スケトウダラ ベーリング公海

Walleye Pollock, Theragra chalcogramma

 

最近一年間の動き

対象資源を管理する中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約年次会議および科学技術委員会が20069月にポーランドワルシャワで開催された。この中で、20052006年に実施された調査結果やトライアルフィッシングの結果について検討がおこなわれたが、依然として資源は低水準であると判断され、これまでに引き続き漁業停止とすることとなった。

 

利用・用途

淡白な白身魚で、生鮮としても流通する。1960年代に北海道立水産試験場により冷凍スリミ製法が開発されたことにより、スリミ原魚としての需要が高まった。精巣はシラコ、卵巣はタラコとして利用される。

 

漁業の概要

ベーリング海は大陸棚44%、大陸棚斜面13%および海盆域43%で構成されている。広大な大陸棚よりなる東部ベーリング海は、タラ類、カレイ類、メヌケ類などの豊かな資源に恵まれ、世界有数の底魚漁場として知られている。ベーリング海での本格的な漁業は1950年代の中頃から始まり、1960年代後半からはスケトウダラを対象とした漁業が発達し、その生産量は1972年に頂点に達し、我が国漁業によるスケトウダラ年間漁獲量はおよそ160万トン、各国合計漁獲量は190万トンに迫った。1977年に東部大陸棚海域は米国200カイリ水域に組み込まれることとなり、以後我が国底魚漁業は米国から割り当てを受けつつ操業していたが、米国漁業の発展に伴い割当量は年々削減され、1988年には我が国漁業はベーリング海米国水域から撤退することとなった。近年は東部大陸棚海域の漁業資源は米国により管理されており、1980年代からこれまでの平均的なスケトウダラ資源量(3歳以上)はおよそ1,000万トン前後で、年間漁獲量は120万トン前後となっている。

米国水域での割り当てが削減されていく中で、1970年代後半に発見されたアリューシャン海盆中層域に生息するスケトウダラ資源を漁獲対象とした中層トロール漁業が開始され、日本のトロール船団はベーリング公海に集中するようになった(図1。公海でのスケトウダラ漁獲量は1985年から急増し、1989年には日本、韓国、ポーランドおよび中国の漁業により年間140万トンを越す漁獲量が得られた(表1)。しかしながら、1989年をピークに公海でのスケトウダラ漁獲量は激減し、わずか3年後の1992年には1万トンまで減少した。このような海盆スケトウダラの激減により、日本を含む漁業国は1993年からベーリング公海スケトウダラ漁業を自主的に停止することとなった。

1. アリューシャン海盆スケトウダラの分布域(赤)、産卵場(黄)および漁場(青)

 

1. ベーリング公海でのスケトウダラ国別漁獲量(千トン)

 

中国

日本

韓国

ポーランド

ロシア

総計

1985

2

164

82

116

0

363

1986

3

706

156

163

12

1040

1987

17

804

242

230

34

1326

1988

18

750

269

299

61

1397

1989

31

655

342

269

151

1448

1990

28

417

244

223

5

917

1991

17

140

78

55

3

293

1992

4

3

4

0

0

11

1993

0

0

0

1

0

1

1994年以降、資源量が激減したため、公海でのスケトウダラ漁業は停止されている

 

1995年には中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約が発効し、関係国が資源の回復状況をモニターしつつ漁業の再開を待っているが、2006年の調査でも、資源の回復傾向はみられていないことから、公海スケトウダラの漁業は停止された状態が続いている。また、米国・ロシア両水域内に分布する海盆中層性スケトウダラについても、公海での漁業停止を勘案した措置がとられている。

 

生物学的特性

アリューシャン海盆中層域に分布するスケトウダラの生物学的特性については197080年代の知見が1990年代初期に報告されている。それによると、中層性のスケトウダラは水深2,000 m以深の海盆域の100400 m深度帯に広く分布している(図2。それらは冬季に、海盆南東部のボゴスロフ諸島周辺海域の400500 m深度帯に産卵のため集群し、夏季に索餌のために海盆全域に分布を広げる。索餌期には橈脚類やオキアミ類を摂餌するが、摂餌量は隣接する大陸棚に比べると少なく、海盆スケトウダラ成魚の成長が遅い原因となっている(Mito et al. 1999)。海盆には4歳以下の未成魚および幼魚がみられず、資源は5歳以上の成魚からのみ構成されている。このことは周辺の大陸棚海域で幼魚期、未成魚期を過ごしたものが、成熟に伴って海盆域に移動することを示唆している。幼魚期には海鳥、魚類、海産哺乳類等により、また成魚期には海産哺乳類等により捕食されると考えられている。

2. アリューシャン海盆の中層性スケトウダラの分布域(緑)と想定される回遊経路略図(成魚が大陸棚から海盆に移入してくるメカニズムについてはわかっていない)

 

一般にこの海域での寿命は1015歳程度と考えられるが、年齢査定の結果からは28歳と推定される個体もみられている。また、資源が開発された1980年代中頃は1978年級が非常に強勢であったが、1990年代中頃になると1978年級が消滅し、その後これに匹敵するような大きな年級は海盆域に出現していない。ベーリング海には東部大陸棚、西部大陸棚及びアリューシャン海盆の3海域にそれぞれ系群が存在するとする仮説があるが、遺伝学的手法による判別は可能とはなっていない。

日米を中心とした共同調査から、成長、産卵場、産卵期などの生物学的な特性に年代間で大きな変化がみられている。特に成長にみられる年級間変異は著しく、近年魚体の大型化が目立っているが(3; Nishimura et al. 2001)、1980年代以降の資源量の減少過程は、表面水温の温暖化傾向や、海氷域の縮小等の海洋環境の変化に伴ってみられており、本種の生物学的特性の変化が単に資源減少に伴った密度効果によるものなのか、あるいは海洋の環境変化の影響も受けたものなのかは明らかではない。

3. アリューシャン海盆スケトウダラ()にみられる年齢・体長関係の経年変化

 

資源状態

【資源量調査の経過および結果】アリューシャン海盆の中層域にスケトウダラが分布することはさけ・ます流し網にスケトウダラが混獲されたことから知られており、1970年代後半には中層トロールを使用した調査が遠洋水産研究所により実施されていた(岡田 1986)。1980年代に入り、ベーリング公海での中層性スケトウダラを対象とした漁業が発展する中で、その現存量を音響と中層トロールを併用して捕捉する調査が開始された。水産工学研究所の協力を得て、計量魚群探知機の開発が行われ、これを用いた調査船調査が1988年以降継続して実施された。この間、ベーリング海のスケトウダラ資源を対象としてハード・ソフト両面での解析手法の高度化がなされてきた(高尾  1994)。1980年代後半から1990年代前半にかけて、我が国は複数年にわたり調査船を派遣し、アリューシャン海盆域における音響/中層トロール調査を実施、1991年夏季には海盆の調査海域(494,812km2)における中層性スケトウダラの現存量をおよそ77万トンと推定した(澤田ほか 1993)。しかしながら、調査海域にロシアEEZが含まれていなかったため、アリューシャン海盆全域に分布する資源量を把握するには至らなかった。

広大なアリューシャン海盆全域を一隻の調査船で調査し、精確な資源量推定値を得ることは困難であることから、中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約では冬季に産卵親魚が集群するアリューシャン海盆南東部のボゴスロフ諸島周辺を特定水域として規定し、この現存量をもって海盆全域のスケトウダラ資源量の指標とすることとした。冬季開洋丸調査は1980年代に開始され、2002年までの間、3年おきに実施されてきたが、1990年代に入ると公海漁獲量の減少に伴って海盆の中層性スケトウダラの分布域も縮小していった結果が示されている(Yanagimoto and Nishimura 2002)。1993年の冬季開洋丸調査では、ロシアEEZも含めて海盆全域に調査定線を広げたが、スケトウダラの群れは産卵場とされる海盆南東部ボゴスロフ水域にみられたのみで、北海道区水産研究所が実施した1999年と2002年の調査ではこの水域の現存量は20万トン前後と推定された(Nishimura et al. 20022、図4)

2. 条約特定水域における米国(ミラーフリーマン号)および

日本(開洋丸)の現存量推定値と公海漁獲量 (単位:百万トン)

 

米国調査

日本調査

公海漁獲量

1985

 

 

0.363

1986

 

 

1.040

1987

 

 

1.326

1988

2.396

 

1.397

1989

2.084

 

1.448

1990

 

 

0.917

1991

1.283

 

0.293

1992

0.888

 

0.011

1993

0.631

0.500

0.001

1994

0.490

 

 

1995

1.020

 

 

1996

0.582

0.375

 

1997

0.342

 

 

1998

0.432

 

 

1999

 

0.393

 

2000

0.270

 

 

2001

0.208

 

 

2002

0.227

0.180

 

2003

0.198

 

 

2004

 

 

 

2005

0.253

 

 

2006

0.240

 

 

 

4条約特定水域における日米調査船調査による中層性スケトウダラの現存量(親魚量)推定値

 

1988年以降、米国(アラスカ漁業科学センター)は我が国と連携し、音響/中層トロール調査手法を発展させ、特定水域および隣接する東部大陸棚海域において独自のアリューシャン海盆の産卵場調査を調査船ミラーフリーマンにより継続的に実施しており、条約科学技術委員会ではこの調査による特定水域の現存量推定値が海盆スケトウダラの資源状態を最も良く指標しているものとして扱っている。ミラーフリーマンの特定水域周辺調査により、1989年には240万トンの現存量推定値が得られたが、その後1992年には100万トン以下に減少し、1990年代後半には50万トンを下回る推定値となった。2002 (Honkalehto et al. 2002)2005年および2006年の米国調査結果による特定水域の現存量は、25万トン前後とされている(表2)。

1994年夏季にはベーリング海全域を対象とした調査が企画され、東部および西部の大陸棚海域を米国調査船(米ロ共同調査)が、海盆南東部から公海域を韓国調査船が、海盆南部とカムチャッカ海盆を含むロシアEEZの一部を我が国調査船(日ロ共同調査)が調査したが、大きな魚群は大陸棚上と特定水域周辺にみられたのみで、公海を中心とする海盆域では魚群の分布はみられなかった。また、近年実施されているトライアルフィッシングによっても、漁業を支えるに足るスケトウダラ資源は公海域にはみられていない。

 

【資源評価】中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約においてベーリング公海スケトウダラ資源の評価と管理措置が検討されている。ベーリング公海に分布する中層性スケトウダラは、これまでの調査研究結果から、夏季に海盆で広く摂餌を行い、冬季に海盆南東部の特定水域に産卵のために集群すると考えられている。したがって、アリューシャン海盆に広く分布する魚群を一つの単位として資源評価および管理措置の検討が行われている。米ロ沿岸国と中国、日本、韓国、およびポーランドの漁業国が参集して1991年から1995年に3度にわたってシアトルにおいてスケトウダラ資源評価作業部会が開催された。回遊率を取り入れた年齢構造モデルが基本モデルとして採用され、実態が不明ないくつかの基本パラメータについては複数のケースを想定することで解析が行われた。その結果によると、海盆の資源量は19851986年にピークとなり、700万トンを越す資源量が見積もられたが、1990年代に入ると資源量は100万トン以下に激減した (水戸 1995)。海盆に出現する魚は成魚のみであり、これらが幼魚期にどこにいるのか、どの時点で、どこから海盆に移入してくるのか、周辺の大陸棚資源との関係はどうなっているのか、これらの点は不明確であり、モデルの精度を上げるためには、これらのパラメータについて正確な値を得るような調査研究が必要とされている。

1995年に条約が発効して以来、毎年開催されている科学技術委員会および年次会議では、特定水域に産卵のために集群した現存量を捕捉し、条約附属書の規定に従って、ここに全海盆資源の60%が集中すると仮定して議論が進められてきた。1988年の特定水域で観察された240万トンを海盆全域に引き伸ばすと400万トンの資源量が推定されるのに対して、2006年の米国調査結果では、条約特定水域に分布した24万トンを引き伸ばして得られる海盆全域資源量は40万トンと推定され、1980年代後半の1/10の資源量水準に落ち込んでいる。

【加入動向 アリューシャン海盆の中層性スケトウダラの特徴として、4歳以下の未成魚および幼魚がみられないということがあげられる。このことは、この資源が未成魚期まで大陸棚海域にいて、その後、成熟に伴って5歳、6歳となり海盆に加入することを示唆している。特定水域における米国調査から得られた、年齢別現存量の経年変化から、7歳魚の加入尾数が計算された(西村 1999)。その結果、1970年代後半の年級の加入尾数は1020億尾と推定され、特に1978年級については40億尾近い加入がみられたが、1980年代以降急激に減少し13億尾となり、1970年代に比べて1/10以下の低い水準が続いている(図51978年級の加入量が特に大きかった背景には、この年級群が東部大陸棚から海盆域に分布を広げたことが上げられる。近年においては1989年級が東部大陸棚では1978年級に次ぐ大きな豊度であるが、この年級の海盆域への加入量は決して大きなものではなく、1990年代の海盆スケトウダラ資源水準を底上げするにはいたっていない。このことから、海盆への加入のメカニズムは単に東部大陸棚の年級豊度のみにより影響されるような単純なものとは考えにくい。気象・海象の大きな変化、あるいはこれに起因する海盆スケトウダラの分布や回遊の変化が加入量の変化に影響していると考えられる。

5条約特定水域で米国調査により捕捉された7歳魚加入尾数(1988年以前の加入尾数は生残率から逆算された推定値を使用)

 

1990年代後半から2000年代前半までは東部大陸棚の資源量は、1992年級、1996年級および2000年級の加入量が大きかったことから、1,000万トンを越す資源量(3歳以上)が推定されていた。この資源量は、1978年級が大陸棚上に分布していた1980年代半ばの資源量に匹敵するものであるが、2002年及び2003年の特定水域における日米の調査結果では、1996年級と思われる魚(体長45 cm前後)の加入は少なく、隣接する海盆海域の資源量を底上げするほどのものとはならなかった(Honkalehto et al. 2002Nishimura et al. 2002McKelvey and Williamson 2003)。東部大陸棚上では2001年以降の加入水準が低位であることから、2005年の以降の資源量は減少傾向を示しており、2006年の資源量はおよそ800万トンと推定されている(Ianelli et al. 2005)。

 

【資源水準・動向】海盆スケトウダラの資源水準は特定水域現存量を指標として判断されている。前記のとおり、1980年代後半に200万トンを越した特定水域現存量は、1990年代に入り急減し、近年は50万トンを下回り、2006年の米国調査結果では24万トンと、低い水準に落ち込んでいる。隣接する東部大陸棚では、2000年級が強勢であることが知られているが、この年級が海盆スケトウダラの資源水準を底上げしている兆候はみられず、動向は横ばいと判断される。

 

資源管理方策

【管理目標及び手段】ベーリング公海のスケトウダラの資源管理は、米国、ロシアの両沿岸国と日本、中国、韓国、及びポーランドの漁業国が加盟している中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約において管理される。特定水域の調査結果から海盆スケトウダラのABCを決定し、加盟国が合意した漁獲可能水準(AHL)が得られる場合にはこれを採用する。しかしながら合意に至らない場合、ベーリング公海において漁業を再開するためには、海盆スケトウダラの資源量が1990年代初頭の水準に達することが必要であるとの考え方から、海盆スケトウダラの資源量が167万トンを超えないことには漁業を再開することができない。特定水域に60%が集中するとされていることから、特定水域に100万トンのスケトウダラが分布すると推定される必要がある。その場合AHLは条約附属書の規定により、100万トン以上200万トン未満では13万トン、200万トン以上250万トン未満では19万トン、250万トン以上ではコンセンサスにより決定するとされている。

 

【資源量予測、管理基準及びABC算定】1995年に中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約が発効して以来、沿岸国は一貫して低水準の資源に対するAHLの設定を拒みつづけてきた。しかしながら、我が国を始めとする漁業国は、どのように低水準な資源に対しても科学的に根拠のあるABCを設定することは可能であり、それが条約科学技術委員会の努めであると主張してきた。

ベーリング公海スケトウダラ資源に対して利用可能な情報は、条約特定水域の現存量のみである。特定水域の現存量と自然死亡係数をM=0.2として、翌年の現存量を推定し、米国漁業規則(Witherell 1997)を適用することで、特定水域で確認された現存量に対するABCの算定が可能である。2003年の条約会議において、我が国は、低い資源水準を考慮して、最小のABC推定値が出力される米国漁業規則Tier 3を用いて計算することを提案し、加盟国からの合意が得られ、ABCが設定されることとなった。

Tier3においてB40%は平均的な加入が維持される中で加入乱獲の閾値をF40%とした状況で達成される資源量とされ、米国資源評価機関によりアリューシャン海盆−ボゴスロフ海域のスケトウダラ資源に対してはB40%およびF40%はそれぞれ200万トン、0.27とされている。米国からこれらの値を使用した場合、安全率を0.05として2006年のABCを算出することが提案され、FABC0.0199、これより特定水域におけるABC4,447トンと提示された。

FABC =F40% ´ (B2006 /B40%0.05)/(10.05)

 特定水域には海盆全域の60%が集群しているとする条約の考え方に従うと、2006年の海盆スケトウダラに対するABC7,412トンとして推定される。しかしながら、2006年の条約科学技術委員会においてはこの60%とする仮定に対して、資源の現状を考えると科学的根拠が問題であるとされ、特定の数値としてABCを設定することには合意が得られなかった。

条約発効後、現在に至るまで、沿岸国は資源が低水準にあることからAHLの設定には一貫して反対し続けている。これに対して、漁業国は例え少量でも象徴的なAHLの設定を認めるよう働きかけているが、AHL設定の合意は得られていない。合意が得られない場合、海盆資源量が167万トン(特定水域現存量100万トン)以下の場合は自動的にAHL0となることから(条約附属書の規定)、条約発効後漁業は停止された状態が続いている。

 

【管理効果の評価】アリューシャン海盆に分布する中層性スケトウダラ漁業は、1993年から停止されており、沿岸国においても1995年以降同様の措置がとられている。1993年以降すでに10年以上が経過しており、漁業停止という最も厳しい管理措置を講じているにもかかわらず、スケトウダラ資源に回復の兆候がみられていない。そのため、条約会議においては漁業国からこの管理措置に対しての不信感が生まれつつある。しかしながら、沿岸国としては漁業を停止していることが資源の育成に効果があると主張しており、特にロシアは禁漁措置が北西ベーリング(ナバリン海域)の資源回復に良い影響を与えていると考えている。

海盆域への加入量の経年的な変動をみると、1970年代に多かった7歳の加入尾数が1980年以降激減していることが明らかになりつつあり、このことが資源が低水準であることの大きな要因として認識されつつある。近年、ベーリング海においても、気象および海洋系の変化がその生態系の変革をもたらしていることが明らかになりつつある(Grebmeier et al. 2006)。海盆域のスケトウダラの加入量が決定される過程については不明ではあるが、このような地球規模の変化が資源構造や回遊経路に影響を及ぼして、このような年代による加入量変動の原因となっていることが考えられる。

 

【管理上の提言】漁獲物や過去の調査結果で示されているように、1980年代の豊漁は、歴史的に強勢な1978年級と、これを含む1970年代に発生した複数の比較的強勢な年級が貢献している。また、これらの年級が海盆域に加入してきた1980年代初頭には、これらの資源が周辺の大陸棚海域あるいはアリューシャン列島周辺から海盆に加入しやすい環境にあったものと考えられる。これに対して、近年は、海盆域への成熟に伴う魚の加入が抑制された状況が続いており、資源は低水準で、将来の動向については予測ができない。隣接する大陸棚上の米ロEEZ内資源との交流が考えられることから、これはストラドリング資源として扱われるべきで、その視点から沿岸国EEZ内の資源との関連を詳細に検討し、適切な管理方策の探索を継続していく必要がある。

 

執筆者

 北西太平洋グループ 北西底魚サブグループ

北海道区水産研究所 上席研究員

西村 明

 

スケトウダラ(ベーリング公海)の資源の現況(要約表)

資源水準

低位

資源動向

横ばい

世界の漁獲量

(最近5)

0(漁業停止)

我が国の漁獲量 

(2001年以降)

0(漁業停止)

管理目標

条約附属書に規定された親魚量に回復

167万トン(1990年代初頭の資源水準)

資源の状態

SSB2005年) 40万トン(24%)

管理措置

漁業停止

資源管理・評価機関

中央ベーリング海スケトウダラ保存管理条約(CCBSP

 

参考文献

Grebmeier, J.M., J.E. Overland, S.E. Moorem, E.V. Farley, E.C. Carmack, L.W. Cooper, K.E. Frey, J.H.Helle, F.A. McLaughlin, and S.L. McNutt. 2006.  A major ecosystem shift in the northern Bering Sea.  Science, 311: 1461-1464.

Honkalehto, T., N. Williamson, D. Hanson, D. McKelvey, & S. de Blois. 2002.  Results of the echo integration-trawl survey of walleye pollock (Theragra chalcogramma) conducted on the southeastern Bering Sea shelf and in the southeastern Aleutian Basin near Bogoslof Island in February and March 2002.  7回中央ベーリング海スケトウダラ条約年次会議米国提出文書.  49 pp.

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