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28 クロカジキ 大西洋

Blue Marlin

Makaira nigricans

                                                            PIC
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図1. 国別漁獲量 2007年は暫定値


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表1. 近年の国別漁獲量(t) (2007年は暫定値)


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図2. 漁法別の漁獲量 (データ: ICCAT 2006b)2006年は暫定値


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図3. クロカジキ(大西洋)の分布


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図4. 1956〜2000年の四半期別の平均漁獲重量分布(ICCAT 2004a)。 赤丸:はえ縄漁業の漁獲量、黄緑丸:はえ縄以外の漁業の漁獲量。 この図は、本種の季節別分布状況を良く表している。


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図5. 漁業別資源量指数(ICCAT 2006a、改変)


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図6. 複合資源量指数 (ICCAT 2006b)。 日本、台湾、ブラジル、米国のはえ縄データを合体させ標準化して推定した資源量指数。 3つのラインは、異なる手法によって標準化した結果を示している。


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図7. プロダクションモデル解析結果 (ICCAT 2006a、改変)。 2001年に行われた資源評価会合で推定された各種パラメータ推定値を変えずに、資源量指数と漁獲量だけを アップデートしてある。今回の解析でアップデートした部分を赤(太)で、2001年の会合で推定した部分を 青(細)で示してある。実線は点推定値、点線は信頼限界を示す。


最近一年間の動き

本資源の豊度が低水準にあり、多くの場合、混獲として漁獲されていることから、 生きて漁獲された個体を放流する漁船が増えている。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキやソテーとされる。


漁業の概要

本種を主対象で漁獲している漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸零細漁業であるが、漁獲量の大部分は台湾、日本、ブラジル等まぐろ類やメカジキを対象としたはえ縄漁業の混獲によるものである(図1)。本資源の漁獲量は近年減少を続けており、2004年は2,161トンであっが、2005年の漁獲量は3,476トンと増加した。2006年の漁獲量は2,142トンと再び減少している。歴史的には、本資源は半分以上がはえ縄漁業によって漁獲されており、近年他の漁業が漁獲を伸ばしているが、これは報告率が上昇している事によるのかもしれない。特に近年では、カリブ海東部に於ける固定式FADsを使用した零細漁業や、ブラジルに於ける小規模零細はえ縄漁業で本資源を漁獲する新たな漁業が起こっている。これらは、個々の船の規模は小さいが数が多いために、まとまった量で本資源を漁獲している。日本の漁獲量は、2000年までは800トン以上あったが、2001年以降300〜500トンに減少している。(図1、表1)。

本種の総漁獲量は1960年代に入ってから急激に増加して、1963年には最高の9,000トン以上を記録している。その後1967〜1977年の間に2,000〜3,000トンにまで減少し、1997年までは緩やかに増加、その後1998年以降は再び減少傾向にある。本種の総漁獲量のトレンドは、おおよそはえ縄漁業の漁獲量のトレンドと一致していたが、近年はそれ以外の漁業による漁獲が無視できない量となっている(図2)。図2に示されたその他の表層漁業のカテゴリーは、特に近年は、規制の対象になっていない零細漁業による漁獲が多くを占めるようになった。これらには、漁獲統計が整備されていないものも多く、過去に遡って統計の整備が必要な漁業も存在している。


生物学的特徴

本資源の分布域は大西洋の熱帯域を中心に温帯域まで広がる。大西洋の西側ではカナダ沖〜アルゼンチン沖、東側ではアゾレス諸島〜南アフリカ沖まで漁獲されている(図3、4)。本種は、平均重量が100〜175sに達する大型の海洋生態系における上位捕食者である。分布域は広大で、大西洋の東西を横断したり、南北を縦断したりするような回遊を行う個体も存在する。一方その分布形態は、群泳するサバ科魚類などとは異なり、個々の個体は薄く広く存在している。 本種は2〜4歳で成熟し、熱帯及び亜熱帯水域で夏から秋にかけて産卵する一方、夏には水温の低い温帯域にも出現する。若齢個体の成長は硬骨魚類の中でも最も早いものの一つであると考えられており、1歳で30〜45sに達する。雌は雄よりも成長が早く、また最大体長も大きい。本種の詳しい成長や産卵生態に関しては、充分な情報はまだ得られていない。

本種は様々な魚類及び頭足類を捕食するが、サバの仲間を好んで食べることが知られている。主に外洋の表層域に分布しているが、表層混合層以深に潜水することも知られている。こうした理由から、本種は熱帯〜温帯の外洋域で浅縄を用いてまぐろ類を狙うはえ縄漁業によって最も多く漁獲されている。しかし一方で、外洋域で夜縄を用いてメカジキを漁獲したり、深縄を用いてメバチを漁獲するはえ縄漁業によってもまとまった量が漁獲されている。

最近のDNA標本の解析結果では、大西洋の東西、南北を問わず標本採集地点間での遺伝子頻度に差が認められなかった。標識放流調査からは、大西洋で放流個体がインド洋で再捕された例、北大西洋で放流した個体が南大西洋で再捕された例、西大西洋で放流した個体が東大西洋で再捕された例が報告されている。

1996年以前本種は北緯5度を境界線として南北の2系群に分けて管理していたが、上記のような研究結果に基づいて、単一資源として管理されるようになった。


資源状態

資源評価は2006年5月にICCATによって行われた。今回の資源評価では、新たな漁業の資源量指数の報告や、従来の資源量指数に関する新たな知見が得られた。しかしながら、近年の漁獲が、大規模商業漁業によるものから沿岸国による小規模零細漁業によるものへとシフトする傾向が明確化したため、個々の規模は小さいが隻数が多いためにまとまった量の漁獲をしている零細漁業のデータから資源量指数を推定することが、今後の資源評価では必須となるであろう。今回の資源評価には、こうした零細漁業の資源量指数は得られなかった。

2004年に行われた中間会合で、1960年代前後に認められた日本のはえ縄漁業の漁獲量及びCPUEの突然の減少が資源状態の変化を十分に表していない可能性が指摘され、且つ、その問題の解決には数年以上の時間がかかる事が予測されたことから、今回の資源評価は近年の資源量指数のトレンドを評価することで最近導入された規制の効果を判定することを主たる目的とした。

1990〜2005年について、7つの漁業から資源量指数が得られ、そのうち3つが2001年以降減少しており、4つはフラットなトレンドを示していた(図5)。また、これら7つは、どれも本資源の分布域全体をカバーしていないので、これらのうち日本、台湾、ブラジル、米国のはえ縄漁業という主たる4つの漁業データを一つにまとめて標準化することで、複合資源量指数の推定を行った(期間は1990〜2004年)。この資源量指数は、本資源の資源豊度について、解析を行った期間全体を見れば減少しているが、最近年(2001〜2004年)を見ると減少傾向が緩やかになったか、あるいは止まった事を示している(図6)。

近年の資源量のトレンドを確認するために、2000年に行われたプロダクションモデル解析で推定した各種パラメータと、2006年の資源評価会合で得られた近年の資源量指数及び漁獲統計を用いて、プロダクションモデル解析を行った。それによると、最近の資源量水準はBMSYよりもかなり低いと考えられるが(図7)、5月の資源評価会合で試験的に行われたプロダクションモデル解析では、近年のFは、2000年に推定されたFMSYよりは大きいものの減少傾向にある事が示唆された。しかし、個々の漁業の資源量指数と複合資源量指数では、近年のトレンドの傾向に多少差が見られており、前回の資源評価から4年しか経っていないため、漁業規制の効果を判定するには、少なくとももう4〜5年間のデータが必要であると思われる。

2001年に行われた資源評価会合で推定された各種パラメータ推定値を変えずに、資源量指数と漁獲量だけをアップデートしてある。今回の解析でアップデートした部分を赤で、2001年の会合で推定した部分を青で示してある。実線は点推定値、点線は信頼限界を示す。

なお、5月の資源評価会合に提出された日本のはえ縄のCPUEは、2001年に導入された"生きて漁獲された個体を全て放流する"という規制によって生じた生存放流された個体に関する情報が非常に少なかった(放流魚に関する情報は全操業の数%以下しか得られていない)ために、漁獲成績報告書にある死亡取り込み個体の情報だけを使って標準化されている。この結果は、当然2001年以降の資源水準を過少評価することになるので、今後早急に改善することが望まれる。


管理方策

現在導入されている大規模商業漁業を対象とした漁業規制によって、本資源はBMSYレベルまで回復できる可能性はあるが、最近の(アフリカ沿岸、ブラジル、カリブ海諸国等の)零細漁業による漁獲量の増加は(その半数以上が、5月の資源評価会議より後に詳細が明らかになったために影響の詳細は判らないが)、現行のICCATによる資源回復計画を無効にしてしまう可能性がある。本年の資源評価では、2004年時に報告された漁獲量水準(複数の零細漁業による漁獲が含まれていない漁獲量)の下では、本資源の回復速度は2000年の資源評価時の推定よりも速くなると予想されており、実際5月の資源評価会合に提出された複数の資源量指数が、最近年の資源量指数が水平になっていたことからも、その事は支持される。しかし、こうした傾向をしっかりととらえるには、少なくとも後4〜5年のデータが必要とされるであろう。

以上のことを勘案して、現時点では資源管理方策として以下のような事柄が勧告されている;

  1. 資源はまだ回復していないので、最低でも、現行の漁業規制は継続されるべきである。
  2. 将来の資源の回復の可能性についてより確かな情報を得るためには、生存放流された個体の生残率に関する情報及び死亡投棄個体と生存放流個体に関するデータを、科学オブザーバー等によって改善すべきである。また、幾つかの零細漁業の過去及び現在の漁獲についての情報についても確かめる必要がある。
  3. 資源の回復をより確かなものにしたいのであれば、1)現行の規制の徹底方法の改善、2)有効であると判っている漁業については、サークルフックの使用の徹底、3)広範な禁漁区及び禁漁期の設定等によって死亡率を下げる必要があろう。
  4. 近年の、零細漁業による漁獲の重要性を鑑みて、資源回復の可能性をより確かなものにするには、これらの漁業による漁獲死亡をコントロール或いは減少させることを考えるべきである。
  5. MSY等の指標を直接推定するため、すなわち、今回の資源評価では行うことが出来なかった歴史的な資源量指数の推定のために、本資源のハビタット特性に関する研究を強力に推し進めるべきである。

クロメカジキ(大西洋)資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
2,100〜3,500トン
平均:2,850トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
440〜900トン
平均:570トン
管理目標 MSY
目標値 約2,000トン
資源の現状 * B2004 < BMSY
F2004 > FMSY
現行の規制でMSY水準まで回復する可能性は有るが、不明な点を十分吟味する必要がある。
管理措置 はえ縄漁業とまき網漁業は、1996年か1999年の漁獲量の多い方の 50%以下に抑える(2010年まで)**
生きて漁獲された個体は全て放流する。
資源管理・評価機関 ICCAT
*: ICCATによる資源解析結果は、不確実性が高いが、括弧内に示したブートストラップ法で推定した 80%信頼限界は、この不確実性を定量化したものではない。実際の信頼限界は、括弧内に示された 数字よりも大きくなると考えられる。
**: この規制は各漁業に課せられており、はえ縄漁業全体の割当量は1,727トンとなる。 なお、仮に本規制を日本のはえ縄漁業だけに当てはめると、日本の割当量は840トンとなる。

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 数理解析研究室

余川 浩太郎


参考文献

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