イワシクジラ

(北西太平洋、Sei Whale Balaenoptera borealis

1. 浮上直後のイワシクジラ

 

最近一年間の動き

2006年に開催された第58回国際捕鯨委員会(IWC)で、将来的に本系統の詳細解析を優先課題とすることが合意された。

 

利用・用途

鯨肉は、刺身、大和煮(缶詰)、鯨かつ、鍋物材料として利用されている。内蔵は、ゆで物として食される。ヒゲ板は工芸品の材料として利用されている。鯨油はかつて工業原料などに用いられた。

 

漁業の概要

本種の捕獲は、1890年代末に基地式の近代捕鯨によって開始された。その後、1940年には母船式捕鯨が開始され本種も捕獲された。日本では1911年から捕鯨統計が整備されたが、イワシクジラとニタリクジラが分類されず、それが公式に判別されるようになった1954年までは統計上全てイワシクジラとして記録された。北太平洋では日本の他に、旧ソ連、米国並びにカナダが本種の捕獲を行った。

2. イワシクジラの漁獲量の推移(全北太平洋)

 

 1910年代から年間500頭の捕獲が1955年までほぼ一定して継続したが、1967年から捕獲が急激に伸び、1968年には6,000頭を越える捕獲をあげた。1968年以後日米加ソ四カ国による「北太平洋捕鯨規則」によって捕獲割当量が定められるようになり、1970年からIWCの条約付表に北太平洋産鯨類の捕獲枠が明示されるようになった。その後IWCの規制が厳しくなり、1976年から北太平洋全域で捕獲が禁止されている。商業捕鯨以外では国際捕鯨条約第8条に基づく北太平洋鯨類捕獲調査(JARPNU)により2004年から100頭を上限に(2002年〜2003年は50頭上限)捕獲されている。

 

生物学的特性

本種はナガスクジラ科ではナガスクジラについで3番目に大きく、北半球産で雄14.0 m、雌14.8 mに達し、体重は雄15.9トン、雌17.8トンである(Masaki 1976 Horwood 1987)

 記録された最高年齢は60歳である。性成熟年齢は、1925年に10歳であったものが1960年には7歳と報告されている。出産時期は、11月とされ、出産海域は亜熱帯・温帯の外洋海域と想定される。

3. イワシクジラの分布域()

 

 本種はさまざまな種類の餌生物を捕食し、知られているものとして魚類(カタクチイワシ、マイワシ、キュウリエソ、サンマ、マサバ、ハダカイワシ類など)、イカ類(スルメイカ、テカギイカなど)、動物プランクトン(オキアミ、カイアシ類)がある(根本 1962)。

 本種を捕食する可能性があるものとしてはシャチがあるほか、繁殖場ではサメ類が仔鯨を襲う可能性もある。

 

資源状態

1975年のIWCで本系統について初めて資源評価が行われた。手法はCPUEと発見率指数(目視調査)を統合したDe Lury法であった(Ohsumi and Wada 1974Tillman 1977)。資源評価の結果、初期資源量は42,000頭、1975年時点の資源量は9,000頭であるとされ、当時の管理方式ではMSYレベル(23,000)40%のため保護資源と分類された。それにより、1976年度から北太平洋全域で本種の捕獲が禁止され現在に至っている。日本の目視調査の結果では1980年代始めから1990年代中頃にかけて北西太平洋海域で増加傾向が見られ、資源が回復しつつあるものと思われる(藤瀬ほか 2004)。

 しかしながら1975年以降、本系統に関する資源評価は行われていない。なお、2002年と2003年の調査捕獲時の目視調査に基づき本種の資源量推定が行われ、調査海域内で4,100(CV = 0.281)、非調査海域へ過去の目視調査結果から引き延ばし北西太平洋で68,000(CV= 0.418)と推定された(Hakamada et al. 2004)。

 

管理方策

IWCでは資源状態にかかわらずすべての商業捕獲が休止状態にある。我が国は2002年から捕獲調査を実施する一方、本種を対象とした目視調査を実施しつつあり、それらを用いて資源解析を行う必要がある。

 

執筆者

 鯨類グループ・鯨類目視サブグループ

 遠洋水産研究所・鯨類管理研究室

 宮下富夫

 

イワシクジラ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準

(おそらく)高位

資源動向

増加

世界の漁獲量(最近5年)

0 (日本を除く)

我が国の漁獲量(最近5年)

調査捕獲により年間39100頭(2002年以降)

管理目標

初期資源の62%

資源の状態

西部北太平洋では目視調査により増加傾向判明

管理措置

捕獲は科学調査を目的としたもののみ、商業捕鯨は休止中

管理機関・関係機関

IWC

 

参考文献

藤瀬良弘・田村 力・板東武治・小西健志・安永玄太. 2004.  イワシクジラとニタリクジラ.  鯨研叢書 No.11. 日本鯨類研究所, 東京.  168 pp.

Hakamada, T., Matsuoka, K. and Nishiwaki, S. 2004.  Increase trend and abundance estimate of sei whales in the western North Pacific.  Document SC/56/O19 submitted to 55th IWC.  9 pp.

Horwood, J. 1987. The sei whale: population biology, ecology and management.  Croom Helm, New York. 375 pp.

Masaki, Y. 1976. Biological studies on the North Pacific sei whales.  Bull. Far Seas Fish. Res. Lab., 14: 1-104.

根本敬久. 1962.  ひげ鯨類の餌料.  鯨研叢書 No.4. 日本鯨類研究所, 東京.  136 pp.

Ohsumi, S. and Wada, S. 1974.  Status of whale stocks in the North Pacific, 1972.  Rep. Int. Whal. Commn., 24: 114-126.

Tillman, M.F. 1977.  Estimates of population size for the North Pacific sei whales.  Rep. Int. Whal. Commn., (Sp. Is.) 1: 98-106.