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01 世界の漁業の現状について


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図1. 世界の漁業生産量の推移(データ:FAO 2007a,b)


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図2. 図2. 北西太平洋における国別漁獲の動向(データ:FAO 2007a)


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図3. 北西太平洋の主要資源の漁獲動向(データ:FAO 2007a)


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図4. 単位面積当たり漁獲量の海区別比較(北西部太平洋のみ中国とその他を区分) (データ:FAO 2005、2006)


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図5. 2004年におけるFAO統計海区ごとの資源利用状況別資源の割合 (データ:FAO 2005から転載しラベル及び凡例を和訳)


1.世界の漁業生産の動向

(1)漁獲及び養殖の生産量

世界の人口は、1950年には25億人程度であったものが、2000年には約60億人を超え、2015年には70億人に達すると予想されている。魚類は人類が摂取する動物性タンパク質の約16%を担っているとされているが、人口の増大に呼応するように魚介類の生産量も増大している。

2005年の世界の魚介類(水産植物及び珊瑚、真珠、海綿を除く)の生産量は、過去最高であった2004年を111万トン上回る1億4140万トンを記録した。

近年の生産量の増大は、海面及び内水面の養殖によってもたらされており、海面での漁獲量は近年横ばいの傾向を示している(図1)。

また、漁獲と養殖を合計した中国の生産量は世界の全生産量の約3分の1を占めているが、中国の生産量から得られる指標が余りにも高い生産性を示していることから、この生産量は過大に見積もられているとの指摘もある。中国を除いた世界の海面漁獲量は緩やかな減少傾向を示しており、もし前述の指摘が正しければ、海面漁獲量全体の動向も減少傾向に転じる可能性を持っている。

こういった海面漁獲量の減少は、後述するように状況が悪化している資源が増えていることが主な原因であると考えられるが、全生産量に占める海面漁獲量の割合は59%に上り、海洋水産資源が水産物供給に果たす役割は依然として大きいといえるだろう。


(2)我が国周辺水域の漁獲動向

FAOでは、各大洋を複数の海区に分け、漁獲統計を編集しているが、我が国及びその周辺水域を含む北西太平洋の漁獲動向(図2)をみると、全体としては、1980年代後半以降は2千万トンから2千5百万トンの間で推移している。しかしながら、90年代以降中国による漁獲が急増しており、中国を除いた漁獲量は、かつては1千8百万トン以上あったものの、最近は7百万トン程度に減少している。

北西太平洋における主要な魚種(1950〜2003年の平均漁獲量上位10魚種)についてその漁獲の推移をみると(図3)、1980年代から90年代初期にかけて浮魚の代表種であるマイワシや底魚の代表種であるスケトウダラが多獲され、一時は双方とも5百万トンを上回る漁獲が記録されたが、その後両魚種とも大幅に減少した。一方、カタクチイワシの漁獲がマイワシと入れ替わるように1990年代以降増加した。また、図に示されていないが、1980年代以降、増殖事業によってさけ・ます類の漁獲量が増大している。

海域毎の生産性の高さを、単位面積当たりの漁獲量を指標として比較したのが図4である。これをみると、1 ku当たり1tを超える漁獲量を上げているのは、我が国周辺水域を含む北西部太平洋のみである。この中には中国による漁獲が6割ほど含まれており、前述した中国の漁獲量が過大に評価されている可能性を考えると下方に修正される可能性は持っているものの、北西太平洋海域はかなり高い生産性を有していると考えられる。

世界的な漁業資源の状況については後述するが、北西太平洋の資源利用状況(図5)をみると、過剰状態となっている資源の割合は比較的少ないが、これに満限に利用されている資源を加えた場合の割合は対象種の9割に迫ろうとしている。

我が国周辺水域を含む北西太平洋は、生産性の高い海域ではあるが、利用度合いの進んだ資源が多く、現在の資源状態は決して楽観できる状況ではない。


2.漁業資源の状況

FAOでは、資源評価のための知見を有している資源について、その利用状況をモニターしており、2005年の状況を以下のように述べている。すなわち、主要な漁業資源や魚種グループのうち約4分の1は、利用度が低い(3%)もしくは適度な利用状況(20%)にあり、これらの資源は、今後、漁獲量の増大をもたらす可能性があるが、約半分(52%)の資源は満限に利用されており、最大持続生産量に到達しているかそれに近い状態にある。一方で、約4分の1の資源は、過剰漁獲の状態(17%)、枯渇状態(7%)、枯渇からの回復途上の状態(1%)のいずれかとなっている。

また、1974年から2003年にかけての状況をみると、生産を拡大する余力のある資源の割合が一貫して減少したのと同時に、過剰漁獲にある資源や枯渇状態にある資源の割合が増大しており、これらの割合は70年代半ばの10%から2000年代初めには25%近くになっている(図6)。

FAOの統計海区は16海区あるが、このうち12の海区では、少なくとも70%の資源は既に満限の利用状況若しくは過剰漁獲にあり、これは漁業生産力が最大に達しているとともに、注意深いかつ抑制的な管理が求められていることを示している(図5)。 

以上のような資源の悪化に歯止めをかけ、人類が水産資源を永続的に利用し続けるためには、最大の生産を持続的に確保できるよう、資源状況に即した迅速な管理措置を講じていく必要があり、そのためには資源の現状を的確に把握する必要がある。現在、各国の科学者が漁業者の協力を得ながら資源分析に尽力し、世界の各水域での資源管理に重要な役割を果たしているが、評価に用いる指標の不足や、生物学的な知見が乏しいなどの理由によって、まだ不明確な分野も多い。

今後は、評価可能資源を増加させ、より広範な資源管理体制の充実を図ることと、個々の資源の評価精度の向上を図っていく必要がある。

また、2006年から2007年にかけて、公海の底魚漁業に関し魚類資源の持続的な管理と破壊的漁業活動からの脆弱な海洋生態系の保護のためRFMO等を通じ緊急の行動を求める国連決議が採択されたり、まぐろ類地域漁業管理機関合同会合において混獲問題が行動方針の重点事項になるなど、漁業と環境との関係が近年の大きなテーマとなっており、漁業が環境に与える付加を低減する方法の開発・普及が求められている。


執筆者

水産庁 増殖推進部 漁場資源課

今井 浩人

参考文献

  1. FAO. 2007a. Capture production 1950-2005. Download for Global Capture Production (Figis online query).
  2. FAO. 2007b. Aquaculture production 1950-2005. Download for Global Capture Production (Figis online query).
  3. FAO. 2007c. The state of world fisheries and aquaculture 2006. FAO, Rome, Italy. 162 pp. FAO. 2006. The State of Food and Agriculture 2006: quantities 1950-2004. Download dataset for Global Aquaculture Production (Figis online query).
  4. FAO. 2005. Review of the state of world marine fishery resources. FAO Fisheries Technical Paper No.5. FAO, Rome, Italy. v+235 pp.
  5. UN. 2005. Population Division of the Department of Economic and Social Affairs of the United Nations Secretariat, World Population Prospects: The 2004 Revision and World Urbanization Prospects: The 2005 Revision.