マジェランアイナメ 南極海


(Patagonian Toothfish, Dissostichus eleginoides)

1. マジェランアイナメ. Fisher and Hureau 1985

 

2. マジェランアイナメ漁獲物 CCAMLR HPB. Watkins

 


最近一年間の動き

南極海の魚類に対して、CCAMLR保存措置に基づく2004/05年漁期は、7つの開発漁業を含む12の漁業が実施された。メンバー国のEEZ内では他の漁業が実施された。CCAMLR水域内のメロ類の報告漁獲量は、18,321トン(内IUU漁獲量2,076トンを含む)で、前年2003/04漁期18,500トン並であった。CCAMLR水域外の2004/05年漁期漁獲量は12,847トンであり、前年2003/04漁期15,860トンより減少した。なお、これまで本漁業に対してIUU操業による推定漁獲量が多く、資源状態に悪影響を及ぼしていることが強く懸念され、管理措置上にも大きな問題を抱えていた。そのため、CCAMLRIUU操業に対する強い対策を講じてきた。この成果が現れ、2002/03漁期10,070トンから2003/04漁期2,622トンへ激減した。2004/05漁期は2,076トンと前漁期に比べて小幅な減少となった。

                                                                                                                    

利用・用途

本種は冷凍切身として惣菜用とされるほか、みそ漬け等の加工品の原料となる。

 

漁業の概要

マジェランアイナメ(通称メロ)(12)の地理分布は広く、本種を対象としたはえ縄漁業はもともと、チリとパタゴニアの陸棚斜面域から始まり、1980年代中頃から南極海洋生物資源保存条約(CCAMLR)水域内でも漁獲されるようになった。本種に対する高い市場価値がはえ縄漁業を急速に拡大させた。1996/97年以降には、本種の近縁種で南極大陸沿岸域に生息するライギョダマシAntarctic Toothfish; Dissostichus mawsoniも漁獲対象となっている。

南極海における漁業の歴史は、1906年のサウスジョージアでの陸上基地捕鯨にまでさかのぼる。ただし、オキアミを除く、大きなスケールでの魚類漁業は、1969/70年のサウスジョージア水域と1970/71年のケルゲレン諸島水域で始まった。1977/78年以降、魚類漁業はさらにサウスオークニー諸島水域のような高緯度域へ拡大した。

ところが、これらの魚類漁場では高い漁獲量は長く続かず、1980年代初期に急減した。高緯度の南極大陸沿岸水域での漁業は、商業漁獲に対応できるだけの分布密度が見られなかった。これらの魚類漁業の形態はトロール操業であった。

漁獲された魚類は、ウミタカスズキMarbled Rockcod; Notothenia rossi、コオリカマスMackerel Icefish; Champsocephalus gunnari、ウロコノトGrey Rockcod; Lepidonotothen squamifrons、マルビナスノトセニアYellowfin Notothen; Patagonotothen guntheri、コオリウオ科のトゲコオリウオSpiny Icefish; Chaenodraco wilsoni及びハダカイワシ科のガンテンダルマハダカSub-Antarctic Lanternfish; Electrona carlsbergiであった。ほとんどの漁獲種は人間の食用とされ、一部の小型魚は魚粉原料に使われた。

南大洋の魚類資源は、発見、開発、そして枯渇の時間サイクルがきわめて短かった。CCAMLRが発効する前の漁業によって、ほとんどの底生魚類資源が枯渇していた。CCAMLR1982年に発効し、魚類漁業に対して次々と規制措置がとられた。この衰退するトロール魚類漁業に替わって、サウスジョージア水域やケルゲレン諸島水域の本種を漁獲対象としたはえ縄漁業が始まった。

近年(19952005年)の本種の漁獲量変化を3に示す。漁獲域は、CCAMLR水域のインド洋区(58海区)と、大西洋区(48海区、そのほとんどは48.3海区)である。なお、本種漁業の後発として急速に拡大したライギョダマシ漁業は、以前は漁獲域がロス海域(88海区)に集中していたが、2004/05漁期から48海区と58海区でマジェランアイナメ(ライギョダマシを含む)に割り当てられた漁獲制限量により、同海域でも漁獲されている4)。

3.  南極海CCAMLR水域内の海区毎でのマジェランアイナメ漁獲量の

1994-2005年の変化(CCAMLR 2006)(*88海区は僅少)

 

4. 南極海CCAMLR水域内の海区毎でのライギョダマシ漁獲量の

1997-2005年の変化(CCAMLR 2006

 

CCAMLRが行っている漁獲証明制度から算出した2004/05漁期の全体のマジェランアイナメ(ライギョダマシ含む)の総漁獲量は、31,168トン(2003/0434,306トン)である(1)。CCAMLRの枠組みの下で操業している漁船による報告漁獲量は、16,250トン(2003/04漁期18,500トン)である。CCAMLR水域外からの漁獲報告量が12,847トン(2003/04漁期15,806トン)、CCAMLR水域内のIUU(違法・無規制・未報告)操業の推定量は2,076トン(2003/04漁期2,622トン)と見積られた。IUUによる漁獲量は、前漁期に比べて小幅の減少となった。

 

1. Dissostichus類(マジェランアイナメアイナメ+ライギョダマシ)の2004/05年漁期の漁獲量。IUU(違法・無規制・未報告)漁獲推定量及び漁獲証明書(CDS)に基づくCCAMLR水域外報告漁獲量を含む。(*EEZ外)

Inside

Subarea/Division

Reported catch

IUU catch

Total CCAMLR

Catch limit

 

48.3

3,039

23

3,062

3,050

 

48.4

27

 

27

28

 

48.6

51

 

51

910

 

58.4.1

480

 

480

600

 

58.4.2

127

86

213

780

 

58.4.3(a and b)

406

1,114

1,520

550

 

58.4.4

0

220

220

0*

 

58.5.1

5,065

268

5,333

0*

 

58.5.2

2,744

265

3,009

2,787

 

58.6

637

12

649

0*

 

58.7

142

60

202

0*

 

88.1

3,120

28

3,143

3,250

 

88.2

 

411

 

411

375

 

88.3

2

 

 

    0**

 

 

Total inside

16,250

2,076

18,321

 

Outside

Area

CDS catch EEZ

CDS catch high seas

Total Outside CCAMLR

 

41

3,736

3,327

7,063

-

 

47

 

78

78

-

 

51

8

33

41

-

 

81

54

 

54

-

 

87

5,226

385

5,611

-

 

Total outside

9,024

3,823

12,847

-

Global Total

 

 

 

31,168

 

(SC-CAMLR 2006a)

 

生物学的特性

マジェランアイナメは、スズキ目ノトセニア科の魚類で通称メロと呼称される。本種を含むノトセニア科の魚類は、南極周辺海域だけに分布する。本種はノトセニア科のうち、最も北に分布するものの一つである。全身に細かい鱗があるが頭頂部にはない。背鰭は2つあり、胸鰭は大きく扇状である。側線は2本あり、下のものは体の中央付近から始まる。体色は全身が黒褐色(12)。小型は色がやや薄い。

地理分布は、南緯3035度以南の南極大陸を取り囲んだ海域の陸棚の浅瀬から水深2,5003,000 mあたりの陸棚斜面に棲息する(56)。稚魚は海面近くでオキアミ類等を食べる。3才魚から餌の種類が変わり、成魚は魚類、いか類及び甲殻類を食べる。

5. CCAMLR水域(黄色)とマジェランアイナメ主分布域(ピンク)、主漁場()

 

6. マジェランアイナメ・ライギョダマシの新規・開発漁業の際に義務付けられる小規模調査ユニット枠

影の部分は、両種の主棲息深度5001,800mの陸棚斜面域。太破線は二種の区分線で、北側域;マジェランアイナメ、南側域;ライギョダマシ(CCAMLR保存管理措置)

 

69年で7095 cmに成長、性的に成熟し、69月に陸棚斜面上で産卵する。産卵数は、体長や地域によって変化が大きいが48,000500,000個の範囲である。卵の大きさは直径4.34.7 mmで、一般に水深が2,2004,400 mの海域の500 m以浅で見つけられる。孵化は1011月くらいと見られている。最大の体長と体重は、238 cm130 kgが観察され、4050歳まで成長すると言われている。

なお、本種と外見が非常に良く似たライギョダマシが南極大陸沿岸水域に分布するが、同種もCCAMLRの漁獲許可対象種である。

 

資源状態

南極海のCCAMLR水域全体のマジェランアイナメ資源量は、資源調査が行われていないため正確な値はわからない。ただし、本種の分布域は陸棚・陸棚斜面域であることから、6で示すような影の部分の海底深度面積と得られた生物データとを組合せて小スケール毎の資源量変動を試算し、毎年の作業部会で検討され、管理措置に反映されることとなる。

これまで、本漁業に対してIUU操業による推定漁獲量が多く、資源状態に悪影響を及ぼしていることが強く懸念され、管理措置上にも大きな問題を抱えていた。そのため、CCAMLRIUU操業に対する強い対策を講じてききており、その結果としてIUUによる漁獲量は低下してきている。

 

管理措置

CCAMLRの科学委員会(SC-CAMLR)の魚類資源評価作業部会が、魚類の資源管理のための科学的検討を行っている。検討方法は海区ごとに異なり、漁獲量とCPUEの動向から判断する場合と、資源動態モデルを用いたシミュレーションによって判断する場合がある。後者の方法は、一般生産モデル(推定された加入量を基に、漁業開始以降の資源動態のシミュレーションし、適切な資源管理を行う方法)により、資源量が将来ある特定の基準を下回らないような漁獲量を許容漁獲量として勧告するものである。

CCAMLRが管理措置として取り決めた、2006/07漁期(同前年2005/06漁期)におけるマジェランアイナメ(一部ライギョダマシ含む)の漁獲制限量は、48.3海区(サウスジョージア島水域)3,5543,556)トン、48.6海区(大西洋区)910910)トン、58.4.1海区(インド洋区)600600)トン、58.4.2海区(インド洋区)780780)トン、58.5.2海区(マクドナルド・ハード島水域)2,4272,584)トン、88.1海区(太平洋区)3,0322,964)トン、88.2海区(太平洋区)547487)トン等となっている。

 

マジェランアイナメの資源の現況 (要約表)

資源水準

中位

資源動向

横ばい

世界の漁獲量

(最近5年間)

世界全体:3.16.3万トン

平均:4.7万トン

CCAMLR水域1.82.9万トン

平均:2.3万トン

我が国の漁獲量

(最近5)

0262トン

平均:64トン

管理目標

0262トン

平均:64トン

目標値

予防的漁獲制限量

資源の現状

IUU操業による過剰漁獲懸念

管理措置

CCAMLR分割海区・EEZ毎に毎年漁獲制限量を決める

資源管理・

評価機関

南極海洋生物資源保存委員会CCAMLR

 

執筆者

外洋資源グループ

南極オキアミサブグループ

遠洋水産研究所 南大洋生物資源研究室

永延幹男

 

参考文献

CCAMLR. 2006.  Statistical Bulletin, Vol. 18 (19952005). CCAMLR, Hobart, Australia. 239 pp. http://www.ccamlr.org/pu/e/e_pubs/sb/sb-vol18.pdf  (20061117)

Fishcher, W. and J.C. Hureau (eds.). 1985.  FAO species identification sheets for fishery purpose. Southern Ocean (Fishing area 48, 58 and 88). With the support of CCAMLR, FAO, Rome, Vol. 2, 233-470.

Gon, O. and P.C. Heemstara. 1990.  Fishes of the Southern Ocean.  J.L.B. Smith Institute of Ichthyology, Grahamstown, South Africa.  462 pp.

岩見哲夫・川口 創・永延幹男. 2001.  南極海およびその周辺海域より報告のある魚類の標準和名のリストならびに新和名の提唱.  遠洋水産研究所研究報告, 38: 29-36. http://www.enyo.affrc.go.jp/bulletin/38/so.pdf 2006127日)

Kock, K.H. 1992.  Antarctic fish and fisheries. Cambridge Univ. Press, Cambridge, UK.  359 pp.

Kock, K.H. (ed.). 2000.  Understanding CCAMLR’s approach to management.  CCAMLR, Hobart, Australia.  63 pp.

Moller, P.R., J.G. Nielsen and I. Fossen. 2003.  Patagonian toothfish found off Greenland.  Nature, 421: 599.

永延幹男. 1999.  南大洋の生物資源利用と生態系保存-南極海洋生物資源保存条約とその展開を中心にして-.  水産振興, 382: 1-93.

中村 (). 1986.  パタゴニア海域の重要水族. 海洋水産資源開発センター, 東京.  369 pp.

SC-CAMLR. 2006a.  Report of the working group on fish stock assessment. Part 1-Text and tables. SC-CAMLR-XXV/4.  CCAMLR, Hobart, Australia.  125 pp.

SC-CAMLR. 2006b.  Report of the twenty-fifth meeting of the Scientific Committee. SC-CAMLR-XXV, CCAMLR, Hobart, Australia. 171 pp.