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14 キハダ インド洋

Yellowfin Tuna

Thunnus albacares

                                                            PIC
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図1. EUまき網漁獲努力量(2007 vs 2002-2006の平均) ソマリア沖における海賊被害回避のためMPA(モラトリアム)のような海域が2007年より形成された。


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表1. 第10回熱帯まぐろ作業部会で使用された体長−体重関係


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図2. インド洋キハダ国別漁獲量(1950-2008)(IOTC データベース:2009年10月)


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図3. インド洋キハダ漁法別漁獲量(1950-2008)(IOTC データベース:2009年10月)


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図4. インド洋キハダ海域別漁獲量(1950-2008)(IOTC データベース:2009年10月) 西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


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図5. 主要漁法(黒:はえ縄、白:まき網、水色:竿釣り)によるキハダ漁獲量の分布。


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図6. まき網漁業における付き物(FADs)操業と素群操業で漁獲されるキハダの体長分布 (1982〜2001)(Fonteneau et al. 2002を一部改変)


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図7. 日本のインド洋まぐろはえ縄漁業におけるキハダの四半期別平年漁況(1994-2002) [HSI: Habitat Suitability Indexによる推定]


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図8. インド洋におけるキハダの主要な分布域


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図9.西部熱帯インド洋においてキハダ大量漁獲があった2003-2006年に、 大量発生した2種の餌生物。それぞれまき網・はえ縄で漁獲されたキハダの胃内容物に多く見られた餌生物。


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図10. 第11回熱帯まぐろ作業部会(2009)で使用された成長曲線(左図:緑線)。 この成長曲線は、MULTIFAN-CLで推定した成長曲線(左図:黒線)に、標識データで得られた成長率(右図) を加味して推定された


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図11.第11回熱帯まぐろ作業部会で使用された3種レベル(高、中、低)の年齢別自然死亡係数(M)。 高いMは、中西部太平洋で使用されているもの、低いMは、前回(第10回)熱帯まぐろ作業部会ではえ縄漁業のデータに 基づいてMULTIFAN-CLで推定されたもの、そして中間のMは前回と同様MULTIFAN-CLによるものであるが、 今回はえ縄の選択性をflat top型と仮定して推定されたものである。尚、時間軸(横軸)は4半期である。


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図12. インド洋キハダはえ縄標準化されたCPUE(日本 vs. 台湾)(1979-2008)(IOTC, 2009)


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図13.日本はえ縄漁業キハダの標準化CPUE(Okamoto et al, 2009)


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図14 MULTIFAN-CLによるキハダ資源評価結果のStock trajectory (神戸プロット)による表示。


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附表1. インド洋キハダ国別漁獲重量(1950-2008)
(IOTCデータベース:2009年10月) (トン)


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附表2. インド洋キハダ漁法別漁獲重量(1950-2008)(トン)
(IOTCデータベース:2009年10月)


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附表3. インド洋キハダ海域別漁獲重量(1950-2008)(トン)
(IOTCデータベース:2009年10月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


最近一年間の動き

キハダの大量漁獲が、2003〜2006年に西インド洋熱帯域のまき網漁業(主に素群れ操業)、はえ縄漁業、および小規模漁業で、また2004-2005年にはアラビア海の台湾のはえ縄漁業において記録された。そのため、キハダの総漁獲重量は、2002年以前の13年間は30万トン台であったが、大量漁獲の起こった2003-2006年には40-50万トンへと急増した。ところが、2007-2008年の総漁獲量は32万トンへと急減し1992年以降最低レベルを記録した。この漁獲量急減は、4年間に渡る大量漁獲の影響およびソマリア沖海賊問題を避けるためEUまき網船が、好漁場であるソマリア沖の500海里以内で操業を自粛したことによるものと見られる(図1)。2009年の第11回熱帯まぐろ作業部会では引き続き推定資源重量が減少傾向にあることが分かった。


利用・用途

刺身や缶詰原料などが主な利用用途である。


漁業の概要

インド洋キハダの国別・漁法別・海域別漁獲量(1950〜2007)を図2・3・4および附表1・2・3に示した。インド洋におけるキハダの大半は南緯10度以北およびモザンビーク海峡付近で漁獲されている(図5)。

漁獲量は西インド洋でフランスおよびスペインのまき網漁業が本格的に開始される1983年までは、最大9.2万トンであり、1954〜1971年においては、はえ縄による漁獲が大半(7〜9割)を占めていた。まき網漁業が開始された1984年から総漁獲量は急増し、1988年には20万トンを超えた。1993年にはアラビア海で台湾による大量漁獲があったため39万トンに達し、その後2002年までは31〜36万トンと比較的高い漁獲で推移している。また、2003〜2006年にかけて、西インド洋熱帯域においてまき網漁業(主に素群れ操業)、はえ縄漁業および小規模漁業で大量漁獲が、2004-2005年にはアラビア海で台湾はえ縄漁業により2度目の大量漁獲があった。これにより、キハダの総漁獲量は、2003-2005年に40-50万トン台へと急増し、2004年に52万トン(最大漁獲量)を記録した。しかし、その後2007-2008年には漁獲量が32万トンへと急減し1992年以降最低レベルを記録した。この漁獲量の急減は、おそらく4年間に渡る大量漁獲の影響およびソマリア沖海賊問題を避けるため、EUまき網船が好漁場であるソマリア沖の500海里以内で操業を自粛したことによる影響が大きい、と考えられている(図1)。

まき網漁業では、スペインによる漁獲量は1984年(1.1万トン)から1995年(6.5万トン)まで単調に増加した。その後2001年 (4.8万トン) まで減少したが、翌年から大量漁獲のため急増し2003-2007年 には7.1-8.1万トンに達した。その後海賊問題のため急減し2008年に4.6万トンとなった。フランスのまき網船による漁獲量は1988年には約6万トンにまで急増し、その後2002年までは減少して2.3万〜4.5万トンの範囲で変動していたが、大量漁獲のあった2003-2005年には5.8-6.4万トンとなり、過去最大レベルとなった。その後、スペインと同様海賊問題で急減し2008年には4.2万トンとなった。

インド洋における日本のまき網漁業は、最初1957年からまき網船(民間船)1-2隻が1980年代半ばまで操業していた。1988年以降は、まき網船数が増加し最大時には11隻 (1991-1994) となり、漁獲量は最大時3万トンを超えた。また、1977年より現在まで、ほぼ毎年30年間あまりにわたって、独立行政法人水産総合研究センター開発調査センター(旧:海洋水産資源開発センター)の調査船「(新・旧)日本丸」がインド洋全域で試験操業を行ってきている。1994年以降民間のまき網船数は徐々に減少し、最近5年間(2004-2008)では日本丸の試験操業および2隻のまき網(民間)船が操業を行っているだけで、漁獲量は266〜1,175トンで推移している。

まき網の操業形態は大きく二つに分けられる。1つはFADs(人工集魚装置)を主とする流れ物についた魚群を対象とする操業であり、カツオやメバチ若齢魚と群れをなす30〜80 cm(体長組成のモードは50〜60 cm)の若齢魚、および80〜160 cm(体長組成のモードは110〜120 cm)の大型魚が漁獲される漁法である(図6)。他の1つは素群れを対象とする漁法であり、FADsなどに留まっておらず自由に遊泳しているキハダ単一群もしくはカツオとの混合群を漁獲し、この漁法では80〜160 cm(モードは120〜130 cm)の大型のキハダが主に漁獲される(図6)。1999〜2003年において、FADs操業は全操業の50〜60%(成功した操業の60〜70%)を占める。なお、2003〜2004年にまき網で大量漁獲されたキハダのサイズは非常に大きく110〜150 cmが中心である。

はえ縄漁業に関して、1989年までは平均3.4万トンの低レベルでコンスタントな漁獲量であった(最大7.9万トン)。その後漁獲量が急増し、1993年にはアラビア海における台湾船による大量漁獲で過去最大の20万トンを記録した。その後は漁獲量が急減し、1994〜2004年には8〜11万トンで推移している。西部熱帯インド洋で大量漁獲のあった2004-2006年は、それぞれ10-15万トンとなり2005年は過去2番目の漁獲量(15万トン)となった。2007-2008年は、漁獲量が急減し8.5-6.2万トンと1989年以降で最低レベルとなった。

1952年から1968年までは、日本のはえ縄漁業によるキハダの漁獲がインド洋全体の過半数を占めていたが(ピークは1968年の4.8万トン)、その後の韓国、台湾船の台頭および1980年代後半からのインドネシアおよびNEIはえ縄船の増加により、最近10年間 (1996-2007) では日本のキハダ漁獲は全体の11〜21% (平均16 %) になっている。図7に、大量漁獲が起こる前の9年間(1994-2002)における日本はえ縄船によるキハダの四半期別平均釣獲率(1操業あたりの漁獲量)の分布を示した。はえ縄漁業で漁獲されるキハダの体長範囲は、およそ80〜160 cmである。

また、以下に最近5年間(2004-2008)の平均漁獲量に基づく最近年における漁業の特徴を述べる。漁業(漁法)別漁獲量の特徴は、39%がEU(主にスペイン・フランス)によるまき網漁業(西部インド洋)、25%が台湾、インドネシア、日本によるはえ縄漁業、20%が流し網漁業(主にイラン、オマーン、スリランカ)、4%が竿釣り漁業(主にモルディブ)そしてその他の漁業(便宜置籍船など)が12%となっている。また、インド洋は大規模なまき網、はえ縄および竿釣りによるキハダの漁獲が大部分を占める他の海洋とは異なり、総漁獲量の約55%が、沿岸国・島嶼国における小規模漁業(流し網・竿釣りなど)で漁獲されることが、大きな特徴である。海域別では、西インド洋(FAO51海域)と東インド洋(FAO57海域)における平均漁獲量の割合は、79%:21%で、約8割の漁獲が西インド洋からとなっている。特に、近年、中近東(イラン、オマーン、イエメン)における刺し網やまき網による漁獲量が増加している。

2003〜2006年熱帯西部インド洋及びアラビア海におけるこの急激なキハダ漁獲量増加の原因としては、次の4点が考えられ、それらが複合的に絡みあって発生したとみられる(Nishida et al. 2005、西田ほか 2006)。(a) 強い季節風により特定の海域で湧昇流が強くなり、基礎生産量(クロロフィル量)が急増し、それに応じキハダの餌生物(まき網ではシャコ類、はえ縄ではワタリガニ類など)も大量に集中した。(b) 湧昇流によりその海域の水温躍層が浅くなりキハダが比較的浅い水深に集中した。(c) 大量漁獲の情報を入手したはえ縄、まき網漁船が集中したこと(過剰な漁獲努力量)、および(d) 卓越年級群による加入量が増加した。最近の研究(藍ほか 2007)では、卓越年級群の影響は少ないとしている。そのため、資源への悪影響がますます懸念されてきている。

上述のように、インド洋におけるキハダ総漁獲量多くが発展途上国の小規模漁業(流し網および竿釣り)で漁獲されている。しかし、多くの沿岸国・島嶼国では小規模漁業の漁獲統計収集システムが不明なものが多く、その正確な漁獲情報を把握することが困難な状態にある。そこで、2002年よりIOTC(インド洋まぐろ類委員会)とOFCF(海外漁業協力財団)が共同で、インド洋まぐろ統計共同改善事業を5年間の予定で開始した。特に、インドネシア、スリランカ、タイ、モルディブなどでサンプリングプログラムや統計収集システムの改善を実施し、成果があがってきている。本事業は、2006年で5年間の第1期の活動を終了したが、作業部会、科学委員会、年次会合および加盟国の強い要請で2007年より2009年まで第2期事業として3年間延長することになった。


生物学的特徴

【分布】

キハダはインド洋の主として熱帯および亜熱帯域に広範に分布するが、はえ縄漁獲データを見る限り、特に西インド洋においては南緯40度付近にまで分布しているようである(図8)。通常は大きな魚群を形成しており、30〜50 cmの若齢魚はカツオや若齢のメバチとの混合群を形成し、主に熱帯域の表層分布が限られているのに対し、90 cm以上の個体はより広い海域の表層から水温躍層付近にまで分布する。50〜80 cmの個体は公海域における主要漁業であるまき網やはえ縄で漁獲されることはまれであり、その生態は明らかになっていない。しかし、この体長幅の個体がアラビア海の小規模漁業で多く漁獲されることが知られていることから(Ariz et al. 2002)、この海域がそのような中型個体の索餌域ではないかと推測され、標識放流やオマーンなどでのサンプリング活動(体長測定)により本種の回遊経路を解明されつつある。

キハダの分布水深に関して、インド洋では直接的な観察例が海洋水産資源開発センター(1985-1988), Mohri and Nishida(2002)、Xu et al. (2006)ほかにより報告されており、はえ縄およびまき網によるキハダの漁獲データと海洋環境データを比較した結果、キハダが20°Cの水深付近、すなわち水温躍層付近に多く分布し、また溶存酸素濃度2.0 ml/Lがその分布の限界となっていると推定された (Marsac 2002、Romena and Nishida 2001) 。

【系群構造】

インド洋における本種の系群構造は明らかではない。これは、はえ縄漁業情報の解析によると、本種はインド洋の東西で統計的に有意な差があり異質なものとなっている (Morita and Kato 1970、Nishida 1992) が、DNA解析では異系群の存在を示す証拠は得られていない (Nishida et al. 2001) ためである。このため、現在は資源評価を行う際には、単一系群として扱われている。

【産卵】

キハダの産卵は12〜1月に赤道域(0〜10°S)で行われるが、主な産卵海域は東経50〜70度の間であろうと推測されている。初回成熟体長は110 cmと推定されており、当歳魚は7月にまき網による流れ物操業で主に漁獲され始める。キハダでは一般に大型の漁獲個体で雄の比率が高くなることが知られているが、インド洋では150 cm以上でその傾向が認められる。

【食性】

食性に関し本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、それほど嗜好性はないようである。稚仔魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50 cm以上に成長してしまえば、大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。1990年代後半を境にまき網で漁獲されるキハダなど表層まぐろ類・小型浮魚類の食性が魚類からstomatopod Natosquillaへと大きく変化した(Poiter et al. 2007)。Stomatopod Natosquilla(図9左)は、シャコの一種で、2003-2006年に西部熱帯インド洋海域でキハダ大量漁獲があった時、大量に発生しまき網で漁獲されたキハダの胃内容物で多く発見された。一方、はえ縄で漁獲される成魚まぐろ類の胃内容物にも同様な傾向が見られるが、その程度は低い。また、キハダの大量漁獲があった時には、はえ縄で漁獲されたキハダの胃内容物には、ワタリガニの一種であるCharybdis edwardsiが寧ろ多くみられた(図9右) (Nishida et al. 2005、西田ほか 2005) そこで操業していた日本のはえ縄漁師の話では、ワタリガニが大量発生して漁具、漁船にまで付着してきたという。従って、同じ漁場でも、まき網、はえ縄で漁獲されるキハダの餌生物の種類は異なっていることが理解できる。これはそれぞれの餌生物の遊泳水深が異なるため、深度(表層と中層)によって異なった種類の餌生物が生息するためであろう。また 同じまき網でも素群れとFADS (LOG) 操業で漁獲されたキハダの胃内容物は異なり、後者は空胃の状態が多い。これは、操業開始前の日の出頃までには、摂餌した餌生物を消化してしまう場合が多いことと、キハダは寧ろFADSを離れてから索餌行動するのでFADS周りでは索餌を行わないためと見られる。

【体重-体長関係】

2007年の第9回熱帯まぐろ作業部会では、表1にある体長−体重関係(IOTC 2007)と上記成長式により、体長・年齢別漁獲量が推定され資源評価の基礎情報として用いられた。

【成長・寿命】

成長に関して、2008年の第10回熱帯まぐろ作業部会では、(a)MULTIFAN-CLで推定された成長式、(b) 標識再捕データから推定された成長式および(c) フォンテヌが提案した(b)の拡張モデルをもとにした成長曲線の3種成長式が新たに推定され、資源評価に使用された。2009年の第11回熱帯まぐろ作業部会では、2008年の方針を踏襲し、MULFAN-CLからの推定された成長式をベースに、上記(c)の固定されたそれも比較対象として用いられた(図10)。本種の寿命は正確には判っていないが、年齢査定の結果や成長が速いことから、メバチより短い7〜10年であろうと考えられている。

【自然死亡率(M)】

インド洋における本種成魚(2歳以上)の自然死亡係数(M)に関し、西田 (1991) がHeincke (1913) の方法により0.725と推定した。しかし年齢別のMはまだインド洋では推定されていないので、2009年の第11回熱帯まぐろ作業部会では3種レベル(高、中、低)の年齢別自然死亡係数(M)が使用された。すなわち、高いMは、中西部太平洋で使用されているもの、低いMは、前回(第10回)熱帯まぐろ作業部会ではえ縄漁業のデータに基づいて、MULTIFAN-CLで推定されたもの、そして中間のMは前回と同様MULTIFAN-CLによるものであるが、今回はえ縄の選択性をflat top型と仮定して推定されたものである(図11)。


資源評価

2009年の第11回熱帯まぐろ作業部会における資源評価はIOTCコンサルタント(豪州)がMULTIFAN-CL (MFCL)に標識データを用いて行った(Langley et al. 2009)。漁業は4種類(はえ縄、まき網付き物操業、まき網素群れ操業、およびその他の沿岸漁業)で、まき網、はえ縄および刺し網が主な漁法であるが、手釣りや竿釣りも無視できない。最近5カ年(2004-2008)の平均漁獲量は41.3万tである。2008年は予備集計値で32.3万トン であった。2003から2005年までは40-50万トンの大量漁獲が続いた(図3、附表2)。

CPUE標準化で使用したサブエリアは5つの設定は前回の資源評価(2008年)での議論に応じて変更されたものである。日本(Okamoto et al. 2009)、台湾のはえ縄標準化CPUEに基づく資源量指数が推定されたが、台湾の指数は現実的でないと判断され使用されなかった(図12)(IOTC 2009)。解析期間は1979-2008年。1960-2008年についても検討されたが、初期の資源量指数の急減をもたらすはえ縄漁業の漁獲効率の変化が不明なため使用されなかった。

はえ縄の選択率について、前回は高齢部分がドーム型だったが、今回は議論を重ねフラットトップ型を選択した。また、2008年の漁獲量、努力量のデータは不完全なため、2007年を基準とした。h(steepness)の値は0.6-0.8。成長に関して、モデルで体長組成から推定した成長速度は、標識放流による成長解析より大幅に速い成長速度であったため、標識放流結果に基づいた固定値を資源評価に利用した。

移動に関して、サブエリア間の移動は推定が難しく、サブエリアごとの資源量などの推定結果が不自然になった。これは放流から再捕までの期間が短いこと、および充分な再捕がごく1部の限られたサブエアリアでしかなかったことが原因と見られる。そのため、大半のサブエリア間でほとんど移動がないといった非現実的な結果となった。その問題に対応するため、代替モデルとして移動はサブエリア間で均等に行われる場合も検討されたが満足のゆく結果が得られなかったので、最終的にはインド洋全域を単一エリアとして最終的な解析を行った。

資源量指数は日本と台湾のはえ縄CPUEを用いて、漁獲効率を経年的に一定と仮定したが、この仮定は妥当でないとも考えられえるため、今後、漁獲効率に影響を与える漁労技術や操業方針決定の詳細な解析を行う予定である

MULTIFAN-CLの結果、MSYは30万トンと推定された。(注)作業部会では25-30万トンと推定されたが、科学委員会で種々の情報を取り入れ再検討した結果30万トンが最も現実的な値として採択された。2008年の漁獲量は32万トンで、大量漁獲時(2003-2006)平均レベル(46万トン)からは減少したものの、それ以前(1998-2002)の平均レベル(34万トン)と同程度で、依然Bmsy(SSB at MSY)を大きく超えたレベルにある。2008年の日本のはえ縄CPUEが極端に減少したため(図13)、これが資源評価結果にも影響し図14のStock trajectory (神戸プロット) に示すように、2008年の資源状況は、厳しい状態になった。作業部会では、2008年の極端なCPUE減少が、現実的なものかを2010年吟味することになった。そのため、今回は、2007年の点を参考に資源状況・勧告を考察した。[F](漁獲死亡係数)は、Fmsy(対応するMSYレベル)の約1.3倍で、SSB(産卵親魚資源量)もBmsy(SSB at MSY)付近にあるため、資源状況は乱獲初期の状況となっている。そのため、熱帯まぐろ作業部会は、漁獲量・[F]ともに今後MSYレベルを超えるべきでないという勧告を、科学委員会へ提案した。


管理方策

キハダ資源管理方策に関し、2008年の第12回科学委員会では、第11回熱帯まぐろ作業部会の勧告を受け今後の漁獲量はMSYレベル(30万トン)を超えるべきでないという勧告を出した。尚、作業部会で勧告された[F]は今後MSYレベルを超えるべきでないは、2009年に行われた第1回漁獲能力作業部会での議論を踏まえ、現状では[F]に相当する漁船数や漁獲努力量を特定するのは困難なため、管理方策に含めなかった。また、管理方策で重要と考えられる以下の3点に関し、2010年の第12回熱帯まぐろ作業部会で検討することを要請した。(a) 2008年の日本はえ縄CPUEの急減に関する精査。(b)まき網FADS操業が資源に与える影響に関するYPR解析の更新。(c) EUまき網漁業がモルディブなどの島しょ国や沿岸国の漁業へ与える影響(漁業の相互作用)。また、魚種に関わらない共通する漁業管理方策に関しては、インド洋メバチの稿に一覧した。


キハダ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準* 中位
資源動向* 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
32〜52万トン
平均:43万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.2〜2.3万トン
平均:1.9万トン
管理目標* MSY(30万トン) 
資源の状態 最近の漁獲重量は大幅にBmsy(SSB at MSY)レベルを超えている。 資源状況は悪化し続けており乱獲の初期状況となっている
管理措置 [キハダ資源管理措置]漁獲量をMSYレベル(30万トン)以下に抑える。 来年管理方策に必要な下記3件の評価を行う:(a) 2008年の日本はえ縄CPUE急減の精査、(b)まき網FADS操業 (小型魚の大量漁獲)が資源に与える影響、および(c)まき網漁業が島しょ国・沿岸国のキハダ漁業へ与えると 影響(漁業の相互作用)。
[漁業管理(共通)措置]インド洋メバチ参照。
資源管理・評価機関 IOTC
(*) 1960-2007年の情報を用いた資源評価の結果に基づく

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 国際海洋資源研究員

西田 勤

遠洋水産研究所 熱帯性まぐろ資源部

庄野 宏


参考文献

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