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20 ミナミマグロ

Southern Bluefin Tuna

Thunnus maccoyii

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最近一年間の動き

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の科学委員会(2008年9月)は資源状況に顕著な変化は見られないと報告し、年次会合(2008年10月)では前年と同じTACに合意した。


利用・用途

ほぼ全てが日本での刺身や寿司用途に用いられている。


図1

図1. ミナミマグロの国別漁獲量の推移 (Data: Anon. 2008a)


表1

表1. ミナミマグロの年齢別の体長と体重の関係


図2

図2. ミナミマグロの漁獲量の推移 (Data: Anon. 2008a)


図3

図3. ミナミマグロの分布(赤)、漁場(青)、産卵場(黄)


図4

図4. ミナミマグロの緯経度5度区画別の漁獲尾数 (2006年暫定値。20尾以上の区画のみを示す。1-15はCCSBT統計海区。主に1海区での、 インドネシアによる漁獲を含んでいない点に留意。)


図5

図5. CCSBTで用いているミナミマグロの成長曲線


図6

図6. ミナミマグロの年齢別Nominal CPUE(1969-2007年。日本はえ縄船の CCSBT統計海区4-9、4-9月のもの。最近1-2年は暫定値。)


漁業の概要

主な漁業国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、インドネシアであり、フィリピン、南アフリカ、EUからも漁獲が報告されている(図1)。漁法ははえ縄とまき網であり、まき網はオーストラリアのみが実施している(図2)。

ミナミマグロ漁業の歴史はオーストラリアがその沿岸で小規模にのみ漁獲していた状態から始まり、日本船が1950年代初期に産卵場でのはえ縄操業を開始し、本格的な漁獲が始まった。日本漁船は1961年に最高の77,900トンを漁獲したものの、その後は肉質の良い魚を求めて索餌域である西風皮流域(南緯35〜45度の海域)へ漁場を移すとともに、産卵場、及び小型魚が多獲される海域での操業を1971年から自粛した。これらの影響もあり、日本のはえ縄漁業による漁獲は1961年以降漸減し、1985年には約20,000トンにまで減少した。一方、オーストラリアの主に竿釣による漁獲量は次第に増加し、1982年には21,500トンに達した後、自主規制及び産業の衰退によって激減した。1989年からは日本、オーストラリア、ニュージーランドの間でそれまでの漁獲実績を下回る漁獲枠(日本6,065トン、オーストラリア5,265トン、ニュージーランド420トン)を設定し、その後は近年まで一定の漁獲枠を維持してきた。1980年代半ばから韓国、台湾、インドネシアによるはえ縄の漁獲も始まり、1999年には合計5,000トンを上回ったがその後は2,000〜3,000トンとなっている。2007年からは、資源回復のために漁獲枠を合計11,810トンに減少させた(日本は3000トン)。最近5年間の各国が報告した漁獲量の合計は約11,000トンから約16,000トン、日本は約2,800トンから約7,900トンで推移している。

オーストラリアは1990年代半ばより畜養漁業を発達させた。まき網で漁獲した種苗を約3〜6ヶ月間畜養した後、ほぼ全量の年間6,000〜10,000トン程度を日本へ輸出している。

日本は2005年まで、漁場ごとに漁獲開始日と上限漁獲枠を設定して漁獲状況に応じて漁獲終了日を決定して、自国はえ縄船の操業を管理してきたが、2006年からは漁獲枠の個別割り当て制を導入し、また漁獲したミナミマグロ全個体に識別標識を装着する制度を導入して漁獲の管理を強化した。


生物学的特徴

産卵場はインド洋東部の低緯度域(東経100〜125度、南緯10〜20度)で、産卵期は9月から翌年3月までの約半年間に及ぶ(Farley and Davis 1998)。一回の産卵数は体重1 kg当り5.7万粒で、産卵雌個体はほぼ連日産卵すると考えられる。幼魚はオーストラリア西岸沖を南下したのち、オーストラリア南岸沖を東へ移動すると想定され、成長に伴い次第に南緯35〜45度の西風皮流域全体に広く分布、回遊するようになる(図3)。主な漁場は、はえ縄では南アフリカ沖、インド洋南東海域、タスマニア島周辺海域およびニュージーランド周辺海域、まき網ではオーストラリア大湾である(図4)。

成熟尾叉長は約150 cm、年齢8歳と考えられているが、産卵場で操業するインドネシアの漁獲物の年齢組成がより高齢であることから、成熟年齢はもっと高いとの指摘もある。最大報告尾叉長は210 cm、寿命は少なくとも20年以上、耳石の解析から得られた最高齢は45歳である。

成長は耳石の年齢査定結果と標識放流結果を総合して求められている。1970年代以前と1980年代以降で初期成長が変化したと考えられている。CCSBTの科学委員会では、1970年級以前にはvon Bertalanffy成長式を、1980年級以降にはvon Bertalanffy成長式とRichardの成長式の平均値を、その間の年級は直線補完して用いている。体長−体重関係はいくつか求められているが、日本のはえ縄漁獲物に対してCCSBT科学委員会での資源シミュレーションでは以下の式を用いている。下記は内臓等を除かない重量であり、セミドレス重量は1.15で除して求めている。

            130 cm未満の魚 体重=0.0000313088体長^2.9058
            130 cm以上の魚 体重=1.15×0.000002942体長^3.3438            

年齢別の体長、体重を、図5、表1に示す。

はえ縄漁獲物の胃内容物分析から、外洋域に分布する尾叉長約90 cm以上の魚は、主に頭足類と魚類を捕食していることが分かってきている。本種の捕食者は、他のまぐろ類と同様、かじき・まぐろ類、さめ類、海獣類などであると考えられている。


資源状態

本種の資源評価は1994年に発効したCCSBTの科学委員会の下で行われている。チューニングVPAなどの資源評価モデルを用いた詳細な検討はおよそ3年に一度(前回は2004年)実施され、他の年は漁業指標及び科学調査結果から資源の現況を判断している。2008年には、これらの指標(日本はえ縄のCPUE、ニュージーランドのチャーターはえ縄のCPUE、標識放流データ、曳縄加入量調査、音響調査、科学航空機目視調査、商業航空機目視調査、インドネシア漁獲量、他)ならびに管理方式用に開発途中のオペレーティングモデルの結果から、次のように資源の現況を判断した(CCSBT 2008a)。

すなわち、親魚資源量は初期資源量よりはるかに少なく、CCSBTの管理目標である1980年の水準、もしくはMSYを与える水準と比較してもかなり低い。1990年以降の加入量は1950-1980年の水準よりもかなり低く、特に1999-2002年級の加入はかなり低い。2004年級、2005年級は1990年代の平均値並みに高いことがいくつかの加入量指標で示された。親魚資源に回復の兆しは見られていない。漁獲データの不確実性の問題はあるが、現状の漁獲レベルならびに将来の加入が平均的なレベルとの条件での試算において、低水準の1999-2002年級が親魚資源になることで今後も産卵資源量は減少し、回復開始は2014年以降と予想されている。


管理方策

本種の資源管理はCCSBTの下で行われている。2006年の年次会合では、科学委員会から2006年時点のTAC(14,925トン)の漁獲レベルでは資源をさらに減少させる可能性が高く、資源回復のためには漁獲量を直ちに現状以下にする必要があると勧告されたことを受け、2007年漁期の合計11,810トンのTACが合意された(CCSBT 2006)。内訳は、加盟国については日本3,000トン、オーストラリア5,265トン、ニュージーランド420トン、韓国1,140トン、台湾1,140トンである。協力的非加盟国についてはフィリピン45トン、南アフリカ40トン、EU10トン、オブザーバー国についてはインドネシア750トンである。ただし韓国、台湾は自主的に1,000トンを上限とすることとしたため、合計漁獲量は11,530トン以下となる。資源に例外的な状況が生じない限り日本は5年間、他国は3年間に渡ってこのTACを維持することとなった。2008年も資源の現況に大きな変化はないと判断されたことからこのTACを維持することで合意に達した(CCSBT 2008a)。

第15回委員会においては、ミナミマグロ漁業の監視取締措置として、漁獲から水揚げ、貿易を書類及びタグを用いてモニターする漁獲証明制度、人工衛星を用いて漁船の位置をモニターする漁船位置監視システムが採択された(CCSBT 2008b)。

なお、2005年に決定した管理方式(総TACを漁獲データなどの資源指標から自動的に計算するルール)は、インプットデータである漁獲量およびCPUEが不確実となったことから改めて開発することとなった。


ミナミマグロ資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
11,000〜16,000トン
平均:13,200トン
我が国の漁獲量
(過去5年間)
2,840〜7,855トン
平均5,304トン
管理目標 見直し作業中
資源の現状 産卵親魚量は112,272〜166,312トン
2006年産卵親魚量は初期資源の10.1〜12.7 %
管理措置 TACの設定:11,810トン(日本3,000トン)、ただし韓国、 台湾の自主規制を考慮すると11,530トン
CCSBT登録漁船以外の漁獲物の輸入禁止
資源管理・評価機関 CCSBT

執筆者

まぐろ・かつおグループ
熱帯性まぐろ類サブグループ
遠洋水産研究所 温帯性まぐろ資源部長

宮部 尚純

遠洋水産研究所 温帯性まぐろ研究室

伊藤 智幸・高橋 紀夫・黒田 啓行・境 磨

同 数理解析研究室

庄野 宏


参考文献

  1. Anon. (CCSBT) 2006. Report of the thirteenth annual meeting of the Commission, 10-13 October 2006 Miyazaki, Japan. CCSBT, Canberra, Australia. 137 pp. http://www.ccsbt.org/docs/pdf/meeting_reports/ccsbt_13/report_of_CCSBT13.pdf (2006年11月8日)
  2. Anon. (CCSBT) 2008a. Report of the thirteenth meeting of the Scientific Committee, 5-12 September 2008 Rotorua, New Zealand. CCSBT, Canberra, Australia. 76 pp. http://www.ccsbt.org/docs/meeting_r.html(2008年10月15日)
  3. Anon. (CCSBT) 2008b. Report of the fifteenth annual meeting of the Commission, 14-17 October 2008 Auckland, New Zealand. CCSBT, Canberra, Australia. 113 pp. (2008年10月15日)
  4. Farley, J.H., and Davis, T.L.O. 1998. Reproductive dynamics of southern bluefin tuna, Thunnus maccoyii. Fish. Bull., 96: 223-236.