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48 ミンククジラ オホーツク海―西太平洋

Common Minke Whale

Balaenoptera acutorostrata

                                                                    PIC
                                                                    図1. ミンククジラ(胸びれの白斑と細く尖った頭部が特徴)
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最近一年間の動き

国際捕鯨委員会(IWC)による第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN U)の レビュー方法が第60回年次会議で決まり、レビュー会議(2009年2月予定)に向けて作業が 開始された。


利用・用途

鯨肉は、刺身、大和煮(缶詰)、鍋物材料、ベーコンなどで利用される。 ヒゲ板は工芸品の材料として利用される。かつて鯨油が工業原料として利用されていたが、 現在は需要がない。


図2

図2. ミンククジラ捕鯨頭数の推移(1930〜2006)


図3

図3. 浮上したミンククジラ


図4

図4. ミンククジラ(オホーツク海-西太平洋系群)の分布図


図5

図5. ミンククジラ(オホーツク海-西太平洋系群)の春から夏の回遊経路(Hatanaka and Miyashita (1997)を改変)


表

付表. 北西太平洋でのミンククジラの捕獲頭数


漁業の概要

本種は17世紀に隆盛を迎えた古式捕鯨でも捕獲されていたと推測されるが、記録に残されていない(Ohsumi 1991)。これは、当時他の鯨類、例えばナガスクジラなどと区別されていなかったためと推測される。本種の捕獲が記録されるのは近代捕鯨になってからで、本格的には1920年代末に盛んになった沿岸の基地式捕鯨業の一種である小型捕鯨業によるものである(Omura and Sakiura 1956)。本系群は1987年まで、小型捕鯨業で商業的に捕獲されてきた。主な漁場は、三陸、道東沖並びに北海道オホーツク海沿岸であった。春〜夏のオホーツク海沿岸では、本系群とは別の東シナ海-黄海-日本海系群が混じっていることが知られている。

1988年以後は国際捕鯨委員会の商業捕鯨モラトリアムにより、商業捕鯨は停止状態にあ る。一方、国際捕鯨委員会の改訂管理方式(櫻本 1996、 田中2002)の試行実験で想定された亜系群の仮定を検証する目的で、我が国は国際捕鯨取締条約に認められた特別捕獲(JARPN)を1994年から1999年まで実施し、毎年100頭を上限に捕獲した。2000年以降、北西太平洋における鯨類と餌生物を巡る生態系の解明を目的とした捕獲調査(JARPN II)の予備調査を実施し、2001年まで沖合で100頭を捕獲した。2002年以降は本格調査を開始し、沿岸での50頭を加え合計150頭を捕獲している。1930年から2006年の捕獲頭数の推移を図2に示す。本種は1950年代から80年代半ばまで毎年300頭程度の捕獲が安定して継続していたことがわかる。


生物学的特徴

本種は、胸びれの白斑と細く尖った頭部から識別が可能である(図1、図3)。本系群の冬季の分布南限と、沖側の分布限界がどこまで延びているのかは不明であるが、前者については少なくとも北緯30度付近まで、後者については東経170度までは分布するとされる(図4)。

本系群は冬季に繁殖のため低緯度海域(少なくとも北緯30度以南)に回遊し、初夏に北部太平洋岸を北上、夏季には大部分がオホーツク海に回遊する。また、夏季には千島列島東方沖合いや北海道沿岸にも分布する。遺伝情報や形態情報から、本系群は東経170度まで分布していることがわかっている。本種は、成熟段階による棲み分け、すなわち未成熟個体が初夏の北部太平洋沿岸に多く、夏季の高緯度海域(オホーツク海)には成熟した雌が多く、夏季終わりには東部北海道沖に成熟雌が多いことが知られている。成熟雄は夏季には成熟雌より南方の千島列島東方を中心とした海域に分布する(図5)。

本系群は、1月〜2月に交尾、10.5〜11ヶ月の妊娠期間を経て、体長(上顎先端から尾 鰭切れ込みまでの直線距離)2.6 mの胎児を出産する。性成熟に達する体長は、雄6.3 m、雌7.1 mと推定されている(加藤 1990)。本種では、年齢形質である耳垢栓の年輪が読みにくいため、年齢に関する特性は読みやすい南半球産から類推されており、性成熟年齢は6〜8歳とされる。自然死亡係数は、0.11と推定されている。なお、南半球産のミンククジラは,別種のクロミンククジラ(Antarctic Minke Whale、 B. bonaerensis)とされている。なお、東シナ海-黄海-日本海系群の交尾期は、本系群と異なり、10月〜11月にとされる(Kato 1992)。

本種は、サンマ、スケトウダラ、カタクチイワシ、イカナゴなど数種の魚類のほか、スルメイカ、オキアミなども捕食することが知られている(Tamura and Kato 2003)。


資源状態

本系群の資源量は、わが国が実施した目視調査に基づき、25,049頭(95%信頼区間、13,700‐36,600頭)と推定されている(Buckland et al. 1992、 Miyashita and Shimada 1994、 IWC 1997)。この推定値は、ライントランセクト法(Buckland et al. 1993、岸野1991、 宮下 1990)と呼ばれる方法に従って得られたものである。しかし、北半球産本種の発見の手がかりは、ほとんどがほんの一瞬海面上に出す体(背中)であり、非常に見えにくいことが知られている(図3)。このため目視調査から密度を推定する際の調査線上の発見率(g(0))が100%という仮定が成り立たず、過小推定であるとされる。現在(1991年)の初期資源(1930年)に対する割合は、61〜88%と推定されている(Anon. 1992)。

【資源評価・水準・動向】

国際捕鯨委員会では、ヒッター・フィッターと呼ばれるプログラム(de la Mare 1989)が開発されており、パラメータにいくつかの仮定をおいた上で、これを用いた北西太平洋ミンククジラの資源評価が行われた(袴田1999)。この解析によると、現実的な仮定のもとでは、資源は増加傾向を示しており、1999年の成熟雌は初期資源に比して70%以上の大きさを持つと考えられており、資源は比較的高位にあると判断することができる。また、本プログラムによると資源は近年増加傾向にある。

【系群の問題】

1980年代より、国際捕鯨委員会において、北西太平洋には日本海・黄海・東シナ海系群(Jストック)とオホーツク海・西太平洋系群(Oストック)の2つの系群が存在することが知られていた。一方で、 1993年に開かれた国際捕鯨委員会で、北太平洋に分布するのはO系群だけでなく、沖合海域に別の系群(W系群)及び亜系群が存在する可能性が指摘された。このため、その解明を目的に1994年から開始された北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN)では、亜系群仮説を否定する方向で結論が得られたものの、W系群の有無については依然として結論には至っていない(後藤・上田 2002)。


管理方策

【改定管理方式(RMP)】

現在は資源状態にかかわらず本系群の商業捕獲は停止状態にある。国際捕鯨委員会は商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を行う一方で、対象資源の包括的資源評価を実施している。本系群の包括的資源評価は1992年に完了しているが、旧管理方式下の資源分類では統一した見解に至らなかった。1993年京都で開かれた国際捕鯨委員会に仕様書が提出された改訂管理方式には、フィードバック管理の考え方が意識的に取り入れられており、徹底したシミュレーションテストを通して様々な不確実性のもとでも安全な管理が行えるものとなっている(田中1996a、b)。改訂管理方式に必要な情報は、目視調査から推定される資源量推定値と過去の捕獲実績であるが、系群の仮説は捕獲枠算定に大きく影響するため、本種の管理における最大の争点の一つとなっている。国際捕鯨委員会は、本系群に対する改訂管理方式(RMP)の適用試験(IWC 2002)を実施し、2003年の会合でその結果が報告された(Anon. 2003)。それによると、1,104通りのシミュレーションを行い、商業捕獲枠が算出されたが、最も妥当性が高い系群構造の仮説では、平均で150頭程度(最小63頭、最大311頭)の捕獲枠が算出された。これをもって本系群へのRMP適用試験は終了した。

【管理にあたっての特記事項】

我が国はg(0)補正と資源量推定の改訂を目的とした独立観察者通過方式による目視調査をロシア共和国と共同でオホーツク海において1999年に開始した。以後2000年と入域許可がおり、予備調査を実施した。その後、2003年に3年ぶりに入域許可がおり、初めて本格的な調査が実施された結果、明らかにg(0)が1以下であることがわかり、資源量推定値の改訂作業が行われている。さらに、カムチャッカ半島東方と千島列島東方のロシア200海里EEZの調査が2005年に実施された。


ミンククジラ(オホーツク海-西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
なし
我が国の漁獲量
(最近5年間)
捕獲調査により年間160頭(2005年以降)
管理目標 初期資源の62%
資源の現状 西部北太平洋では目視調査により増加傾向判明
管理措置 捕獲は科学調査を目的としたもののみ、商業捕鯨は休止中
資源管理・評価機関 IWC

執筆者

鯨類グループ
遠洋水産研究所 外洋資源部

宮下富夫・岡村 寛

(東京海洋大学 加藤秀弘支援)

参考文献

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