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67 アメリカオオアカイカ 東部太平洋

Jumbo Flying Squid

Dosidicus gigas

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最近一年間の動き

FAO漁獲統計によると、2006年の全世界のアメリカオオアカイカ漁獲量は、ペルーとチリがそれぞれ43万トンと26万トンの漁獲を揚げたことから、83万トンとほぼ前年並で、いか・たこ類の中で世界一を維持した。


利用・用途

大型は皮を剥いだ切り身にサイの目に切れ目を入れ、シーズニングスパイスを添えるか、ピリ辛風ソースを絡めた「イカステーキ」に加工される。また、中型は冷凍ロールイカ等に加工される。最近、イカ加工業者の長年の製品開発努力の結果、アメリカオオアカイカを原料としたイカ加工品は、従来のアカイカ系の主要用途である惣菜(天ぷら、フライ)加工分野に留まらず、塩辛や乾燥珍味(さきいか、くんせい)の分野にも拡大している。


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図1. アメリカオオアカイカ国別漁獲量(データFAO:2008)


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表1. アメリカオオアカイカの成熟体長と寿命(増田ほか1998、Koronkiewicz 1998、Nesis 1983)


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図2. アメリカオオアカイカの分布図


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図3. 中・大型アメリカオオアカイカの成長(増田ほか1998)


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図4. .最近のアメリカオオアカイカ分布拡大と海岸への大量打ち上げの様子 (Booth, Nolan & Gilly, (2006)を改変) 写真(上):アラスカ沖の海氷域に出現した本種. 写真(中、下):それぞれ米国およびチリの海岸に大量に打ち上げられた本種. 地図中の黄色い楕円は漁場を示す。


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図5. 漁場分布 7〜12月における表面流と太平洋東海岸赤道域の20℃等温線の深度。湧昇域付近に漁場(赤丸囲み)が 形成される。


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図6. 我が国のアメリカオオアカイカ漁獲量(左)とCPUEの変遷とエルニーニョ・ ラニーニャ現象の相対的規模(右)


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図7. ペルー沖のアメリカオオアカイカCPUEと前年9月のコスタリカ沖の表面水温 において孵化適水温(24-28℃)が占める割合との関係(Waluda and Rodhouse 2006)


漁業の概要

我が国のアメリカオオアカイカ漁業は、認可法人海洋水産資源開発センター(現独立行政法人水産総合研究センター開発調査部)が1971/72漁期(漁期の定義は5月から翌年の4月まで)にカリフォルニア半島周辺で開発調査を行ったことに端を発する。その後、マツイカ及びアカイカ漁業の補完的資源として注目されるようになり、同センターが1984/85漁期から本格的な調査を実施した(黒岩1998)。イカ釣り漁船も1989年頃から操業を開始し、1991年までは主にメキシコ200海里内で操業を行った。一方、1989年に同センターがペルー200海里内において本種の高密群を発見し、翌年からイカ釣り漁船40隻余りが同海域に出漁し、各年4〜8万トンを漁獲し、南西大西洋に次ぐ重要な漁場となった。しかし、1996年からペルー海域は不漁となり、同年には漁船により北半球公海域(コスタリカ沖)において新漁場が発見された。1998年には本種を対象にした操業は行われなかったが、1999年にはコスタリカ沖及びペルー沖で操業が再開された(一井 2002)。2000・2001年は我が国によりペルー海域及びコスタリカ沖で年間約7〜8万トンが漁獲された。その後は、主にペルー海域のみで操業し、3〜6万トン程度の漁獲を上げている。

FAO漁獲統計によると、全世界のアメリカオオアカイカ漁獲量は1990〜1992年にかけて、約3万トンから12万トンに急増し、その後1998年を除いて2001年まで14〜30万トンを維持した(図1)。なお、1998年は不漁のため操業を行わなかった。その後2002・2003年に約40万トンに増加し、2004〜2006年には80万トン前後まで急増し、いか・たこ類で世界一の漁獲量となっている。海域別にみるとペルー海域(チリ沖も含む)では、1992〜1995年及び2000〜2001年に計10万トン以上の漁獲が我が国、ペルー及び韓国により上げられ、2002・2003年に中国が加わり計約30万トンの漁獲が上げられ、2004〜2006年にチリも加わり年間計70万トンにまで急増している。また、カリフォルニア湾では、1996・1997年及び2002〜2004年に約10万トンの漁獲がメキシコにより上げられている。


生物学的特徴

本種は、熱帯・亜熱帯域の外洋−沿岸性種であり、カリフォルニア沖からチリ沖にかけての海域に分布する(図2)。成熟体長により小型、中型及び大型に区分され、後者は外套長が120 cmに達するアカイカ科最大の種である(Nesis 1983)。小型は、赤道付近及びカリフォルニア海流域だけに見られ、中型と大型はそれぞれ南北半球に別れて分布する(Nesis 1983)。大型は、年によって出現したりしなかったりする。

中型の雌は生後約5ヶ月(外套長30〜40 cm)、雄は生後約4ヶ月(20〜30 cm)で成熟し、寿命は1年と推定される(表1、図3)。体長は雌の方が雄より少し大きい(増田ほか1998)。大型の雌は外套長が65〜75 cm、雄は55〜65 cmで成熟する(増田ほか 1998、Koronkiewicz 1988)。大型の成長は1年間で約80 cmと推定され(増田ほか 1998)、この成長率を採用すると、アメリカオオアカイカは約1年半で最大体長(120 cm)に達することになる(図4)。小型の雌は外套長20〜27 cmで、雄は15〜18 cmで成熟する(Nesis 1983)。日齢査定は全く行われておらず、成長や寿命については不明である。

アメリカオオアカイカの食性は発育段階により異なり、小型個体は主にオキアミ類等のプランクトン、中型及び大型個体はハダカイワシ科等の魚類及びイカ類(共食い)を主餌料とする(ヤマシロほか 1998)。特に、外套長20 cm以上のアメリカオオアカイカの胃内容物からは、ハダカイワシ類が最も多く出現する。一方、アメリカオオアカイカの捕食者としては、キハダ、イルカ、マッコウクジラ等が挙げられる(Perin et al. 1973)。

本種は、大規模な回遊を行わないと考えられる。ペルー沖では、高密分布域は周年にわたって南緯3〜10度にあり、そこでは常に成熟した雌雄が活発な索餌活動を行っている。この高密域は沿岸湧昇域であり、産卵場と索餌場が一致するため大規模回遊を行う必然性はない(図5)。また、コスタリカ沖でも、高密分布域は北赤道海流と北赤道反流の間の湧昇域(北緯8〜10度)に相当し、生産力が高く、産卵場と索餌場が一致する。


資源状態

ペルー海域とコスタリカ沖の個体は、DNA解析により別系群であることが明らかにされたため(和田 未発表)、海域別に述べる。

ペルー海域では、1991〜1995年は好漁であったのが、1996年から漁獲量・CPUEとも減少している(図6)。ちょうど前者の漁期は、エルニーニョ傾向の温暖期で亜熱帯表層水がペルー沖へ広がっていたのが、後者の漁期からラニーニャ傾向で寒冷期に転じた。さらに、1994年には総漁獲量が20万トン(日本、韓国及びペルー)に達したことから、1996漁期の不漁の原因として、海況(ラニーニャ現象)と乱獲の両方の可能性が考えられる。1997/98年には大規模エルニーニョが発生したものの、好漁にはならず引き続き不漁であったが、2000年以降は好漁に転じた。なお、ペルー政府は2008年の資源量を音響調査によって300万トンと非常に大きく見積もっている。

コスタリカ沖の沖合漁場では、1996年 (平常年)及び1997年(エルニーニョ期)には好漁であったが、1999年(ラニーニャ期)には不漁であった(図6)。ラニーニャ期に漁場形成が未発達であった原因として、北赤道反流と北赤道海流間の湧昇が弱まり、また、北赤道反流の塩分フロントも弱まったことが挙げられる(Ichii et al. 2002)。ペルー海域同様、2000年以降(平常年)は好漁となった。しかし、2001年以降、当海域での操業はほとんどない。

以上、本種の資源は2000年以降、高水準にある。

最近の研究によると、ペルー沖のアメリカオオアカイカのCPUEと前年の9月のコスタリカ沖の海洋環境との間に高い相関(r2=0.74)が見出されている(図7)。この海洋環境というのは、表面水温に占める本種の孵化適水温(24-28℃)の割合(%)である。ペルー沖とコスタリカ沖の本種は別系群であるので、この高い相関は、ペルー沖の海洋環境がテレコネクションによってコスタリカ沖の海洋環境に反映された結果と考えられる。従って、この相関を用いて、ペルー沖の本種の加入をコスタリカ沖の海洋環境から予測することが可能かもしれない。


管理方策

ペルー政府は、自国のEEZ内における本種の資源管理をSchaeferモデルによるMSYに基づいて行っていると言われているが詳細が不明である。2008年の外国へのTACは当初30万トンと設定したが、その後の音響調査で、本種の資源が300万トンと大きく推定されたため、このTACは増やす可能性もあるという。

本種は漁況のみならず、商品価値の高い中型の出現が不安定であるので、漁況及びサイズ組成の予測手法の確立が重要な課題である。


アメリカオオアカイカ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
39.8〜83.3万トン(全域)
平均63.3万トン
24.9〜78.3万トン(ペルーEEZ内)
平均54.4万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
2.7〜6.0万トン(全域)
平均3.9万トン
2.3〜4.2万トン(ペルーEEZ内)
平均3.0万トン
管理目標 MSY:30万トン(2008年ペルーEEZ内の外国へのTAC)
資源の現状 ペルー政府は2008年の資源量を400万トンと見積もった
管理措置 TAC30万トン(2008年ペルーEEZ内の外国へのTAC)
資源管理・評価機関 ペルー政府

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 熱帯性まぐろ研究室

仙波 靖子

遠洋水産研究所 数理解析研究室

余川 浩太郎


参考文献

  1. FAO. 2002. Capture production 1950-2004. FAO Yearbook, Fisheries Statistics. http://www.fao.org/fi/statist/FISOFT/FISHPLUS.asp(2006年12月6日)
  2. 一井太郎. 2002. 東部太平洋海域. In 奈須敬二・奥谷喬司・小倉通男 (共編), イカ-その生物から消費まで-(三訂版), 成山堂書店, 東京. 209-219 pp.
  3. Ichii, T., K. Mahapatra, T. Watanabe, A. Yatsu, D. Inagake and Y. Okada. 2002. Occurrence of jumbo flying squid Dosidicus gigas aggregations associated with the countercurrent ridge off the Costa Rica dome during 1997 El Ni?o and 1999 La Ni?a. Mar. Ecol. Prog. Ser., 231: 151-166.
  4. Koronkiewicz, A. 1988. Biological characteristics of jumbo flying squid Dosidicus gigas caught in open waters of the Eastern Central Pacific from October to December 1986. ICES C. M. 1988, K: 42, 6 pp.
  5. 黒岩道徳. 1998. 海洋水産資源開発センターによる南東太平洋海域のアメリカオオアカイカ(Dosidicus gigas)資源に関するイカ釣調査の変遷. In 奥谷喬司 (編), 外洋性大型イカ類に関する国際シンポジウム講演集. 海洋水産資源開発センター, 東京. 85-102 pp.
  6. 増田 傑・余川浩太郎・谷津明彦・川原重幸. 1998. 南東太平洋海域におけるアメリカオオアカイカDosidicus gigasの成長と資源構造. In 奥谷喬司 (編), 外洋性大型イカ類に関する国際シンポジウム講演集. 海洋水産資源開発センター, 東京. 103-114 pp.
  7. Nesis, K.N. 1983. Dosidicus gigas. In Boyle, P.R. (ed.), Cephalopod life cycles Vol. 1. Academic Press, London. 215-231 pp.
  8. Perrin, W.F., R.R. Warner, C.H. Fiscus and D.B. Holts. 1973. Stomach contents of porpoise, Stenella spp., and yellowfin tuna, Thunnus albacares, in mixed - species aggregations. Fish. Bull., 71: 1077-1092.
  9. Waluda, C.M., and P.G. Rodhouse. 2006. Remotely sensed mesoscale oceanography of the Central Eastern Pacific and recruitment variability in Dosidicus gigas. Mar. Ecol. Prog. Ser., 310: 25-32.
  10. ヤマシロ, C., L. マリアテギ, J. ルビオ, J. アルグレス, R. タフー, A. タイベ, M. ラビー. 1998. ペルーにおけるアメリカオオアカイカ漁業. In 奥谷喬司 (編), 外洋性大型イカ類に関する国際シンポジウム講演集. 海洋水産資源開発センター, 東京. 115-122 pp.