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25 マカジキ 北太平洋

Striped Marlin

Tetrapturus audax

                                                                        PIC
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最近一年間の動き

2007年にISCが行った資源評価の結果、本資源の水準は低位にあると考えられたため 、本年度から本資源の資源回復方策の検討が開始された。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。


図1

図1. 北太平洋(赤道以北)の我が国の漁業種別漁獲量


表1

表1. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)


図2

図2. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)


図3

図3. 太平洋におけるマカジキの分布域(桃色)と主要漁獲域(青色) マカジキを主対象とした漁業は、現在ごく小規模な沿岸漁業に限られているので、はえ縄漁業によって主に漁獲される水域を青色で示した。


図4

図4. 図4.はえ縄のCPUEから推定した資源量指数 (Piner et. al., 2007)。黒実線;日本の遠洋近海はえ縄(北太平洋中西部)、黒点線;日本の遠洋近海はえ縄(東部太平洋)、桃色;日本の沿岸はえ縄、水色;ハワイのはえ縄。


図5

図5. 統合モデル(Stock Synthesis 2)で推定した産卵親魚尾数の年変化(Piner et. al., 2007)。紺色は親子関係をある程度認めた場合(steepness = 0.7)、桃色は親子関係を認めなかった場合を示す。


図6

図6. 統合モデル(Stock Synthesis 2)が推定した北太平洋マカジキの産卵親魚群(5才以上)に対する漁獲死亡係数(上)及び加入量(右)の年変動 (Piner et. al., 2007)。紺色は親子関係をある程度認めた場合(steepness = 0.7)、桃色は親子関係を認めなかった場合を示す。加入量に関しては、1964年以前はサイズデータが無かった為に、一定と仮定して解析を行っている。


漁業の概要

北太平洋(赤道以北)における我が国のマカジキの漁獲量は、1970年代には1万トンを超えていたが、その後減少を続け、近年は3千〜4千トンに留まっている(図1)。漁獲の多くははえ縄漁業によるが、一部は突きん棒漁業や流し網漁業、あるいはひき縄漁業でも漁獲される。我が国のマカジキの漁獲のほとんどはまぐろ類を対象とした操業の混獲物だが、常磐沖、南西諸島などでは季節的に小規模な本種が主対象の操業が、はえ縄、突きん棒、流し網等の漁具で行なわれている。沿岸漁業の漁獲量に関しては農林水産省統計部が発行している漁業・養殖業生産統計年報に依存しているため、これらの漁業の漁獲量は2004年分までしか得られていない。

ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量を図2、表1に示した。北太平洋におけるマカジキの漁獲量は1960年代前半までは1万トン以下であったが、その後急激に上昇し1万5千トン以上に達した。漁獲量は、1970年団中旬以降減少を続け、2001年以降は5000トン以下にまで落ち込んでいる。しかしながら、ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量には、中国や幾つかの中米諸国等の漁獲の情報が含まれていないので、今後更に整備を進める必要がある。


生物学的特徴

太平洋に分布するマカジキは、大西洋のニシマカジキ(White Marlin, Tetrapturus albidus)とは別種である。太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄漁業におけるCPUEの分布から、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている(図3)。

太平洋のマカジキには外部形態の比較から南北太平洋の2系群があるといわれていたが、近年のDNA解析から東部太平洋に独立した系群が存在する可能性も報告されており、現在DNA解析を中心とした研究が進められている。一部の成果は、メキシコ沿岸のマカジキが、遺伝学的に他の北太平洋域の個体と遺伝的に異なる事を示唆しているが、解析した個体数が少ないので更に研究を進める必要がある。

活動水深帯は40 m以浅の躍層上部の混合層で、夜半から朝にかけては活動が極端に低下する。 体長(眼後叉長)組成の解析から1歳で64 cm、3歳で150 cm、5歳で200 cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されているが、正確な成長及び成熟年齢に関する情報は得られていない。160 cm前後(3〜4歳)で約50%の個体が成熟するものと考えられている。産卵場は、稚魚の採集地点の分布状況から北緯20°前後の海域であろうと推定されている。東部太平洋での卵稚仔の採集報告はないが、卵巣の成熟状態から一部の個体は産卵している可能性がある。産卵月は4〜6月である。


資源状態

資源解析には、日本の遠洋近海はえ縄、日本の沿岸はえ縄、日本の流し網(1992年以前)及びハワイのはえ縄のCPUEから推定した資源量指数が用いられた(図4)。

日本の遠洋近海はえ縄の資源量指数は、中西部太平洋と東部太平洋共に1970年代初頭に急激な減少をしている。これは、東部太平洋及びその隣接水域で1960年代を中心にマカジキを主対象としたはえ縄漁業が存在し、それが1970年代初頭にメバチ・キハダを対象とした操業に切り替わった効果を十分に標準化出来なかった影響があり、実際の資源量の減少を過大評価している可能性が有る。

これに対して、1990年代中旬から2000年代に見られる資源量指数の減少は、日本の遠洋近海はえ縄、沿岸はえ縄及びハワイのはえ縄の3つの資源量指数で共通に認められる現象であり、この時期に資源量が大きく減少した事を示しているものと考えられる。しかしながら、1990年代以降、1960〜1970年代にマカジキの主対象操業が行われていた東部太平洋域でのはえ縄の努力量及びマカジキの漁獲量は大きく減少しており、また、限られた数の漁船及び調査船から得られた情報によるは、東部太平洋の資源量指数は1990年代以降は1960年代同様の高い水準を維持していることを示唆している。この事は、資源量の減少は北太平洋中西部で起こっていた事を示唆している。

上記のような背景を持った資源量指数を使用して、資源解析を行った。資源解析には、@親子関係をある程度認める(steepness = 0.7)場合とA加入群の量は環境要因によって決められ、親子関係が無い場合の2つの過程で行った。いずれの場合も、北太平洋マカジキ資源豊度は1970年代初頭に一度回復したものの、全般として1950年代から大きく減少していたことを示している(図5)。

この資源豊度の減少は、漁獲死亡係数の一貫した増加及び加入量の減少によって引き起こされたと推定された(図6)。2005年の産卵親魚量(尾数)は、1980年代に資源量指数が減少を始める直前(1980年)と比べても半分以下に落ち込んでいる。従って、SS2による資源解析結果自体は北太平洋マカジキ資源が、近年低水準にあることを示していると考えられる。


管理方策

ISCでは、資源評価結果の信頼性が低く、また、管理基準が明確になっていないといった問題が有ることを認めつつも、資源状態が悪化している事は事実なので、本資源の漁獲死亡率を近年のレベル(2003年或いはそれ以前の水準)よりも減少させるべきであると勧告した。

本資源は、主に混獲として漁獲されていることから、今後、混獲回避手法の開発等の具体的な管理方策について検討される予定である。


マカジキ(北太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
3,700〜4,600トン
平均:4,100トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
350〜3,100トン
平均:3,100トン
管理目標 検討中
資源の現状 資源評価結果の信頼性が低いものの、近年の資源水準が低位であると考えられる
管理措置 検討中
資源管理・評価機関 WCPFC, ISC

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 数理解析研究室

余川 浩太郎


参考文献

  1. Barut, N. 2003. National tuna report Philippines. SCTB/NFR-22. 8 pp.
  2. 魚崎浩司. 1995. 太平洋のマカジキ資源. 月刊海洋, 27(2): 96-100.
  3. 農林省統計情報部. 1973. 昭和51年 漁業・養殖業生産統計年報. 農林統計協会, 東京. (4) +317 pp.
  4. 農林水産省統計情報部. 1974-2003. 昭和52年−平成13年 漁業・養殖業生産統計年報. 農林統計協会, 東京.
  5. 農林水産省統計部. 2004. 平成14年 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額). 農林統計協会, 東京. (8) +364 + (10) pp.
  6. 農林水産省統計部. 2005. 平成15年 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額). 農林水産省大臣官房統計部, 東京. (8) +272 + (10) pp.
  7. 農林水産省統計部. 2006. 平成16年 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額). 農林水産省大臣官房統計部, 東京. 335 + (9) pp.
  8. Williams, P.G. 2003. Estimates of annual catches for billfish species taken in commercial fisheries of the western and central Pacific Ocean. SCTB/SWG-3. 21 pp.
  9. Yokawa, K. 2004. Standardization of CPUE of striped marlin caught by Japanese offshore and distant water longliners in the north west and central Pacific. ISC/04/MARLIN-WG/02. 13 pp.
  10. Piner, K., R. Conser, G. DiNardo and J. Brodziak 2007. SS2 Sensitivity Runs for Striped Marlin Assessment WG 2007. ISC/07/MARWG & SWOWG-1/02.