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39 アブラツノザメ 日本周辺

Spiny Dog Fish

Squalus acanthias

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最近一年間の動き

2007年の沖合底びき網漁業(以下沖底)の漁獲量は太平洋、日本海ともに2006年より増加した。CPUEは常磐海区の居ったトロールで2006年より減少したが、それ以外の太平洋各小海区、日本海のかけまわしでは増加した。


利用・用途

東北地方では刺身や煮物、照り焼きなどで食されるほか、かまぼこ原料として利用される。また、肝油や軟骨エキス等、栄養補助食品の原料の一つになっている。


図1

図1. 沖合底びき網漁業によるアブラツノザメの海区別漁獲量(1971年〜2007年)


表1

表1. 1952〜1955年の海区別アブラツノザメ漁獲量(田名部ほか1958を改変)


図2

図2. 2007年の沖合底びき網漁業によるアブラツノザメの漁獲量分布


図3

図3. 青森県におけるアブラツノザメの漁獲量(沖底を除く、1999〜2007年)※太平洋側の漁獲量が含まれていない数値


図4

図4. アブラツノザメの分布


表2

表2. アブラツノザメの雌雄別海域別年齢−全長関係式(Ketchen 1975)


図5

図5. アブラツノザメの雌雄別海域別年齢−全長関係 (Ketchen 1975より作成)


図6

図6. 沖合底びき網漁業による太平洋北区および日本海(かけまわし)におけるアブラツノザメのCPUE


図7

図7. 沖合底びき網漁業による太平洋北区および日本海(かけまわし)におけるアブラツノザメの網数


漁業の概要

アブラツノザメは北日本の太平洋側や日本海側においてかなり古い時代から漁獲されていたものと思われる。しかし、本種が漁獲対象として注目されるようになったのは、明治30年代末頃からであり、北海道、青森、秋田、石川県などで当初はマダラやオヒョウなどを対象とした底はえ縄漁船の兼業として漁獲された。その後大正年間に至り、魚粕の高値に伴って一時的に発展したり、暴落により衰退したりを繰り返した。また、大正時代には北海道や青森県などで底さし網漁業が導入され、北海道では各地に普及して大きな漁業となっていったが、青森県では3〜4年で再び底はえ縄に転換する漁船が多かった。(田名部ほか 1958)。

昭和初期になると、機船底びき網漁業でアブラツノザメを漁獲するようになった。しかし、第2次世界大戦頃には資材の不足により底はえ縄による漁獲が主体となった。戦後は食糧増産政策に伴い主に機船底びき網により積極的に漁獲されるようになり、急激に漁獲量が増加し、1952〜1955年の平均漁獲量は4万2千トンに達した(表1)。

アブラツノザメは多くの統計資料でさめ類に含めて扱われているため、その後の漁獲量については明確ではない。太平洋北区については、1971年以降は沖合底びき網漁業(以下沖底)漁獲成績報告書にアブラツノザメとして漁獲量が記載されている。それによると太平洋北区におけるアブラツノザメの漁獲量は1970年代前期には1,000トン前後であったが、その後は増減しながら次第に減少し、2003年は126トンと過去最低となった(図1)。2004年以降は増加しており、2007年は273トンであった。太平洋北区を小海区別にみると、漁獲量が多いのは襟裳西海区および尻屋崎海区で、いずれも大部分が青森県船によるものである。2003年以降、襟裳西海区は減少傾向にあったが2007年は162.5トンに増加した。金華山および常磐海区の漁獲量はは少ないながら増加傾向にあったが、2007年は減少したはなお、2003年以降の太平洋北区の沖底漁獲成績報告書には未定出分があり、これ以後本報告で示しされる太平洋北区の沖底に関する2003年以降の各種数値は、最新のものを月別県別の提出率により引伸ばした値である。日本海の沖底漁獲成績報告書ではサメ類として報告されているが、その大半はアブラツノザメである(南私信 2003年12月)。日本海における漁獲量も1970年代には1,000トン程度であったが、その後減少して2000年以降は60〜120トン程度である。

なお、2007年の漁獲量は襟裳西海区を含む太平洋北区が482トン、日本海も117トンと(図1)、ともに前年より増加した。

北海道所属の沖底船の漁獲成績報告書では、サメ・エイ類として報告されているため、アブラツノザメの漁獲量は明らかではないが、近年は10トン程度と推定される(八吹私信 2003年12月)。

2007年における沖底船による緯度経度10分升目の漁獲量分布図をみると、太平洋側、日本海側ともに東北地方北部が漁獲の中心になっており、中でも青森県の津軽海峡周辺の漁獲が多くなっている(図2)。

沖底以外では刺網、定置網、はえ縄・一本釣り等で漁獲されているが、はえ縄・一本釣りによるものが漁獲量の大きな部分を占めている。漁獲量については、一部未集計の地域等があるが、1999年以降の青森県による漁獲量が整備されつつある。これによると、1999年以降の沖底を除いた青森県のアブラツノザメ漁獲量は、1999年は540トン、2000〜2003年は400トン前後で沖底の漁獲量を上回ったが、2004年は250トン、2005年は190トンに減少した。2006年および2007年はそれぞれ、290トン、280トンであった(図3)。


生物学的特徴

【分布】

北太平洋の陸棚域全域、東西の北大西洋、地中海、オーストラリアの南岸、アフリカ大陸の南端および南アメリカ大陸の南部など、熱帯、亜熱帯地方を除くほぼ全域に広く分布する(阿部 1986、図4)。日本周辺は、北太平洋における本種の分布の西端に当たる。東北、北海道に多く、太平洋側では千葉県以北、日本海側では日本海の西部まで生息している(吉田 1991)。東北地方の太平洋側では水深150〜300 mに分布する。


【産卵・回遊】

本種は卵胎生で、妊娠期間は20〜22ヶ月と長く、2〜5月に全長30 cm程度の稚魚を産む(吉田 1991)。回遊についての詳細は不明であるが、北太平洋で実施されたサケの調査(流し網とはえ縄)において本種が混獲されているとともにカナダ太平洋岸で標識放流されたものが、東北地方で再捕された例が少なくとも12個体ある(稲田 1992)。1978〜1998年にカナダ太平洋岸で標識放流されたアブラツノザメ約71,000個体のうち、30個体が日本周辺海域で再捕されている(McFarlane and King 2003)。また、1985年7月にバンクーバー付近で標識放流されたアブラツノザメが、2003年9月に青森県下北半島沖で再捕された。詳細はあきらかではないが、このほかにも数例以上の再捕報告があるようである。以上のことから、本種は北太平洋を広範囲に移動していると推定される。しかし、日本周辺から標識放流した個体の北米西岸での再捕記録は現在のところ得られておらず、日本周辺と北米を往来しているのか、北太平洋で1つの系群なのか東西で異なるのかなどは明らかではない。


【成長・成熟】

カナダのブリティッシュコロンビアでは生後30年で雄は全長90 cm、雌は1 mに達し、雌は60歳以上になる。成熟年齢は、雌では生後23年(全長約90 cm)、雄では生後14年(全長約70 cm)である(Ketchen 1975)。北日本の沿岸域でも産卵すると推定されるが、産卵場は特定されていない(図5、表2)。

【食餌・捕食者】

主に魚類および頭足類を補食する。本種の捕食者は不明である。


資源状態

【資源の動向】

アブラツノザメの資源の動向を、太平洋北区および日本海における沖底のCPUEの動向によって判断した。なお、ここで示す資源状況は分布の西端である我が国沿岸域のものであり、北太平洋全体を代表するものではない。

太平洋北区の沖底網漁業では3つの漁法による操業が行われている。青森県ではかけまわし、岩手県では2そうびきとかけまわし、宮城、福島、茨城、千葉の各県ではオッタートロールである。また、日本海では、島根県で2そうびき、その他の県ではかけまわしにより操業が行われている。

太平洋北区ではいずれの海区・漁法においても近年は大きく低下し、1970年代および1980年代前半の1〜2割程度の低い値となっている(図6)。2そうびきでは2007年の襟裳西海区のCPUEは78.4 kg/網と大きく増加し、岩手海区でも9.9 kg/網と2006年より若干増加した。かけまわしでは2004年、2005年では減少していた尻屋崎海区が22.3 kg/網、岩手海区のでも5.9 kg/網と増加した。金華山以南のオッタートロールでは、常磐海区で10.7kg/網と2006年より減少したが、金華山海区では20.0kg/網、房総海区で6.9kg/網と、2005年、2006年と2年連続で増加した。

日本海では、かけまわしによるCPUEは1970年代の30〜50 kg/網から大きく減少し、1980年代には10 kg/網程度となった。1990年以降は4.7〜15.7 kg/網で変動しながらほぼ横ばい傾向である。2007年は、2006年に引き続いて増加して16.7kg/網であった(図6)。

漁獲量およびCPUEの動向から、日本周辺におけるアブラツノザメ資源は低い水準にあるといえる。


【漁獲圧の動向】

太平洋北区におけるアブラツノザメに対する漁獲圧を沖底によるアブラツノザメの有漁網数としてその動向をみると、襟裳西海区および尻屋崎海区のかけまわしでは1990年以降はほぼ横ばいの状態で推移している。2007年はそれぞれ2,074回および5,671回で、前年よりも減少した(図7)。

岩手海区のかけまわしの網数は大きく減少しているが、これはかけまわしから2そうびきへの転換が進んだためである。

岩手海区の2そうびきでの網数は、かけまわしからの転換もあり1980年代は増加し、その後1990年代前半までは3,000回以上の高い水準であった。1998年以降は急激に減少した後、2002年以降は1,000〜1,400回で推移してたが、2007年は1,963回と増加した(図7)。

金華山のオッタートロールでは年による変動は大きい。1990年〜2000年は網数が増加し、金華山海区では9,000回、常磐海区では4,000回を超えたが、その後は両海区ともに減少傾向にある。2007年はそれぞれ4,556回、1,900回であった。

日本海(かけまわし)における網数(有効努力量)は1980年代後半の40,000回台から大きく減少し、2003年、2004年と10,000回を下回ったが2005年以降は11,000回台で、推移している(図7)。

以上のことから、日本海におけるアブラツノザメへの漁獲努力量は減少しているが、太平洋北区での漁獲努力量は、1990年以降の全体傾向としては横ばいと判断される。


【資源水準・動向】

アブラツノザメの漁獲量は1952年には約6万トンに達したが、その後大きく減少し、1993年以降は太平洋北区および日本海を合わせても1,000トン以下となった。また、1970年代以降、沖底の漁獲量は減少し、漁獲量の多かった襟裳西海区、尻屋崎海区および日本海におけるCPUEも減少した。

以上のことから、アブラツノザメの資源水準は低位で、減少傾向であると判断される。なお、1990年以降については、太平洋北区の沖底の漁獲は、スルメイカへの依存度が高まり、他の魚種の漁獲がスルメイカの漁況に影響を受けていると考えられる(伊藤ほか 2006)。このため、最近年の漁獲動向は資源状態を反映していない可能性が高い。また1950年代と近年を比べると、資源水準には大きな差があると推測されるが、1950年代まではかなり積極的に本種を漁獲していたと考えられるため、漁獲量の差が資源水準の差を単純に反映しているとは考えられない。

管理方策

本種の寿命が極めて長いこと、および成熟に達するのに雌で23年、雄で14年を要することを考えると、1950年代の資源水準への回復は極めて困難であると思われる。しかし、これ以上の資源の減少を防ぐためには、努力量を現状よりも増加させないことが望まれる。

2007年のワシントン条約第14回締約国会議において、ドイツから附属書Uへの掲示が提案されたが、北大西洋系群は確かに減少しているものの、北太平洋などそれ以外の系群については安定した状況にあることから提案は採択されなかった。


アブラツノザメ(日本周辺)資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
468〜830トン※
平均:629トン
管理目標 検討中
目標値 検討中
資源の現状 検討中
管理措置
資源管理・評価機関 なし
※漁獲量は沖底(太平洋北区、日本海、北海道)と沖底以外による青森県の漁獲量の合計

執筆者

まぐろ・かつおグループ
混獲生物サブグループ
東北区水産研究所 八戸支所

伊藤 正木

参考文献

  1. 阿部宗明 (編・監修). 1986. 決定版生物大図鑑 魚類. 世界文化社, 東京. 431 pp.
  2. 伊藤正木・服部 努・成松庸二. 2006. 東北海区における沖合底びき網漁業と主要底魚類の動向(2004年). 東北底魚研究26:113-141.
  3. 稲田伊史. 1992. カナダ太平洋のアブラツノザメ (総述). In 東北区水産研究所(編), 第12回東北海区底魚研究チーム会議報告. 東北区水産研究所, 塩釜. 40-43 pp.
  4. 菅野嘉彦. 1954. あぶらつのざめの生態について. 対馬暖流開発調査 第1 回シンポジウム発表論文. 209-211 pp.
  5. Ketchen, K.S. 1975. Age and growth of dogfish Squalus acanthias in British Columbia waters. J. Fish. Res. Board Can., 32: 43-59.
  6. Mcfarlane, G. A. and J. R. King 2003. Migration patterns of spiny dogfish (Squlus acanthias) in tne North Pacific ocean. Fish Bull. 101:358-367.
  7. 日本海区水産研究所(編). 1969〜2006. 日本海区沖合底びき網漁業漁場別漁獲統計資料. 日本海区水産研究所, 新潟.
  8. 大内 明. 1956. 重要魚族の漁業生物学的研究 アブラツノザメ. 日本海区水産研究所報告, 4: 141-158.
  9. 田名部正春・福原 章・菅野嘉彦・鵜川正雄・遊佐多津雄・小島伊織・長峰良典. 1958. 対馬暖流開発調査報告書. 第4号. 水産庁, 東京. 84 pp.
  10. 東北区水産研究所八戸支所 (編). 1971〜2006. 太平洋北区沖合底びき網漁業漁場別漁獲統計資料. 東北区水産研究所, 塩釜.
  11. 吉田英雄. 1991. アブラツノザメ. In 長澤和也・鳥澤 雅 (編), 北のさかなたち. 北日本海洋センター, 札幌. 6-7 pp.