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69 ナンキョクオキアミ 南極海

Antarctic Krill

Euphausia superb

                                                           

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図1. 海区別のナンキョクオキアミ漁獲量の推移(1970-2007) (データ:CCAMLR 2007a)


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表1. 48海区における国別オキアミ漁獲量の経年変化(1972/73−2006/07) (CCAMLR 2008b)


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図2. 南極海全体におけるナンキョクオキアミ漁場の位置


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図3. スコシア海(48 海区)における全漁期のオキアミ漁獲分布(CCAMLR. 2008b)] サウスシェトランド諸島(48.1 小海区)、サウスオークニー諸島(48.2 小海区)および サウスジョージア島(48.3 小海区)の周辺へ漁場が集中していることがわかる。


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図4. ナンキョクオキアミ(写真提供:朝日新聞社)


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図5. 南極海ナンキョクオキアミの地理分布は南極前線以南


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図6. 網採集によるナンキョクオキアミの出現箇所(黒色マーク)と不出現箇所 (空白マーク)(出所:過去1930年代以降の累積)


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図7. ナンキョクオキアミの季節および成熟段階における地理分布と生存量 (目盛は相対値)


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図8. ナンキョクオキアミの生活史


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図9. ナンキョクオキアミの卵・幼生期の鉛直移動


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図10. ナンキョクオキアミの生長率と脱皮期間


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図11. サウスジョージア島湾内に仮錨泊する開洋丸。国際共同オキアミ資源量調査の 音響システムを較正中(写真提供:朝日新聞社)


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図12. 開洋丸の音響調査によるナンキョクオキアミおよびハダカイワシの反応事例


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図13. RMT1+8ネットによるサンプリング


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図14. 2000年国際共同一斉調査結果によるナンキョクオキアミ分布密度


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図15. CCAMLRの統計海区


最近一年間の動き

2006/07漁期の合計4カ国メンバーによるオキアミ総漁獲数量実績は、104,586(前年度2005/06漁期106,591)トンであった。国別実績は、ノルゥエーが最大量となり39,783(2005/06漁期9,228)トン、引き続き、韓国33,088(同43,031)トン、日本24,301(同32,711)トン、およびポーランド7,414トンであった。昨年まで漁獲していたウクライナ(2005/06漁期15,206トン)からは漁獲報告はなかった。2005/06漁期から新規参入したノルウェーが一気に漁獲量を増やし、最大漁獲量国となった。我が国は前漁期から今漁期へは約1万トン減少した。2007/08漁期は、6カ国メンバーの8隻漁船により48海区で実施され、現時点では未集計だがほぼ125,063トンであり、昨年漁期と比べて約2万トン増加している。次漁期2008/09年のオキアミ操業計画は、8カ国メンバーの18隻漁船が総計62.9万トン(2007/08漁期68.4万トン)を通知した。この漁獲通知量は現行の保存管理措置の漁獲規制トリガーレベル(620,000トン)を2年連続して超えている。


利用・用途

冷凍品として主に養殖・漁業用の餌料・釣餌とされ、一部が加工食品の原料となる。


漁業の概要

ナンキョクオキアミ(以下オキアミ)操業が世界的に始まったのは1972/73年シーズンからであり、旧ソ連が、7,400トンを漁獲した。オキアミ操業が本格化した後の世界全体の経緯は、1976/77年になると10万トンを超え、1978/79年には30万トン強へ増加し、1981/82年に最大漁獲量50万トン強に到達した。しかし、この後の数年間で漁獲量は、オキアミ商品化の停滞と、漁獲努力が魚類へ移ったことで大幅に減少した。1986/87年から1990/91年までの年間オキアミ総漁獲量は、35万から40万トンの間で安定したが、1992/93年には、前年の30万トンから8万トン台へ大きく減少した。これは、旧ソ連からロシアへ移行した政治体制の大きな変化により、ロシア漁船が採算を取れないという経済的理由でオキアミ漁業を中止したためである。1992/93年以降から現在までのオキアミ年間漁獲量は、10万トン前後で推移している(図1)。ただし、漁獲計画の通知は2008/09年漁期で62.9万トンとなり、主漁場の48海区のトリガー規制値62万トンを超えた。予定通知量と実際漁獲量とでは約50万トンの乖離があるが、世界的に漁獲への関心度がきわめて高いことを示唆する。

スコシア海48海区のオキアミ漁獲量は、近年約10万トン強で以来比較的安定しているが、国別では2005/06年と2006/07年漁期を比べると、我が国は前年から8.4千トン減少(32,711→24,301トン)した。最大漁獲国はノルウェーとなりと前年比4.3倍へ大幅に増加(9,185→39,783トン)した。前年最大漁獲国だった韓国は9.9千トン減少(43,031→33,088トン)した。現在までオキアミを漁獲したことのある国は、アルゼンチン、チリ、ドイツ、スペイン、英国、日本、韓国、ラトビア、ノルウェー、パナマ、ポーランド、旧ソ連、ロシア、ウクライナ、ウルグアイ、米国、バヌアツおよび南アである(表1)。

現在の漁場は、大西洋海区が中心であるが、過去にはインド洋海区でも実施されていた(図2)。現在、主要な漁場は、漁船の寄港地が南アメリカ大陸に近く、資源が豊富だと言われている、スコシア海(サウスシェットランド諸島水域(FAO統計48.1海区)、サウスオークニー諸島水域(48.2海区)及びサウスジョージア水域(48.3海区)に偏っている。

サウスシェトランド諸島及びサウスオークニー諸島水域でのオキアミ操業は、通常夏季に行われているが、これらの高緯度の漁場は冬季には海氷に被われるため、冬季にはサウスジョージア水域でオキアミ操業が行われる。漁獲の中心はサウスシェトランド諸島海区であり、次にサウスジョージア海区となる。ただし、近年、サウスシェトランド諸島及びサウスオークニー諸島水域でも冬季に海氷に覆われない状態が見られ、冬季でも本水域が漁場となる場合もある(図3)。


生物学的特徴

オキアミ(図4)は、南極海(図5)に生息する甲殻類であり、体長(目前端から尾節まで)は最大60 mm以上に達する。寿命は、5〜7年と考えられている。夏季には、爆発的に増殖する植物プランクトンを捕食する。植物プランクトン量の少ない冬季には、動物プランクトンや海氷中の植物プランクトン(アイスアルジー)等も捕食すると考えられている。オキアミの分布域は、南極前線以南の南極表層水と呼称される海域である(図6)が、季節や成熟段階によって大きく異なる。初夏(12月)から盛夏(2月)にかけて成熟個体が陸棚斜面域に分布するのに対し、未成熟個体は主に陸棚縁辺部に分布する(図7)。いずれも表層200 m以浅にパッチ(群れ)を形成するが、パッチは海域によってかなり濃淡がある。成熟した個体は、夏季になると繁殖期を迎える。交尾に際しては、雄は雌の生殖孔に精筴(通常2個)を付着させ、盛夏になると続々と産卵が行われる。1シーズンに複数回産卵すると考えられており、1回の産卵数は2,000〜10,000個程度で1,000 m以深まで沈降し1週間ほどで孵化する。

その後、浮上しながら脱皮を繰り返し、幼生期(ノープリウス→メタノープリウス→カリプトピス→ファーシリア)を経て表層近くに分布する(図8、9)ようになるころ(春季)には、体長20〜30 mmのジュヴェナイル(亜成体:外見は成体と同じだが第二次性徴が現れていない)になる。そして、秋季、冬季になるとジュヴェナイル及び成体ともに沿岸に移動し、海氷直下又は海底付近等に分布すると考えられている。孵化後、2年目以降に成熟する。

オキアミは通常、幼生期には脱皮間隔(日数)が短く、成長率が高い。反面、成体になるにつれて、脱皮間隔が長くなり、成長率が低くなる(図10)。なお、オキアミは、極寒の南極海に適応するために、独特の越冬戦略を行っていると考えられている。餌環境の悪い冬季には、エネルギー消費を低く抑えるために、体長を脱皮により収縮させ、さらには性徴も後退をすることが実験により確認されている。その他、餌生物のスイッチ(植物プランクトンからアイスアルジー又は動物プランクトン)も越冬戦略の一つであると考えられている。


資源状態

オキアミ漁業が本格的に開始(1972年)される以前には、南極海全体のオキアミ資源量は数十億トンと予想されていた。南極海洋生物資源保存条約(CCAMLR)が成立(1982年)する以前にオキアミ資源量を調べるための国際共同BIOMASS調査が計画され、BIOMASS-FIBEX(1981年: 調査面積396.1×103?)によりスコシア海(48海区)のオキアミ資源量は1,510万トンと推定された。この資源量は後に再検討され最終的に3,540万トンと修正された。

近年になってCCAMLRの科学者間でFIBEX資源量を見直す新たな調査を実施しようという意見が強まり、2000年1〜2月に日本(開洋丸: 図11)、イギリス、アメリカ及びロシアの4ヵ国の調査船が、スコシア海で、同一規格の音響装置(図12)、網採集(図13)及び海洋観測(CTD)によって、一斉調査を実施した(調査面積2065.2×103?)(図14)(Watkins et al. (2004))。このCCAMLR-2000一斉調査の結果、48海区のオキアミ資源量を4,429万トン(変動係数11.4%)と算定した。調査面積が増加したことで、以前のFIBEX値よりCCAMLR管理区域の資源量は増えた。ただしCCAMLR-2000調査の値について、CCAMLR科学委員会の音響専門家グループを中心にして再解析を重ねた結果、現時点における科学的最善値として3,729万トン(変動係数20.86%)へ改訂した。この改定値は2007年CCAMLR本委員会で採択されて、保存管理措置のオキアミ予防的漁獲制限量へも反映された。

スコシア海以外でオキアミ資源として利用されている場所は、インド洋区の58.4.1海区と58.4.2海区であるが、この他の海区では適切な資源量は見積られていない。なお、調査資料がある1920年代以降のオキアミ資源の長期傾向は、大気・海氷などの環境変動と関連して1970年代〜1980年代頃に減少傾向が認められ、1990年代に入るとやや横ばい傾向に入る(例えばSiegel and Loeb (1995)、Loeb et al.(1997)、Naganobu et al.(1999)およびAtkinson et al.(2004))。現在の資源量は初期資源量と比較すると減少している可能性が高いと考えられているものの、CCAMLRが管理するオキアミ予防的漁獲制限量は現行で総計655万トン(南極海全体のうち未調査域を含まない)であり、近年の世界の総オキアミ漁獲量10数万トンは、この漁獲制限量の0.02%未満に過ぎない。したがって、MSY資源管理基準に沿うと資源水準は高位、資源動向は横ばいと判断した。しかし、自然状態のオキアミ資源量の変動の動向は、南極生態系にとって極めて重要な要素であり、常に注意を払ってモニタリングしていく必要がある。


管理方策

【CCAMLRによる資源管理】

CCAMLRによる資源管理は、条約において次の原則を謳っている。

  1. 対象資源の安定した加入を確保する水準を保つこと。このために資源量を、 最大年間純加入量を確保する水準以下に減少させてはならない。
  2. 対象資源、これに依存する資源、および対象資源と関係ある資源との間の生態的関係を 維持すること。枯渇した資源については、その資源量を安定した加入の水準まで回復させる こと。
  3. 南極の生物資源の持続的保存を可能にするために、海洋生態系の復元が20年または 30年にわたり不可能になるおそれがある生態系の変化を防ぐこと。またはその危険性を 最小限にすること。これは、漁獲活動による直接的・間接的影響、外来移入種による影響、 漁獲活動が生態系に及ぼす影響、および環境変化による影響についての知見の状態を考慮 しての判断である。つまり生態系変化に対して、人為・自然の両方とも影響を考慮する。

この原則に基づき、CCAMLRは、条約水域を海区ごとに区分(図15)し、海区ごとに保存措置を決めている。2007年現在のオキアミ資源に関するCCAMLR保存措置は、スコシア海とインド洋区の二箇所に設定されている。スコシア海(48海区全体)におけるオキアミの予防的漁獲制限量は、2000年国際共同一斉調査による資源量の割合から、年間347万トンと算定した。その算定方法は、次式の概念によりオキアミの潜在生産力(予防的制限量)を求めた。
      
加えて、ペンギン、アザラシ等のオキアミ捕食者の餌場への悪影響を分散する目的で、小規模管理ユニットという概念で、48海区の小海区(48.1・48.2・48.3・48.4)をさらに分割することの検討が進められている。その小規模管理ユニットへの分割のトリガー値を62万トン(過去漁獲最大量等から算出)と取り決めている。48海区以外で予防的漁獲制限措置が執られている海区は、58.4.1海区の制限量が44万トン、58.4.2海区の264.5万トンである。他の海区では今のところ適切な資源量推定値がないため、予防的漁獲制限量の措置は執られていないが、開発漁業の扱いとなり暫定的な漁業枠が設定されている。


【CCAMLR生態系アプローチ】

1970年代に魚類とオキアミの漁業が本格的に開始されたが、魚類は元の資源量が小さく乱獲を防止するため、また、オキアミは南極生態系の食物連鎖の要(かなめ)であり乱獲されると生態系全体へ悪影響を及ぼすことになるため、これらの資源に対してなんらかの予防策を早急にたてる必要があった。過去の南極海における乱獲の歴史を教訓として、南極条約の協議国メンバーは強い危機意識を持ったが、この南極条約には生物資源についての保護管理の規制がなかった。

そこで、1977年にロンドンで開催された南極条約の協議国の会議において、「南極海の生物資源の乱開発の予防策の勧告」がまとめられた。翌1978年2月には「南極の海洋生物資源の保存に関する条約(Convention on the Conservation of Antarctic Marine Living Resources:CCAMLR)の草案づくりが開始され、1980年に署名、1982年に発効した。

CCAMLRは、ヒトが利用対象とする資源の保存のみならず、その資源に関わる生態系も同時に保護するという理念をもつことから、過去にない内容を持つ画期的な条約と言われている。 我が国のオキアミ漁業と密接に関連する、CCAMLRの漁業管理への生態系アプローチの応用は、新しい方法論への挑戦と言われている。それは、この生態系アプローチは、餌生物と捕食者及びそれらと環境との相互関係を考慮されなければならないからである。生態系アプローチを難しくするのは、要求される項目の調査を、南極海という過酷で遠隔の環境で実行されなければならないことである。 近年の南極海、特に南極半島海域における地域温暖化は顕著であり、海氷面積の後退、棚氷の崩壊、水温上昇等の環境異変の報告が相次いでおり、今後いっそうの変化が懸念されている(IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change (2007))。環境が及ぼす影響は、重要な課題であり(Murphy et al. (2007))、いくつもの研究集会等が推進されており、今後この領域の調査研究が一層増すと考えられる。

漁業、漁獲種、捕食者及び環境は、それぞれが密接に連結・均衡しており、この連結・均衡をシミュレーションすることで、生態系の動態を合理的に判断していくことができる。CCAMLRの条約理念は、単一漁獲種の資源管理のみでなく、その種とかかわりを持つ生態系全体の保護管理を謳っており、そのアプローチが取られている。この点が単一種の資源管理方策と異なるため、独特のアプローチとなり、実務・調査研究においても複雑度を増す。具体的なイメージで言えば、オキアミ資源を利用する漁業(図16)と自然界のオキアミの捕食者との均衡をどう図っていくか。これに加えて、近年の環境変動をも考慮する必要がある。複雑な問題とはいえ、避けては通れない重大なアプローチである。


ナンキョクオキアミ(南極海)資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
10.6〜12.9万トン
平均:11.6万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
2.3〜6.0万トン
平均:3.5万トン
管理目標 予防的漁獲制限量
(CPUEを減少させない・捕食者生態系の保存)
目標値 CCAMLR海区毎に漁獲制限量
・48海区:347万トン
・58.4.1小海区:44万トン
・58.4.2小海区:264万トン
資源の現状 主要漁場48海区の資源量3,729万トンのうち漁獲制限量347万トンで、総漁獲量は11万トン。
管理措置 ・48海区では、過去最大漁獲量62万トンがトリガー値として設けられているが、 小規模管理ユニットへ制限量を分割することを現在検討中。
・漁獲制限量が設定されている58.4.1と58.4.2海区以外の他海区は、資源量未調査のため 漁獲制限量は未定。
資源管理・評価機関 CCAMLR

執筆者

南極オキアミ・サブグループ
遠洋水産研究所 南大洋生物資源研究室

永延 幹男


参考文献

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