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46 イシイルカ 太平洋・日本海・オホーツク海

Dall's Porpoise

Phocoenoides dalli

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イシイルカ型イシイルカ(左)とリクゼンイルカ型イシイルカ(右)(撮影:宮下富夫) 白斑部の長さの割合が異なることが明瞭に見て取れる。 両型の分布域の境界付近ではこのように混じった群れが見られることもある。 なお、本文中では、以後イシイルカ型およびリクゼンイルカ型と呼ぶこととする。

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図1

図1. イシイルカ捕獲頭数の推移(1979〜2006年)(水産庁遠洋課集計)


表1

表1. 型別・道県別捕獲枠(岩アら 2001、水産庁)


図2

図2. イシイルカ型イシイルカの体側面


図3

図3. リクゼンイルカ型イシイルカの体側面


図4

図4. イシイルカ型イシイルカの成長曲線(左:雄、右:雌) (仲松 2000)


図5

図5. リクゼンイルカ型イシイルカの成長曲線 (左:雄、右:雌)(Kasuya 1978)


図6

図6. 北太平洋のイシイルカの分布(吉岡・粕谷 1991を改変) (繁殖海域にもとづくイシイルカの8系群を示す。1はリクゼンイルカ型系群、2はイシイルカ型の日本海−オホーツク海系群、3〜8はイシイルカ型他系群の各繁殖海域。)


図7

図7. 我が国周辺のイシイルカの分布(吉岡 1996)


表

付表. イシイルカの捕獲頭数(1979〜2007年)


最近一年間の動き

2007年のイシイルカ型の捕獲は2004年と同様にやや低レベルにある。浜値低迷と燃油高騰により岩手船が北海道への出漁を控えたためと考えられる。調査データに基づいて資源量を改訂した(宮下ほか 2007)。水産庁による捕獲枠の見直しも計画的に行われた。


利用・用途

小型歯鯨のうちのいわゆるいるか類には、水族館等の展示用の生体として販売されるものがあるが、本種は飼育例も少なく、また生体を捕獲できる漁法ではないため、食用として捕獲されている。筋肉と脂皮が刺身用、煮物用、加工用などに利用される。かつては飼料に用いられたこともあったが、現在ヒトの食用以外の利用は確認されていない。


漁業の概要

本種は、第二次世界大戦前から三陸の突きん棒漁業によって捕獲されている。1970年代までは冬季に三陸沖で日帰り操業するのが主であったが、1980年頃に他県海域に遠出する船が現れ、1985年頃から北海道海域での操業が本格化した(粕谷・宮下 1989)。

現在も岩手県、北海道、宮城県及び青森県の漁船(20トン未満)が操業しているが、岩手県船の捕獲頭数が約9割を占める。岩手県船の操業パターンは、11〜4月に三陸の地先海域で日帰り操業し、5月半ばから6月末まで北海道の日本海沿岸、9〜10月に北海道のオホーツク海沿岸あるいは道東太平洋沿岸の港を基地に日帰り操業(沖泊まりはしない)を行うものである。イシイルカ漁業者の多くは、時期と海域によってカジキ漁やイサダ漁なども行う兼業者である。

1993年に本種に捕獲枠が設定された。漁場と系群は三陸沿岸においてはほとんどがリクゼンイルカ型でわずかにイシイルカ型が混じり、北海道沿岸ではほぼ全数イシイルカ型である。

この漁業は岩手県においては1989年に県知事許可漁業となった。また省令改正により2002年4月までには他道県においても海区漁業調整委員会による承認漁業から知事許可漁業に移行した。

水産庁の統計によれば、大型捕鯨業がモラトリアムに入る前(1987年以前)は年間20,000頭以下の捕獲頭数であったが、モラトリアム以降は鯨肉の流通不足を補うためか、1988年に捕獲頭数が40,000頭以上へと急増した(図1)。この年までの統計では、イシイルカ型とリクゼンイルカ型が区別されていない。捕獲頭数の推移は暦年で示したが、捕獲枠は8月から翌年7月までの1年を単位として管理されているため、見かけ上は捕獲枠を超えている年もある。また、探索は人の視力に依存しているため、捕獲動向は天候・海況に左右される。なお、捕獲統計のうち北海道沿岸における道内船の漁獲物の一部は洋上で製品に処理してから水揚げされている。こうした漁獲物については正肉50キログラムをイシイルカ型1頭として換算してある(端数切り上げ)。

浜値は1994年頃の好況期には内臓抜きの鯨体(イシイルカ型1本90キログラム台、リクゼンイルカ型80キログラム台)1キログラムあたり600円台ということもあったが、近年は下落している。近年業界は魚価300円台を目標に生産調整を行ってきたようであるが、これまでの主力だった流通業者が倒産するなど価格の維持には困難が状況が続いている。岩手県への水揚げ状況は、岩手県水産技術センターのウェブサイトの「フィッシャリィ.ネットいわて」(http://www2.suigi.pref.iwate.jp/)の「市況検索」から窺い知ることができる。1970年代以降、大規模な北洋さけます流し網・いか流し網漁業によってイシイルカ型個体が混獲されており、年間3,000頭程度と推定された年もある(Anon 1992、1993)。しかしこれらの漁業は、国連決議に従って1992年を最後に停止された。これらの他、沿岸の刺し網、定置網への混獲が少数報告されている。


生物学的特徴

本種は北太平洋及びその隣接海域の固有種である。図2の個体のように体側の白斑が背鰭近くから尾側に伸びるのがイシイルカ型で、図3の個体のように胸鰭基部から始まるのがリクゼンイルカ型である。まれに全身黒い黒化型や、その逆の白化型が見られる。分布域内を冬季に南下、夏季に北上する。本種は大きな群れは作らず、群れ構成頭数は概ね10頭以下である。繁殖は季節が限られており、晩春から夏に出産する(1産1仔)。冬季には成熟雄の精巣に精子が見られず、また成熟雌の排卵もほぼ夏季に限られる。妊娠期間は1年弱。両型ともに体長85〜100cmで生まれる。イシイルカ型の雄は4〜5歳、体長190cm前半、雌は3〜4歳、体長180cm後半で性成熟に達する。

リクゼンイルカ型の雄は5〜6歳、体長190cm後半、雌は3〜4歳、体長180cm後半で性成熟に達する。成熟雌は1〜2年に1回出産し、授乳期間は1〜2ヶ月と考えられている。雌は出産後約1ヶ月で交尾できる。したがって授乳中に受胎することもまれではない。親子連れにもう1頭の個体が加わって遊泳する例が観察されるが、交尾の機会を窺う成熟雄であると推察できる。

寿命は15〜20歳といわれる(Kasuya 1978、Kasuya and Shiraga 1985、仲松2000)。しかし本種の場合、歯が極端に小さいため、高齢個体の年齢査定が非常に困難である。そのため正確には未解明である。両型の成長様式は、図4、図5の様に推定されている(Kasuya 1978、仲松 2000)。

夏季に親子連れが発見される海域の分離の様子からは、本種の系群は8個を数えられる(図6:吉岡・粕谷 1991)。うち7系群はイシイルカ型の体色型である。日本の漁業に捕獲されるイシイルカ型系群のほとんどは、オホーツク海南西部で繁殖する日本海-オホーツク海系群である。この系群は、冬季には兵庫県沖まで南下し、夏季には日本海を北上して繁殖海域に入る他、道東の太平洋沿岸域にも現れる。一方リクゼンイルカ型の系群はオホーツク海中部を繁殖海域とする。冬季には三陸沿岸まで南下し、秋には道東太平洋沖合に分布する。道東太平洋においては両体色型が見られるが、混群を作ることはまれであり、上述のように沿岸と沖合に分布海域を分け合っている(岩ア・宮下 1992)(図7)。

ミトコンドリアDNAの塩基配列を分析すると、両体色型間には差異が見られた。両者間では体色型も明確に異なるため、別個の系群として管理するのが妥当である。DNA塩基配列を比較したところ、日本海-オホ-ツク海系群のイシイルカ型と東方の太平洋沖合のイシイルカ型系群との間にも差が認められた(吉田 2002、Hayano et al. 2003)。冬季に三陸沖で捕獲される個体には5%ほどイシイルカ型が含まれる。体色型の比較により、これらは太平洋沖合のイシイルカ型系群に属するものと考えられている(Amano et al. 1996)。このことから、冬季に三陸沖には北太平洋沖合からイシイルカ系群が流入することが示唆される。

イシイルカ型は、北海道の日本海沿岸では1980年代には主にマイワシを捕食していた。しかし1990年代には日本海系マイワシ資源の崩壊により、スケトウダラを捕食するようになった。スケトウダラにも資源減少の傾向が見られるため、本種による捕食がそれに追い討ちをかけている可能性がある。一方、三陸沖つまりリクゼンイルカ型は、ハダカイワシ類を主に捕食しており、この傾向には変化が見られない(大泉 2002)。

なお、本種の捕食者としてはシャチが挙げられる(シャチの胃内容から本種が報告されている)。

資源状態

イシイルカ型は1980年頃から開発された資源と考えられるが、リクゼンイルカ型は漁獲の歴史が長い。いずれも危急の状態とは判断されていないが、現在は各種調査データを検討している状況にある。

オホーツク海を含む海域で2003年夏季に実施した目視調査を基に、イシイルカ型173,638頭(変動係数0.212)、リクゼンイルカ型178,157頭(変動係数0.232)と推定された(宮下ほか 2007)。今後適切な時期に新たな資源量推定値を得るには、夏季にオホーツク海のロシア200海里水域に入域できること、同時に実施するミンククジラ目視調査と調査設計上両立させることが鍵となる(宮下 2002)。

資源水準については、規制および操業形態等の変化があり、見定めることが非常に困難であり、調査継続中である。しかしながら、過去5年間の捕獲頭数がほぼ安定していることから近年の資源動向は横ばいと考えられる。


管理方策

鯨類の再生産率は1〜4%と経験的に考えられている。前述のように出産間隔から本種の再生産率が高い方(3〜4%)であることが窺える。資源量と再生産率に捕獲実績等を加味して1993年に水産庁が捕獲枠を設定した。これは沿岸の漁業資源の一部に生物学的許容漁獲量(ABC)が導入されたのに先んじている。捕獲枠は体色型別、道県別に配分されており(表1)、各道県はABCに準じた資源管理責任を有すると言えよう。

現状においても本種は漁期、海域、捕獲枠を含む許可制によって管理されている。しかし、合理的かつ科学的な資源管理をさらに推し進めるためには、本種の生態・資源量、漁業の特性などを考慮した資源管理モデルの構築が求められている(岡村 2002)。水産庁は2007年に本種の管理にPBR(Potential Biological Removal; Wade 1998)の概念を導入した。


イシイルカ(太平洋・日本海・オホーツク海)資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.41〜1.76万頭
平均:1.35万頭
管理目標 現在の資源水準の維持
資源の現状 イシイルカ型イシイルカ系群:17.4万頭
(CV=0.212、2003年)
リクゼンイルカ型イシイルカ系群:17.8万頭
(CV=0.232、2003年)
管理措置 操業海域の道県知事による許可制
(体色型別捕獲枠、年間5〜6ヶ月の漁期、捕獲統計)
資源管理・評価機関 水産庁、漁業道県

執筆者

鯨類グループ
いるかサブグループ
遠洋水産研究所 鯨類生態研究室

岩ア俊秀(協力:同研究所 吉田英可、宮下富夫、岡村 寛)

参考文献

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