ナンキョクオキアミ 南極海


Antarctic Krill, Euphausia superba

 


最近一年間の動き

2004/05漁期のオキアミ総漁獲数量実績は、127,035トンであった。国別実績は、最大量がバヌアツ48,389トン、韓国26,920トン、日本22,793トン、以下、ポーランド、ウクライナ、米国と続く。2004/05年漁期は、国別漁獲量に変化がみられ、日本は第1位(33,583トン)であった前漁期から漁獲量が減少し3位となった。これに対してバヌアツの漁獲量は増加した。2005/6漁期は、7カ国の漁船により48海区で実施され、現時点では未集計だがほぼ2004/5漁期並みと予想されている。2006/07年漁期のオキアミ操業計画は、8カ国メンバーが総計36.8万トンを通知している。その内訳は、ノルウェー:20万、ウクライナ:5万、韓国:4.5万、日本:3万、ロシア:2.5万、ポーランド:1.4万、チリ:0.4万、および米国:未定トンであった。なお別途、バヌアツが操業を通知している。

 

利用・用途

冷凍品として主に養殖・漁業用の餌料・釣餌とされ、一部が加工食品の原料となる。

 

漁業の概要

ナンキョクオキアミ(以下オキアミ)操業が世界的に始まったのは1972/73年シーズンからであり、旧ソ連が、7,400トンを漁獲した。オキアミ操業が本格化した後の世界全体の経緯は、1976/77年になると10万トンを超え、1978/79年には30万トン強へ増加し、1981/82年に最大漁獲量50万トン強に到達した。しかし、この後の数年間で漁獲量は、オキアミ商品化の停滞と、漁獲努力が魚類へ移ったことで大幅に減少した。1986/87年から1990/91年までの年間オキアミ総漁獲量は、35万から40万トンの間で安定したが、1992/93年には、前年の30万トンから8万トン台へ大きく減少した。これは、旧ソ連からロシアへ移行した政治体制の大きな変化により、ロシア漁船が採算を取れないという経済的理由でオキアミ漁業を中止したためである。1992/93年以降から現在までのオキアミ年間漁獲量は、10万トン前後で推移している(図1)。2004/05漁期のオキアミ総漁獲数量実績(127,035トン)のうち、国別実績は、第1位がバヌアツ48,389トン、韓国26,920トン、日本22,793トン、以下、ポーランド、ウクライナ、米国と続く。2004/05年漁期は、国別漁獲量に変化がみられ、日本は、第1位(33,583トン)であった前漁期から漁獲量が減少し第3位となった。

1. 世界のナンキョクオキアミ漁獲量の海区毎の推移(19952005)年(CCAMLR 2006)(*58海区は僅少)

 

2005/06漁期は、7カ国の漁船に48海区でオキアミ操業を実施した。本年10月上旬時点の総漁獲数量は105,049トンでほぼ昨年並みである。2006/07漁期の総漁獲計画数量は、36.8万トンと通知されている。

スコシア海48海区のオキアミ漁獲量は、1999/2000漁期以来比較的安定しているが、国別に2003/04漁期と2004/05漁期を比べると、日本(33,58322,793トン)及びポーランド(8,9674,335トン)が減少した。対照的にバヌアツ(29,49248,389トン)は増加し、韓国(26,920トン)とウクライナ(22,440トン)は高位で推移している。

現在までのオキアミ総漁獲量の累積は約600万トンである。そのうち、旧ソ連とその後継国であるロシアとウクライナが80%強、そして日本が20%弱を漁獲していることになる。総漁獲量の90%以上が大西洋海区西側のスコシア海域から漁獲されている。現在までオキアミを漁獲したことのある国は、チリ、ドイツ、日本、ラトビア、韓国、パナマ、ポーランド、旧ソ連、ロシア、南アフリカ、ウクライナ、英国、米国、バヌアツ等である(表1)。

 


1.  1972/732004/05年間の国別48海区オキアミ漁獲量

Season

Catch (t)

Contracting Party

 

 

ARG

CHL

DDR

ESP

GBR

JPN

KOR

LVA

PAN

POL

RUS

SUN

UKR

URY

USA

VUT

ZAF

1972/73

59

 

 

 

 

 

59

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1973/74*

19,339

 

 

 

 

 

200

 

 

 

 

 

19,139

 

 

 

 

 

1974/75*

41,352

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

41,352

 

 

 

 

 

1975/76*

1,552

 

368

 

 

 

 

 

 

 

575

 

609

 

 

 

 

 

1976/77*

68,301

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

68,301

 

 

 

 

 

1977/78*

78,837

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

78,837

 

 

 

 

 

1979/80*

356,821

 

 

 

 

 

69

 

 

 

 

 

356,752

 

 

 

 

 

1980/81*

154,474

 

 

 

 

 

4,609

 

 

 

 

 

149,865

 

 

 

 

 

1981/82*

326,788

 

 

 

 

 

5,474

 

 

 

 

 

321,314

 

 

 

 

 

1982/83

65,115

 

3,752

 

 

 

6,399

 

 

 

360

 

54,604

 

 

 

 

 

1983/84

40,534

 

1,649

 

 

 

38,812

 

 

 

 

 

73

 

 

 

 

 

1984/85

212,011

 

2,598

50

 

 

32,645

 

 

 

90

 

176,628

 

 

 

 

 

1985/86

378,739

 

3,264

 

 

 

52,738

 

 

 

1,975

 

320,762

 

 

 

 

 

1986/87

400,835

 

4,186

 

379

 

74,034

1,527

 

 

2,625

 

318,084

 

 

 

 

 

1987/88

388,953

 

5,938

 

 

 

73,112

1,525

 

 

4,952

 

303,426

 

 

 

 

 

1988/89

352,271

 

5,329

396

 

 

78,928

1,779

 

 

7,587

 

258,252

 

 

 

 

 

1989/90

376,099

 

4,501

 

 

 

40,552

4,040

 

 

2,956

 

324,050

 

 

 

 

 

1990/91

331,318

 

3,679

 

 

 

67,647

1,211

 

 

10,309

51,473

184,360

12,639

 

 

 

 

1991/92

257,663

 

6,066

 

 

 

77,980

519

 

 

14,685

103,250

 

55,163

 

 

 

 

1992/93

60,783

 

3,261

 

 

 

50,845

 

71

 

4,390

2,216

 

 

 

 

 

 

1993/94

84,645

 

3,834

 

 

 

60,198

 

 

 

7,997

 

 

12,613

 

 

 

3

1994/95

134,420

 

 

 

 

 

62,111

 

 

637

12,521

 

 

59,150

 

 

 

 

1995/96

91,150

 

 

 

 

 

58,769

 

 

 

22,104

 

 

10,277

 

 

 

 

1996/97

75,653

 

 

 

 

308

60,937

 

 

 

14,408

 

 

 

 

 

 

 

1997/98

90,024

 

 

 

 

634

67,481

2,849

 

 

19,059

 

 

 

 

 

 

 

1998/99

101,957

6,524

 

 

 

 

66,076

27

 

 

19,167

 

 

6,719

3,444

 

 

 

1999/2000

114,425

 

 

 

 

 

80,597

7,233

 

 

20,049

 

 

 

6,477

70

 

 

2000/01

104,182

 

 

 

 

 

67,377

7,525

 

 

13,696

 

 

14,023

 

1,561

 

 

2001/02

125,987

 

 

 

 

 

51,079

14,353

 

 

16,365

 

 

32,015

 

12,175

 

 

2002/03

117,728

 

 

 

 

 

59,682

21,276

 

 

8,905

 

 

17,715

 

10,150

 

 

2003/04

118,166

 

 

 

 

16

33,583

24,522

 

 

8,967

775

 

12,261

 

8,550

29,491

 

2004/05

127,035

 

 

 

 

 

22,793

26,920

 

 

4,335

 

 

22,440

 

2,159

48,389

 

* Season unknown for some catch data, split-year used as an approximation

ARGアルゼンチン、CHLチリ、DDR旧東ドイツ、ESPスペイン、GBR英国、JPN日本、KOR韓国、LVAラトビア、PANパナマ、POLポーランド、RUSロシア、SUN旧ソ連、UKRウクライナ、URYウルグアイ、USA米国、VUTバヌアツ、ZAF南アフリカ(Data: Ramm et al. 2006

 

現在の漁場は、大西洋海区が中心であるが、過去にはインド洋海区でも実施されていた(2)。現在、主要な漁場は、漁船の寄港地が南アメリカ大陸に近く、資源が豊富だと言われている、スコシア海(サウスシェットランド諸島水域(FAO統計48.1海区)、サウスオークニー諸島水域(48.2海区)及びサウスジョージア水域(48.3海区))に偏っている。

2. 南極海全体におけるナンキョクオキアミ漁場の位置

 

サウスシェトランド諸島及びサウスオークニー諸島水域でのオキアミ操業は、通常夏季に行われているが、これらの高緯度の漁場は冬季には海氷に被われるため、冬季にはサウスジョージア水域でオキアミ操業が行われる。漁獲の中心はサウスシェトランド諸島海区であり、全体の60%を占め、次にサウスジョージア海区が30%を占める。ただし、近年、サウスシェトランド諸島及びサウスオークニー諸島水域でも、冬季に海氷に覆われない状態が見られ、冬季でも本水域が漁場となる場合もある(3)。

3. サウスシェトランド諸島水域(左図)、サウスオークニー諸島(Area 48.2)およびサウスジョージア水域(Area 48.3)での漁獲位置の集中の事例

 

生物学的特徴

オキアミ(4)は、南極海(5)に生息する甲殻類であり、体長(目前端から尾節まで)は最大60 mm以上に達する。寿命は、57年と考えられている。夏季には、爆発的に増殖する植物プランクトンを捕食する。植物プランクトン量の少ない冬季には、動物プランクトンや海氷中の植物プランクトン(アイスアルジー)等も捕食すると考えられている。オキアミの分布域は、南極前線以南の南極表層水と呼称される海域である(6)が、季節や成熟段階によって大きく異なる。初夏(12月)から盛夏(2月)にかけて成熟個体が陸棚斜面域に分布するのに対し、未成熟個体は主に陸棚縁辺部に分布する(7)。いずれも表層200 m以浅にパッチ(群れ)を形成するが、パッチは海域によってかなり濃淡がある。成熟した個体は、夏季になると繁殖期を迎える。交尾に際しては、雄は雌の生殖孔に精筴(通常2個)を付着させ、盛夏になると続々と産卵が行われる。1シーズンに複数回産卵すると考えられており、1回の産卵数は2,00010,000個程度で1,000 m以深まで沈降し1週間ほどで孵化する。

4. ナンキョクオキアミ(写真提供:朝日新聞社)

 

5. 南極海

ナンキョクオキアミの地理分布は南極前線以南

 

6. 網採集によるナンキョクオキアミの出現箇所(黒色マーク)と不出現箇所(空白マーク)(出所:過去1930年代以降の累積)

 

7. ナンキョクオキアミの季節および成熟段階における地理分布と生存量(目盛は相対値)

 

その後、浮上しながら脱皮を繰り返し、幼生期(ノープリウス→メタノープリウス→カリプトピス→ファーシリア)を経て表層近くに分布する(89)ようになるころ(春季)には、体長2030 mmのジュヴェナイル(亜成体:外見は成体と同じだが第二次性徴が現れていない)になる。そして、秋季、冬季になるとジュヴェナイル及び成体ともに沿岸に移動し、海氷直下又は海底付近等に分布すると考えられている。孵化後、2年目以降に成熟する。

8. ナンキョクオキアミの生活史

 

9. ナンキョクオキアミの卵・幼生期の鉛直移動

 

オキアミは通常、幼生期には脱皮間隔(日数)が短く、成長率が高い。反面、成体になるにつれて、脱皮間隔が長くなり、成長率が低くなる(10)。なお、オキアミは、極寒の南極海に適応するために、独特の越冬戦略を行っていると考えられている。餌環境の悪い冬季には、エネルギー消費を低く抑えるために、体長を脱皮により収縮させ、さらには性徴も後退をすることが実験により確認されている。その他、餌生物のスイッチ(植物プランクトンからアイスアルジー又は動物プランクトン)も越冬戦略の一つであると考えられている。

10. ナンキョクオキアミの生長率と脱皮期間

 

資源状態

オキアミ漁業が本格的に開始(1972年)される以前には、南極海全体のオキアミ資源量は数十億トンと予想されていた。南極海洋生物資源保存条約(CCAMLR)が成立(1982年)する以前にオキアミ資源量を調べるための国際共同BIOMASS調査が計画され、BIOMASS-FIBEX1981: 調査面積396.1×103㎢)によりスコシア海(48海区)のオキアミ資源量は1,510万トンと推定された。この資源量は後に再検討され最終的に3,540万トンと修正された。

近年になってCCAMLRの科学者間でFIBEX資源量を見直す新たな調査を実施しようという意見が強まり、200012月に日本(開洋丸: 11)、イギリス、アメリカ及びロシアの4ヵ国の調査船が、スコシア海で、同一規格の音響装置(12)、網採集(13)及び海洋観測(CTD)によって、一斉調査を実施した(調査面積2065.2×103㎢)(14)。その結果、48海区のオキアミ資源量を4,429万トンと算定した(2)。調査面積が増加したことで、以前のFIBEX値よりCCAMLR管理区域の資源量は増えた。

11. サウスジョージア島湾内に仮錨泊する開洋丸。国際共同オキアミ資源量調査の

音響システムを較正中(写真提供:朝日新聞社)

 

12. 開洋丸の音響調査によるナンキョクオキアミおよびハダカイワシの反応事例

 

13. RMT1+8ネットによるサンプリング

 

14. 2000年国際共同一斉調査結果によるナンキョクオキアミ分布密度

 


2.  2000年国際共同一斉調査結果による、各水域のオキアミ分布密度と生物量

 

海域

オキアミ平均密度
(g/m2)

海域面積
(103km2)

資源量
(103
トン)

変動係数
(%)

南極半島

11.2

473.3

5,320

19.3

スコシア海

24.5

1,109.8

27,235

15.3

東スコシア海

11.3

321.8

3,642

42.5

サウスシェットランド諸島

37.7

48.6

1,836

26.2

サウスオークニー諸島

150.4

24.4

3,670

55.5

サウスジョージア

39.3

25

982

30.8

サウスサンドウィッチ諸島

25.8

62.3

1,604

26.4

全海域

21.4

2,065.2

44,289

11.4

 

スコシア海以外でオキアミ資源として利用されている場所は、インド洋区の58.4.1海区と58.4.2海区であるが、この他の海区では適切な資源量は見積られていない。

なお、調査資料がある1920年代以降のオキアミ資源の長期傾向は、大気・海氷などの環境変動と関連して1970年代〜1980年代頃に減少傾向が認められ、1990年代に入るとやや横ばい傾向に入る(例えばLoeb et al.1997)、Naganobu et al.1999)およびAtkinson et al.2004))。現在の資源量は初期資源量と比較すると減少しているものの、CCAMLRが管理するオキアミ予防的漁獲制限量は現行で総計489万トン(南極海全体のうち未調査域を含まない)であり、近年の世界の総オキアミ漁獲量10数万トンは、この漁獲制限量の0.02%に過ぎない。したがって、MSY資源管理基準に沿うと資源水準は高位、資源動向は横ばいと判断した。しかし、自然状態のオキアミ資源量の変動の動向は、南極生態系にとって極めて重要な要素であり、常に注意を払ってモニタリングしていく必要がある。

 

管理方策

CCAMLRによる資源管理】CCAMLRによる資源管理は、条約において次の原則を謳っている。

1 対象資源の安定した加入を確保する水準を保つこと。このために資源量を、最大年間純加入量を確保する水準以下に減少させてはならない。

2 対象資源、これに依存する資源、および対象資源と関係ある資源との間の生態的関係を維持すること。枯渇した資源については、その資源量を安定した加入の水準まで回復させること。

3 南極の生物資源の持続的保存を可能にするために、海洋生態系の復元が20年または30年にわたり不可能になるおそれがある生態系の変化を防ぐこと。またはその危険性を最小限にすること。これは、漁獲活動による直接的・間接的影響、外来移入種による影響、漁獲活動が生態系に及ぼす影響、および環境変化による影響についての知見の状態を考慮しての判断である。つまり生態系変化に対して、人為・自然の両方とも影響を考慮する。

 

この原則に基づき、CCAMLRは、条約水域を海区ごとに区分(15)し、海区ごとに保存措置を決めている。2006年現在のオキアミ資源に関するCCAMLR保存措置は、スコシア海とインド洋区の二箇所に設定されている。スコシア海(48海区全体)におけるオキアミの予防的漁獲制限量は、2000年国際共同一斉調査による資源量の割合から、年間400万トンと算定された。

15. CCAMLRの統計海区

 

その算定方法は、次式の概念によりオキアミの潜在生産力(予防的制限量)を求めた。

Y=γBo

Y:潜在生産力の見積り

γ=λM

λ:加入変動と自然死亡率による選択的な組み合わせに応じて決まる値

M: 自然死亡率

Bo= 対象水域のオキアミ資源量

そして、ペンギン、アザラシ等のオキアミ捕食者の餌場への悪影響を分散する目的で、小海区(48.148.248.3及び48.4海区)の漁獲量制限を設けており、48.1海区:101万トン、48.2海区:110万トン、48.3海区:106万トン及び48.4海区:83万トンである。

加えて現在のところCCAMLRでは、オキアミ捕食者による繁殖地周辺の餌場保護のために、小規模管理ユニットという概念で、小海区をさらに分割することの検討が進められている。ただし、その導入の是非は今後の論議となっている。

48海区以外で予防的漁獲制限措置が執られている海区は、58.4.1海区の制限量が44万トン、58.4.2海区の45万トンである。他の海区では今のところ適切な資源量推定値がないため、予防的漁獲制限量の措置は執られていないが、開発漁業の扱いとなり暫定的な漁業枠が設定されている。

 

CCAMLR生態系アプローチ】1970年代に魚類とオキアミの漁業が本格的に開始されたが、魚類は元の資源量が小さく乱獲を防止するため、また、オキアミは南極生態系の食物連鎖の要(かなめ)であり乱獲されると生態系全体へ悪影響を及ぼすことになるため、これらの資源に対してなんらかの予防策を早急にたてる必要があった。過去の南極海における乱獲の歴史を教訓として、南極条約の協議国メンバーは強い危機意識を持ったが、この南極条約には生物資源についての保護管理の規制がなかった。

そこで、1977年にロンドンで開催された南極条約の協議国の会議において、「南極海の生物資源の乱開発の予防策の勧告」がまとめられた。翌19782月には「南極の海洋生物資源の保存に関する条約(Convention on the Conservation of Antarctic Marine Living ResourcesCCAMLR)の草案づくりが開始され、1980年に署名、1982年に発効した。

CCAMLRは、ヒトが利用対象とする資源の保存のみならず、その資源に関わる生態系も同時に保護するという理念をもつことから、過去にない内容を持つ画期的な条約と言われている。

我が国のオキアミ漁業と密接に関連する、CCAMLRの漁業管理への生態系アプローチの応用は、新しい方法論への挑戦と言われている。それは、この生態系アプローチは、餌生物と捕食者及びそれらと環境との相互関係を考慮されなければならないからである。生態系アプローチを難しくするのは、要求される項目の調査を、南極海という過酷で遠隔の環境で実行されなければならないことである。

近年の南極海、特に南極半島海域における地域温暖化は顕著であり、海氷面積の後退、棚氷の崩壊、水温上昇等の環境異変の報告が相次いでいる。環境が及ぼす影響は、重要な課題であり、いくつもの研究集会等が推進されており、今後この領域の調査研究が一層増すと考えられる。

漁業、漁獲種、捕食者及び環境は、それぞれが密接に連結・均衡しており、この連結・均衡をシミュレーションすることで、生態系の動態を合理的に判断していくことができる。CCAMLRの条約理念は、単一漁獲種の資源管理のみでなく、その種とかかわりを持つ生態系全体の保護管理を謳っており、そのアプローチが取られている。この点が単一種の資源管理方策と異なるため、独特のアプローチとなり、実務・調査研究においても複雑度を増す。具体的なイメージで言えば、オキアミ資源を利用する漁業(16)と自然界のオキアミの捕食者との均衡をどう図っていくか。これに加えて、近年の環境変動をも考慮する必要がある。複雑な問題とはいえ、避けては通れないアプローチである。

16. 日本オキアミ漁船のトロール操業

 

執筆者

南極オキアミ・サブグループ

遠洋水産研究所 南大洋生物資源研究室

永延幹男

 

ナンキョクオキアミ資源の現況 (要約表)

資源水準

高位

資源動向

横ばい

世界の漁獲量

(最近5年間)

10.412.7万トン

平均:11.9万トン

我が国の漁獲量

2.36.7万トン

平均:4.7万トン

管理目標

予防的漁獲制限量(CPUEを減少させない・捕食者生態系の保存)

目標値

CCAMLR海区毎に漁獲制限量

48海区:400万トン

58.4.1海区:44万トン(東経115度以西27.7万トンと同度以東16.3万トンへ分割)

58.4.2海区:45万トン

資源の状態

主要漁場48海区の資源量4400万トンのうち漁獲制限量400万トンで、総漁獲量は11万トン。

管理措置

48海区では、過去最大漁獲量62万トンに達した場合に、4つの小海区へ制限量を分割する。

・漁獲制限量が設定されている58.4.158.4.2海区以外の他海区は、資源量未調査のため漁獲制限量は未定。

資源管理・

評価機関

CCAMLR

 

参考文献

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