最小形は90〜100 cm、14〜20 kg(満2歳の終わりから3歳)と報告されており、120 cmを越えると大部分が成熟する。

成長と年齢については幾つかの研究があり、研究者間で合意されたものはないが、代表的なものを図8及び表1に示す。最近の統合モデルでは成長もモデルの中で推定する場合があることも、合意されていない原因である。行縄・薮田(1963)が鱗を用いて推定した式を改変したもの(Suda and Kume 1967)によると、1歳時が44 cm、2歳が76 cm、3歳が102 cm、4歳が123 cm、5歳で140 cmに達する。最近の耳石日輪を用いた研究によると(Lehodey et al. 1999、Matsumoto 1998)、成長率にはそれほど差は見られないが1歳時は約60 cmと推定され、上記の成長式とほぼ半年のずれが見られる。

寿命に関しては、オーストラリアのサンゴ海で15歳の雌及び12歳の雄が捕獲されており、これまでメバチの寿命と考えられていた8歳〜10歳よりも長く、15年以上である(Farley et al. 2004)。体長体重関係式は、中西部太平洋、東部太平洋ともにNakamura and Uchiyama (1966)の
        W(kg)=3.661×10-5・L(cm)2.90182
が用いられている(表2)。

本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、それほど特異性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシやムネエソ等の中深層性魚類が多い。稚仔魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50cm以上に成長してしまえば、大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。

現在、太平洋のメバチに複数の系群の存在は知られていない。しかし、インド-太平洋群と大西洋群間には遺伝的な差異が報告されている(Chow et al. 2000)。このことは太平洋において、はえ縄漁業の漁場分布が地理的に連続することや、魚の計数形質にあまり差が見られないことと一致している。


資源状態

資源評価はMultifan-CL(Fournier et al. 1998、Hampton and Fournier 2001)による解析が行われており、以下はこのモデルを用いた結果(Langley et al. 2008)を要約したものである。本種の資源評価は2009年にもデータを更新して実施されたが、簡易解析ということで使用したデータおよびパラメータ設定についての吟味が不十分である。2009年の年次会合においてもその結果に基づく管理方策は決定されていないため、本誌では、最後に行われた包括的な資源評価であり現行の資源評価の根拠となっている2008年の資源っ評価結果を紹介する。紙面を簡潔にするため、これらの論文からの引用は特に記さず、他のものの場合のみ明記した。

40四半期齢、6海区(図2)、漁獲量、努力量、サイズ組成データ、タギングデータ、25漁業区分を用いて、1952年から2007年について資源評価が行われた。最近年のデータが加わった他は、使用したデータは2006年の解析と同じである。GLMを用いた標準化努力量の推定方法も2006年と同様である。漁業定義に関する2006年の資源評価からの変更としては、日本の沿岸竿釣りと沿岸まき網、および熱帯域のまき網を加え、また主要漁業(第3海区のインドネシアとフィリピンの沿岸漁業、はえ縄漁業)の構成を再編成したが、これらは2007年のキハダの資源評価で行ったのと同様の変更である。ただし、キハダで採用された日本のはえ縄サイズデータに関する採用基準は今回の資源評価では用いられなかった。

ベースケース確定後の感度テストとしては次の4項目が実施された。1)親子関係を仮定しsteepnessをh=0.75に設定、2)はえ縄漁業の漁獲効率の時代的向上を考慮し、1985年より前は年間0.5%、1985年以降は年間2%の漁獲効率の増加を仮定、3)1980年以降のまき網によるメバチを現在の統計の2倍と推定、4)インドネシアとフィリピンの漁獲量を現在の統計量の50%に減少させる。

資源評価の結果、加入は年変動が大きく、海区によっても傾向が異なるが、全体をまとめた場合には、およそ1970年頃までは減少傾向、その後は増加傾向が求められ、特に2000年をピークとして1995年〜2005年の加入が例外的に高いと推定された(図9)。再近年に加入は長期平均レベル近くにまで減少しているが再近年の推定は不確かさが大きいと思われる。WCPOにおける資源量は1950年および1960年代と急速に減少し1970年の半分程度にまで減少した後、ほぼ安定か緩やかに減少し、1990年から後は着実に減少を続けている(図10)。成魚と幼魚の漁獲死亡はまぐろ漁業の開始から解析期間を通して継続的に増加傾向にある。資源に対する漁業のインパクトは1980年代半ばから急激に高まっている。総資源量は1970年以来比較的安定しているが、特に1995年以降は平均より高い加入によって資源量が維持されている。資源評価結果は、この近年の高い加入は長期平均レベルに近づいて行くであろうことを示唆しており、もし長期平均レベルになれば、資源は現在の漁獲レベルのもとでは急速に減少するであろう。この資源の漁業による抑圧傾向は海区1(ベースケースで0.25)、海区3(0.20)、海区4(0.25)で大きく、他の海区では小さい(0.4以上)。漁業ごとの資源へのインパクトの大きさを比較するとはえ縄のインパクトが最も大きい(図11)。まき網およびフィリピン・インドネシアの自国漁業の影響も海区3ではかなり大きく、海区4でも比較的大きい。日本の沿岸竿釣りおよびまき網漁業もまた海区1ではインパクトが高い。

今回の結果は、2006年の資源評価結果に比べて、資源状態はより悲観的なものになっている。F_current / F_MSYは2006年の結果の1.32から1.44へと増加し、近年の漁獲死亡がさらにMSYレベルを大きく上回ってきており、非常に高い確からしさでWCPOにおいてメバチメバチに対する漁獲死亡の過剰状態が生じつつあることを示している(図12)。総資源量(Bcurrent/B(est)MSY > 1.0)について言えば2006年結果が1.27、そして今回の1.37とMSYレベルよりも依然として高い状態にあるものの、いくつかのモデルでは親魚資源量の状態はMSYを下回りつつあり(SBcurrent/SB(est)MSY < 1)、楽観できるものでは無い。また、親魚資源量も総資源量も2003〜2006年レベルの漁獲死亡レベルおよび長期の平均加入レベルのもとではMSYレベルを下回るようになると予想される。漁獲死亡をMSYレベルに導くためには、2003年〜2006年の平均努力量の最低30%の削減が必要とされる。


管理方策

本種資源に関して、2008年12月に開催されたWCPFC年次会合において、2009年から3年間でメバチの漁獲を30%削減するため、以下の措置に合意した。なお、2009年12月に開催された年次会合において2010年の措置が決定され、2010年次会合で管理措置について全面的に見直すこととなった。

【まき網漁業】
  • 2009年:(a)集魚装置を用いた操業の2カ月間禁止、又は、(b)メバチの漁獲量を2001年〜2004年の平均値から10%削減。
  • 2010年:集魚装置を用いた操業の3カ月間禁止。
【はえ縄漁業】
  • 2009年から、メバチの漁獲量を2001年〜2004年の平均値(注)から毎年10%削減(3年間で30%の削減) (注):米国、中国及びインドネシアは、2004年の漁獲量を使用。
  • 2010年:メバチの漁獲量を2001年〜2004年の平均値から20%削減

メバチ(中西部太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(過去5年間)
13.9〜15.6万トン
平均:14.6万トン(2004〜2008年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
2.9〜3.7万トン
平均:3.4万トン(2004〜2008年)
管理目標 資源の長期保存と継続利用
資源の状態 MSY=6.5(5.7〜6.6)万トン
F/FMSY=1.44*1 (1.33〜2.09)
B/BMSY=1.37*1 (1.02〜1.37)
Bcurrent/Bcurrent, F=0=0.26*1 (0.50〜0.97)
YF_current/MSY= 0.94*1 (0.50〜0.97)
管理措置 2009 年から3 年間でメバチの漁獲を30%削減するため、以下の措置に合意した。
【まき網漁業】
2009 年:
( a)集魚装置を用いた操業の2 カ月間禁止
又は、
( b)メバチの漁獲量を2001 年〜 2004 年の平均値から10%削減。
2010 年:集魚装置を用いた操業の3 カ月間禁止等
【はえ縄漁業】
2009 年から、メバチの漁獲量を2001 年〜 2004 年の平均値(注)から毎年10%削減(3 年間で30%の削減)
(注):米国、中国及びインドネシアは、2004 年の漁獲量を使用。
2010年:メバチの漁獲量を2001年〜2004年の平均値から20%削減
注):米国、中国及びインドネシアは、2004年の漁獲量を使用
なお、資源管理措置は来年の年次会合で全面見直しの予定。
資源管理・評価機関 WCPFC, SPC

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 熱帯性まぐろ研究室

岡本浩明

参考文献

  1. Chow, S., H. Okamoto, N. Miyabe, K. Hiramatsu and N. Barut. 2000. Genetic divergence between Atlantic and Indo-Pacific stocks of bigeye tuna (Thunnus obesus) and admixture around South Africa. Mol. Ecol.. 9: 221-227.
  2. Farley, J. H., N. P. Clear and B. Leroy. 2004. Age and growth of bigeye tuna (Thunnus obesus) in the eastern and western AFZ. IOTC-2004-WPTT-INF04, 3pp. http://www.iotc.org/files/proceedings/2004/wptt/IOTC-2004-WPTT-INF04.pdf (2006年11月2日)
  3. Fournier, D.A., J. Hampton and J.R. Sibert. 1998. MULTIFAN-CL: A length-based, age-structured model for fisheries stock assessment, with application to South Pacific albacore, Thunnus alalunga. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 55: 2105-2116.
  4. Hampton, J. 2000. Natural mortality rates in tropical tunas: size really does matter. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 57: 1002-1010.
  5. Hampton, J., K. Bigelow and M. Labelle. 1998. A summary of current information on the biology, fisheries and stock assessment of bigeye tuna (Thunnus obesus) in the Pacific Ocean, with recommendations for data requirements and future research. SPC, Oceanic Fisheries Programme, Technical Report No. 36. 46 pp. http://www.spc.int/oceanfish/Docs/Technical/tech36.pdf (2006年11月2日)
  6. Hampton, J. and D. Fournier. 2001b. A spatially disaggregated, length-based, age-structured population model of yellowfin tuna (Thunnus albacares) in the western and central Pacific Ocean. Marine and Freshwater Research. 52: 937-963. http://www.wcpfc.org/sc1/pdf/SC1_SA_WP_2.pdf (2005年11月8日)
  7. Harley, S., S. Hoyle, A. Langley, J. Hampton and P. Kleiber 2009. Stock assessment of bigeye tuna in the western and central Pacific Ocean. Working paper SA WP-4, presented to the 5th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Port Moresby, Papua New Guinea. 11-22 August 2008. 134 pp. http://www.wcpfc.int/doc/sa-wp-04/harley-s-1-s-hoyle-1-a-langley-a-2-j-hampton-1-and-p-kleiber-3-stock-assessment-bigeye- (2009年12月18日)
  8. Langley, A., J. Hampton, P. Kleiber, and S. Hoyle 2008. Stock assessment of bigeye tuna in the western and central Pacific Ocean, including an analysis of management options. Working paper SA WP-1, presented to the 4th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Port Vila, Vanuatu. 10-21 August 2009. 98 pp. http://www.wcpfc.int/sc4/pdf/SC4-SA-WP1-rev.1%20[BET%20Assessment].pdf (2008年11月13日)
  9. 川村軍蔵. 1994. マグロ類の生理. 月刊海洋, 26(9): 529-533.
  10. Lawson, T.A. (ed.) 2005. Western and Central Pacific Fisheries Commission Tuna Fishery Yearbook 2004. Western and Central Pacific Fisheries Commission, Pohnpei, Federated States of Micronesia. v+188 pp. http://www.spc.int/oceanfish/Docs/Statistics/TYB.htm(2006年11月2日)
  11. Lawson, T. A. 2008. Factors affecting the use of species composition data collected by observers and port samplers from purse seiners in the western and central Pacific Ocean. 133 pp. http://www.wcpfc.int/sc4/pdf/ SC4-ST-WP3%20Lawson.pdf (2008年11月13日)
  12. Lehodey, P., J. Hampton and B. Leroy. 1999. Preliminary results on age and growth of bigeye tuna (Thunnus obesus) from the western and central Pacific Ocean as indicated by daily growth increments and tagging data. Working Paper BET-2, presented to the 12th Meeting of the Standing Committee on Tuna and Billfish. Papeete, French Polynesia. June 1999. 21 pp. http://www.spc.org.nc/OceanFish/Html/SCTB/SCTB12/WP/SCTB99_WPBET-2.pdf (2006年11月2日)
  13. Matsumoto, T. 1998. Preliminary analyses of age and growth of bigeye tuna (Thunnus obesus) in the western Pacific Ocean based on otolith increments. IATTC Special Report, 9: 238-242.
  14. Miyabe, N. 1994. General review paper of Pacific bigeye tuna, Thunnus obesus (LOWE). In Shomura, R.S., J. Majkowski and S. Langi (eds.), Interaction of Pacific tuna fisheries. Proceeding of the first FAO expert consultation on interactions of Pacific tuna fisheries, 3-11 December 1991, Noumea, New Caledonia. FAO Fish. Tech. Pap., 336(2): 207-243. http://www.fao.org/DOCREP/005/T1817E/T1817E11.htm#ch9 (2006年11月2日)
  15. 宮部尚純. 1998. シンポジウム「まぐろ類等大型浮魚の遊泳水深に関連する研究」(3)研究例−2) 超音波発信機. In 遠洋水産研究所(編), 平成9年度まぐろ資源部会報告書. 水産庁遠洋水産研究所, 静岡. 245-250 pp.
  16. Nakamura, E.L. and J.H. Uchiyama. 1966. Length-weight relations of Pacific tunas. In Manar, T.A. (ed.), Proceedings of the Governor's Conference on Central Pacific Fishery Resources. State of Hawaii, Honolulu. 197-201 pp.
  17. 二階堂英城・宮部尚純・上柳昭治. 1991. メバチThunnus obesus の産卵時刻と産卵多回性. 遠洋水産研究所研究報告, 28: 47-73. http://www.enyo.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou28-47.pdf(2006年11月2日)
  18. 岡本浩明. 2004. 太平洋戦争以前及び終戦直後の日本のまぐろ漁業データの探索. 水産総合研究センター研究報告, 13: 15-34. http://www.fra.affrc.go.jp/buelltin/bull/bull13/okamoto.pdf (2006年11月2日)
  19. Suda, A. and S. Kume. 1967. Survival and recruitment of bigeye in the Pacific Ocean, estimated by the data of tuna longline catch. Nankai Reg. Fish. Res. Lab. Rep., 25: 91-104.
  20. Sun, C., C. Huang, S. Yeh and S. Sun. 2001. Age and growth of the bigeye tuna, Thunnus obesus, in the western Pacific Ocean. Fish. Bull., 99(3): 502-509.
  21. Williams, P. and P. Terawasi 2009. Overview of tuna fisheries in the western and central Pacific Ocean, including economic conditions - 2008.Working paper GN WP-1, presented to the 5th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Port Vila, Vanuatu. 10-21 August 2009. 44 pp. http://www.wcpfc.int/doc/gn-wp-01/williams-p-and-p-terawasi-overview-tuna-fisheries-western-and-central-pacific-ocean-inc
  22. 安武 洋・西 源二郎・森 慶一郎. 1973. 船上におけるメバチ, Thunnus obesus, の人工受精, 初期飼育及び前期仔魚の形態. 遠洋水産研究所研究報告, 8: 71-78. http://www.enyo.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou8-71.pdf (2006年11月2日)
  23. 行縄茂理・薮田洋一. 1963. メバチの成長と年令. 南海区水産研究所報告, 19: 103-118.