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03 まぐろ・かつお類の漁業と資源調査(総説)


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図1

図1. 世界の主要まぐろ類(含カツオ)の国別漁獲量の推移(1950〜2006)


図2

図2. 世界の主要まぐろ類(含カツオ)の大洋別漁獲量の推移(1950〜2006)


図3

図3. 世界の主要まぐろ類(含カツオ)の魚種別漁獲量の推移(1950〜2006)


図4

図4. 世界の主要まぐろ類の漁法別漁獲量(1950〜2006)


図5

図5. 魚種別、全大洋における日本の漁獲量の推移(1950〜2006)


図6

図6. 日本の主要まぐろ類(含カツオ)大洋別漁獲量の推移(1950〜2006)


図7

図7. 燃油供給価格の経年変化。2004年以降を示す。


図8 表1

表1. 海外における刺身市場


図8. 日本に輸入されるまぐろ・かじき類の経年変化。製品重要で示す。


図9

図9. 世界のまぐろ類の漁獲量と缶詰加工量 (Ababouch and Camillo 2007、改変)


図

図10. 国別まぐろ類缶詰生産量の動向(Ababouch and Camillo 2007、改変)


図

図11. 蓄養によるクロマグロ及びミナミマグロの生産量の推定値(2008年)


世界のまぐろ漁業

世界の主要6魚種のまぐろ類(クロマグロ、ミナミマグロ、ビンナガ、メバチ、キハダ、カツオ)の2006年の総漁獲量〈データソースは文末参照〉はここ3年間420万トン程度でほぼ横ばいである。国別に見ると我が国の漁獲量は依然として世界第1位を占めているが、実質的には1960年代に入って以降、大きな増減はなく安定した漁獲を挙げてきたが (図1)、 1984年に約79万トンの過去最高に達した後減少し、2005年は約51万トンであった。図1には上位10カ国の漁獲量を示したが、1990年代前半にはほとんど漁獲のなかったPNGに象徴されるように、近年漁獲量を急増させる途上国(インドネシア、フィリピン、エクアドル、イラン、モルジブ)が増えている。この他にもパナマ、中国、タイ、セーシェル、バヌアツ等も同様な傾向にある。主要漁業国である先進国の漁獲量は、特に米国の減少が著しい。

主要6魚種の漁獲量を大洋別に見てみると、太平洋における漁獲量が1950年当初から他の水域をリードし、その後も直線的に増加したことがわかる(図2)。現在では総計300万トンに達している。大西洋での漁獲は比較的低く、最大で1994年の約58万トンであり、その後減少に転じた。インド洋の漁獲は他の大洋より少なかったが、1980年代の後半から急増して1992年には大西洋を追い越し、現在は約100万トンに達している。いづれにしても、太平洋における漁獲増が世界全体の漁獲増をもたらしていると見てよい。

漁獲量の推移を魚種別に見ると、温帯性のまぐろ類(クロマグロ、ミナミマグロ、ビンナガ)は漁獲量が低迷する一方で、熱帯性のまぐろ類、特にカツオとキハダの漁獲量増加が著しい(図3)。メバチとキハダも2003年頃までは増加を示したが、その後はやや減少ぎみである。カツオの年代毎の平均漁獲量は1950年代20万トン、1970年代60万トン、1990年代160万トン、2002年以降の平均が220万トンと、過去約60年間で10倍以上に増加している。最近のカツオの漁獲量は、それ以外の世界の主要まぐろ類5種の総漁獲量に匹敵しており、カツオの漁獲量が如何に多いかが分かる。一方、キハダの漁獲量は1950年代15万トン、1970年代49万トン、1990年110万トン、2002年以降130万トンと、カツオには及ばないものの、約50年間で9倍の増加を示している。

まぐろ類は、はえ縄、竿釣り、まき網などで漁獲されるが、この漁獲量増加は、1980年以降のまき網漁業の漁獲量増加に起因し(図4)、それ以外の漁法による漁獲がそれぞれ50万トン前後であるのに比べて、2005年には270万トンに達している。この漁獲増には漁船数の増加に加えて、1990年に入ってこれまでより盛んに行われるようになった人工浮魚礁(FADs)を活用する操業方法が大きく影響している。


日本のまぐろ漁業

日本のまぐろ漁業はこれまで世界のまぐろ漁業の中心的存在であったが、前述のように主要6魚種の日本の漁獲量は1984年をピークに減少している。魚種別に漁獲量を見ると、日本のまぐろ漁業における漁獲量も、世界のまぐろの漁獲組成と同様、1970年以降カツオが主体を占めている (図5) 。大洋別にみると、太平洋での漁獲量(2006年約44万トン)がインド洋や大西洋の漁獲量(4.5万トン及び2.9万トン)より圧倒的に多く、近年では全体の85%(2004-2006年の平均値)を占めている。しかし、その太平洋での漁獲量も1984年をピークに減少傾向にある (図6) 。

日本のまぐろ漁業は、カツオが圧倒的に多いものの、生産金額はカツオの魚価が安いこともあって、メバチ、カツオ、キハダの順になっている。人気の高いクロマグロやミナミマグロは資源の減少による管理措置が適用されて漁獲量が減少したため、生産金額も低迷している。このような状況の中、まぐろはえ縄船の燃料であるA重油価格は2004年には4万円強に過ぎなかったが、年々徐々に高くなり2008年5月以降急騰し、1キロリットル当たり9万円を超え、7月には約12万円を記録した(図7)。このような状況を迎え、まぐろはえ縄船のみならず国内のほとんどの漁船が一時休漁を余儀なくされ、漁業者による抗議行動が行われたのは記憶に新しい。日かつ漁協所属のまぐろはえ縄船は2008年8月以降2年間で全船が2か月間休漁することを決定している。


市場・蓄養まぐろ

まぐろ類の三大市場は、日本の刺身・鰹節市場、北米、ヨーロッパの缶詰市場である。刺身用のまぐろは日本の高単価市場を目指して世界中から集まっている。日本への輸入量(かじき類を含む)は1980年には10万トン以下であったが、その後も2002年(44万トン)に至る迄直線的に増加した。その後やや減少し、2006年は34万トンであった。これらの輸入は多くのフィレを含むこと、また商品価値の高い部分のみが輸入されることから、元の魚体に換算すると20%以上は過小評価になっていると考えられる。従って、まぐろ市場への供給量は、自国の漁獲量50万トン強と輸入量の20%ましの40万トン強の、合わせて90万トンである。特に輸入量は最近まで着実に増加してきたが、ここにきてやや減少の気配が見られる (図8) 。このうち刺身としての消費はカツオを除いた量に匹敵するものと推察され、近年は62万トン(一人当たりの年間消費量は5.2 kg)であり、残りはほぼ缶詰や鰹節関連(調味料を含む)で消費される。

一方、健康食ブームや寿司人気の高まりにより、米国やヨーロッパでのまぐろの寿司や刺身の消費が米国やヨーロッパで急速に拡大しつつある。人口13億の中国でもまぐろ消費の啓蒙普及が始まり、市場の多様化、複雑化が進んでいる。OPRTの推定によれば、海外での生鮮まぐろ類の消費は着実に増加しており、米国、韓国を筆頭に合計で6万トン弱から9万トン強の潜在市場があるものと見積もられている(表1)。

また、缶詰の消費も増加傾向にあり、最も多く消費しているヨーロッパで約130万トン、次いで北米の60万トンである(図9)。まぐろ缶詰総生産155万トンのうち、第1位(25%)の生産がタイによって行われており、次いでスペイン、米国、日本は第7位にランクされている(図10)。このまぐろ缶詰総生産量は全まぐろ漁獲量の3分の2に相当する(原魚換算)。なお、まぐろ缶詰生産量第一位のタイは、自国周辺での小型まぐろ類の漁獲はあるものの10万トン程度であり、その6倍以上の80万トン弱を台湾、バヌアツ、日本、韓国等から輸入している。

一方、日本の消費者のトロ嗜好とともに、クロマグロ、ミナミマグロの蓄養が近年急増し、その量(出荷量)は2006年で約45, 000トンと見積もられるが (図11) 、クロマグロでは蓄養場への活け込み量や蓄養中の死亡報告や魚体サイズ等の科学データが提供されていないため、正確な蓄養量は不明である。これらの蓄養まぐろに関するデータ不足は、詳細な資源評価やTACによる資源管理を困難にしている。


資源評価

まぐろ類は広大な海の表中層に分布するため、他の魚種で用いられる調査船による試験漁獲等の方法のみによる資源全体の把握は困難であり、その資源評価は商業漁獲による漁獲データに大きく依存している。我が国のはえ縄漁業が提供する漁獲成績報告書資料は、漁場のカバー率が広く、諸外国に比べて精度が良く、長期間にわたって整備されているため、貴重な資料として様々な漁業委員会で使用されている。資源評価では資源量指数の動向が注目されるため、漁獲努力量に含まれる様々な要因の影響を除去する標準化という作業が重要となる。例えば、対象魚に応じて漁具の仕立てを変更することは通常よく行われ、水深が深いところに分布するメバチを狙う際は深縄(釣り鈎を深い水深に設置するはえ縄の仕立て)を用いるし、逆に夜間メカジキを狙う際には釣り鈎を非常に浅い水深に設置する浅縄操業を行う。この様な漁具の違いが漁獲に及ぼす影響をどう補正するかが資源解析をする上で重要な課題となっている。現在まで、このような情報を提供できるのは我が国しかなく、ほとんどのまぐろ類の資源評価に我が国のデータが用いられているのが現状である。


国際調査

まぐろ類は高度回遊性魚類であり、公海域のみならず日本及び外国の200海里経済水域内を移動する。そのため一国だけで資源を管理することは困難であり、各地域の漁業管理委員会による包括的な管理が必要とされる。日本は、これまで各地域の漁業管理委員会でリーダー的役割を果たしてきた。しかしながら、他の先進国の漁業や沿岸国である途上国の漁業の発達と我が国漁業の経済的な競争力の衰退とともに、前述のようなデータ面や資源管理面での我が国の貢献度が相対的に縮小しつつある。最近ではまぐろ類の調査研究のみならず、混獲状況の把握やその削減、生態系保存を目的としたオブザーバー調査のカバレッジ向上や混獲削減のための調査研究の実施が急務とされている。


資源管理

各国の200海里内経済水域内におけるまぐろ類の資源管理に関しては国連海洋法条約に基づき所管国に責任があるが、公海域におけるまぐろ類の資源管理に関しては地域漁業管理機関(RFMO)に任されている。2004年12月これまで漁業管理機関がなかった中西部太平洋にも地域漁業管理機関である中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が設立され、世界的なまぐろの資源管理体制が整った。日本は2005年8月にその委員会に加盟し、WCPFC内で北緯20度以北の中西部太平洋におけるまぐろ・かつお資源を管理する北小委員会の活動へも積極的に関与している。WCPFCでは2005年12月には中西部太平洋のメバチについて漁獲を現状に凍結する案が、2006年12月にはキハダについて同様の案が採択された。2008年12月にはメバチについて、今後30%の漁獲削減を行う案が採択された。

世界的な過剰漁獲の削減問題はどのRFMOにとっても重要な課題である。2006年にはVMS(漁船位置自動報告)システムの採用、はえ縄漁獲物の転載をモニタリングするための運搬船監視の仕組み等が幾つかのRFMOで決定される等、漁業監視の強化策の導入が図られた。また、漁獲物の貿易監視強化の一環として従来の統計証明制度に代わるものとして漁獲証明制度が大西洋のクロマグロ(2007年)とミナミマグロ(2008年)で採用決まった。

大西洋まぐろ類保存国際委員会ICCATにおいては2006年に東大西洋クロマグロの管理案が採択され、2007年には蓄養漁業のモニタリングやデータ収集強化が決定されたが、それらの実施やクォータの遵守が一部の加盟国で十分になされていないとして2008年11月の会合において、東大西洋クロマグロは、TACを2009年に22,000トン、2010年に19,950トン、2011年に18、500トンとし、必要ならさらに削減すること、2009年3月に遵守委員会を開催し、大西洋クロマグロ漁業・蓄養業に関係する加盟国について、各国の関係規制措置の遵守状況を評価し、不適切と判断された場合は漁獲割当の一時凍結や削減などの措置を講じることとされた。


資源管理

まぐろの資源管理に関する今後の問題点を箇条書きに列記した。

  • 漁獲統計、生物統計の精度とカバー率の向上及びデータ収集の迅速化
  • はえ縄、竿釣り、まき網漁業等における漁獲努力量の標準化及び漁獲努力量の動向の把握
  • FADsによる小型メバチの多獲が資源に及ぼす影響評価と漁獲削減方法の開発
  • 蓄養まぐろに関するデータの収集とその漁獲が資源に及ぼす影響の評価
  • 資源評価精度の向上、資源変動要因の解明及び資源加入モニタリング技術の開発
  • 海鳥、海亀、さめ類の混獲実態の把握と混獲回避技術の開発及び混獲影響の評価

データソース

この章で扱った漁獲量は、2005年まではFAO統計(FISHSTAT、http://www.fao.org/)を、漁法別の漁獲量についてはまぐろ関係の漁業委員会〈IATTC、SPC、ISC, IOTC、 ICCAT〉の数値を、輸入量については財務省の輸入通関統計(http://www.customs.go.jp/toukei/srch/ index.htm)を用いた。ミナミマグロについては、大洋別の統計が不確実なため大洋別に分類していない。

執筆者

まぐろ・かつおグループ
遠洋水産研究所 温帯性まぐろ資源部長

宮部尚純

遠洋水産研究所 熱帯性まぐろ資源部長

本多 仁