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01 世界の漁業の現状について

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表1.一人一日当たり動物性タンパク質供給量


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図1. 世界の漁業生産量の推移(データ:FAO Fishstat Plus)


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図2. 北西太平洋における国別漁獲の動向(データ:FAO Fishstat Plus(海藻を除く)


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図3. 北西太平洋の主要資源の漁獲動向(データ:FAO Fishstat Plus)


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図4. 1974年から2006年までの世界の資源利用状況の傾向(データ:FAO The State of World Fisheries and Aquaculture 2008 から転載)


1.世界の漁業生産の動向

(1)漁獲及び養殖の生産量

世界の人口は、1950年には25億人程度であったものが、2000年には約60億人を超え、2050年には90億人に達すると予想されている。FAOによれば、水産物は人類が摂取する動物性タンパク質の約16%を担っている(表1)とされており、以下に述べるとおり、海面漁業の漁獲量が頭打ち状況にある中、海面及び内水面養殖による生産増大が、増大する需要に応えている。

2007年の世界の魚介類(海藻類を除く)の生産量は、1億4041万トンを記録したが、近年の生産量の増大は、海面及び内水面の養殖によってもたらされており、海面での漁獲量(中国を含む)は、1994年に8千万トンを超えて以降、横ばいの傾向を示している(図1)。

また、漁獲と養殖を合計した中国の生産量は世界の全生産量の約3分の1を占めているが、中国の生産量から得られる指標が余りにも高い生産性を示していることから、この生産量は過大に見積もられているとの指摘もある。中国を除いた世界の海面漁獲量は緩やかな減少傾向を示しており、もし前述の指摘が正しければ、海面漁獲量全体の動向も減少傾向に転じる可能性を持っている。

こういった海面漁獲量の減少は、後述するように状況が悪化している資源が増えていることが主な原因であると考えられるが、全生産量に占める海面漁獲量の割合は57%に上り、海洋水産資源が水産物供給に果たす役割は依然として大きいといえるだろう。


(2)我が国周辺水域の漁獲動向

FAOでは、各大洋を複数の海区に分け、漁獲統計を編集しているが、我が国及びその周辺水域を含む北西太平洋の海面漁業による漁獲動向(図2)をみると、全体としては、1980年代後半以降は2千万トンから2千5百万トンの間で推移している。その内訳を見ると中国の漁獲が90年代前半に急増し、1995年に1000万トンを超えて以降、概ね1200〜1300万トンの漁獲量となっている。一方、中国を除いた漁獲量は、かつては1千8百万トン以上あったものの、最近は7百万トン程度に減少している。これは、我が国の漁獲量の減少による影響が最も大きく、1986年に979万トンの漁獲を記録したものの、これ以降、減少が続き、近年は300万トン台の漁獲となっている。

北西太平洋における主要な魚種(1950〜2007年の平均漁獲量上位10魚種)についてその漁獲の推移をみると(図3)、1980年代から90年代初期にかけてマイワシやスケトウダラが多獲され、80年代後半には2つの魚種の合計で1000万トンを超える漁獲が記録された。しかしながら、マイワシについては90年代に入ると急激な減少を始め、近年は20万トン程度の漁獲となっており、また、スケトウダラについても90年代に入ってまもなく、300万トン台に減少し、2000年代には100万トン台を推移している。一方、カタクチイワシの漁獲量は80年代には30万トン台であったが、90年代に入ってまもなく100万トンを超え、現在も100万トン台で推移している。また、タチウオについても、90年代半ばに100万トンを超え、現在もその水準を維持している。


2.漁業資源の状況

FAOでは、資源評価のための知見を有している資源について、その利用状況をモニターしており、2007年の状況を以下のように述べている。すなわち、主要な漁業資源や魚種グループのうち約5分の1は、適度な利用状況(20%)にあり、これらの資源は、今後、漁獲量の増大をもたらす可能性があるが、約半分(52%)の資源はさらに生産を拡大する余地がなく、十分に利用されており、さらに漁獲を拡大する余地がないと評価し、一方で、約4分の1の資源は、過剰漁獲の状態(19%)、枯渇状態(8%)、枯渇からの回復途上の状態(1%)のいずれかとしている。

また、1974年から2003年にかけての状況をみると、生産を拡大する余力のある資源の割合が一貫して減少したのと同時に、過剰漁獲にある資源や枯渇状態にある資源の割合が増大しており、これらの割合は70年代半ばの10%から2000年代初めには25%近くになっている(図4)。

FAOによれば、世界の漁業生産量の約30%を占める上位10魚種については、十分に開発され、さらに漁獲を拡大する余地がないか、過剰に漁獲されているとしており、例えば、南東太平洋のアンチョビー2系群はさらに漁獲を拡大する余地がないか、過剰に漁獲されており、北太平洋のスケトウダラはさらに漁獲を拡大する余地がないとしているほか、大西洋や太平洋のキハダマグロについてもさらに漁獲を拡大する余地がないとしている。 

以上のような資源の悪化に歯止めをかけ、人類が水産資源を永続的に利用し続けるためには、最大の生産を持続的に確保できるよう、資源状況に即した迅速な管理措置を講じていく必要があり、そのためには資源の現状を的確に把握する必要がある。現在、各国の科学者が漁業者の協力を得ながら資源分析に尽力し、世界の各水域での資源管理に重要な役割を果たしているが、評価に用いる指標の不足や、生物学的な知見が乏しく、まだ不明確な分野も多い。

また、2010年3月に開催されたワシントン条約締約国会議において、大西洋クロマグロの国際取引禁止が提案され、審議の結果、否決されたが、この背景には地域漁業管理機関の資源管理に対する国際社会の問題意識が存在すると思われ、こうした状況を放置すれば、他の魚種もワシントン条約による規制の対象として提案される懸念もある。

我が国は、責任ある漁業国、消費国として、資源状況及び動向要因の把握に努めるとともに、各種の地域漁業管理機関において、従来にもまして積極的なリーダーシップを発揮し、科学的知見に基づく適切な資源管理措置の導入に貢献する必要がある。


執筆者

水産庁 増殖推進部 漁場資源課

田原 康一

参考文献

  1. UN. World Population Prospects (Online query)( http://esa.un.org/unpp/)
  2. FAO. Food Balance Sheet (Online query) (http://faostat.fao.org/site/368/default.aspx#ancor)
  3. FAO. Fishstat Plus (Downloadable database)( http://www.fao.org/fishery/statistics/software/fishstat/en)
  4. FAO. The State of World Fisheries and Aquaculture 2008