サメ類の漁業と資源調査(総説)


世界のサメ漁業

FAO漁獲統計資料で見ると世界のサメ・エイ類漁獲量は1940年代の20万トン台から、1996年以降の80万トン台まで、ほぼ右肩上がりに増加している。これに対し、わが国のサメ・エイ類の漁獲量は、1940年代に10万トンを超す漁獲があったが、以降連続して減少し、2004年の漁獲は27千トンであり、サメ・エイ類に対する需要の減少により漁獲は減少している(1)。


1. 世界のサメ・エイ類漁獲量(19472004年)(FAO 2006)

 


 FAOの漁獲統計から1990年から2004年までのサメ類主要漁業国の漁獲量を表1にとりまとめた。近年はアジアの国々がサメ類の漁獲量を増やし、インドネシアが712万トン、インドが513万トン、台湾が48万トン、パキスタンが45万トンの範囲で推移している。アジア以外では、スペイン、メキシコ、米国がこれについで、スペインが1万〜10万トン、メキシコが34万トン、米国が35万トンである。日本の近年の漁獲量は23万トン台で推移している。(2


 

1. 世界のサメ主要漁業国の1990年から2003年の間のサメ・エイ類漁獲量 (単位:千トン) (FAO 2006)

 

インドネシア

インド

台湾

パキスタン

スペイン

メキシコ

米国

日本

その他

合計

1990

73

51

76

40

14

45

35

32

326

692

1991

77

56

69

45

15

41

36

33

342

714

1992

80

60

65

46

10

43

54

38

332

728

1993

87

77

56

46

12

44

38

39

344

743

1994

93

84

39

50

21

43

38

34

355

757

1995

98

77

44

50

24

43

38

31

357

762

1996

94

132

41

51

19

45

52

24

355

813

1997

96

72

40

48

99

36

40

29

386

846

1998

111

75

40

54

67

37

45

34

371

834

1999

108

77

43

55

67

35

38

33

401

857

2000

114

76

46

51

82

35

31

32

403

870

2001

119

73

42

49

69

33

22

28

407

842

2002

115

67

44

50

63

30

24

28

418

839

2003

121

63

69

33

62

31

35

25

418

857

2004

122

61

44

27

51

32

31

27

415

810

 

2. 日本の漁業種類別サメ類漁獲量 (農林省統計(情報)部 1988-2005

 


日本のサメ漁業

日本のサメ・エイ類漁獲量は1950年代には7万トンを超えていたが、年々減少し、近年は23万トンで推移している。これは主に底曳き網漁業を中心とする底生性のサメ・エイ類の水揚げ量の減少が原因であるが、はえ縄漁業による外洋性サメ類の漁獲量も漸減し、1980年代の2万トン台から1990年代の1.52万トン台へと減少している。はえ縄のサメ類水揚げに占める割合は7187%であった。日本の種別漁獲量は、3のとおり。ヨシキリザメは、まぐろはえ縄漁業によって数多く混獲されている。日本国内では市場価値が低く、近海漁場を除き海中に投棄されることが多かったが、近年、海外市場で食料としての商品価値が出てきたことから、海外主要港での水揚げが増えてきた。ヨシキリザメの水揚量は、19922005年において10,00016,000トンで、外洋性サメ類のなかで占める割合は7080%であった。


3. 外洋性サメ類の種別水揚げ量 (水産庁・水産総合研究センター 1993-2006)

 


アオザメは肉質が良いので商品価値が高く、遠洋はえ縄船も持ち帰る場合が多い。アオザメの漁獲量は、1992年〜2005年において8001,500トンで、外洋性のサメ類漁獲量の中で占める割合は58%であった。

ネズミザメはその多くが宮城県気仙沼を中心とした東北地方に水揚げされている。肉質が良好で商品価値が高く、肉、鰭や皮が食用や工芸用に利用されている。1992年〜2005年のネズミザメの漁獲量は、はえ縄と流し網漁業の合計で1,4004,400トンで、外洋性サメ類の漁獲量に占める割合は822%であった。

その他の外洋性のサメ類(ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレ、ミズワニ)のうちミズワニは鰭も含めて、まったく商業的には利用されていない。これらの漁獲量は、1992年〜2005年の調査で、ヨゴレが285トン、ハチワレを含むオナガザメ類は250700トン、クロトガリザメは分類されていないので不明であるが、メジロザメ類をそれと考えると、3130トンと考えられる(水産庁・水総研1994-2006)。

 ジンベイザメ、ウバザメ、ホホジロザメの大型ザメ3種に関しては1960年代にウバザメを対象とした突きん棒が存在したが、現在これらの種を対象とした漁業はない。

資源管理

外洋性サメ類を主に漁獲するわが国のはえ縄漁業の努力量は近年減少傾向にある(4)。しかしながら、漁業国全体の努力量の増減を見ると、太平洋全体では増加傾向にあり、最近の伸びが著しいことがわかる(5)。


4. 日本のはえ縄漁獲努力量の経年変化 (遠洋水産研究所内部資料)

 

5. 太平洋における延縄漁獲努力量の経年変化 (SPC)

太平洋共同体事務局(SPC):http://www.spc.int/OceanFish/Html/Statistics/index.htm#Public

 


つまり日本が努力量を減らしても、その他の国が漁獲努力量を増やしており、全体としては漁獲努力量は増加し、外洋性サメ類にかかる漁獲圧も増加する傾向にある。現在のところ、まぐろ漁業に関する国際漁業管理機関でサメ類資源管理のための漁獲規制などは実施されていないが、資源評価の結果によっては、将来的にサメ類保護のための漁獲規制などが実施される可能性もある。またFAOによるサメ類の保護と管理のための行動計画策定の呼びかけに応じて、わが国では「サメ類資源の保護と管理のための国内行動計画」を策定した。この枠組みのなかで国内サメ資源に関して、資源状態を監視する仕組みを設置し、必要ならば資源の保護と管理のための施策の実施を「サメ類資源の保護と管理のための国内行動計画」策定委員会が水産庁に勧告するようになっている。

 

現在・将来の問題点

Ø                  サメ類の資源管理は比較的新しく生じた問題なので、研究・行政など国内の対応組織、機関等が整っていない。

Ø                  まぐろ・かじき類などと違い、資源評価に使用できる長期にわたる漁獲統計資料がない。

Ø                  種類数が多いので、漁船から漁獲統計資料を収集する場合、種の誤査定が生じている可能性がある。

Ø                  外洋性サメ類は高度回遊性資源なので、資源解析には関係漁業国の協力が不可欠である。

Ø                  大型サメ類を対象とする漁業はなく、定置網に偶発的に迷入する程度であるので、定置網の混獲情報を組織的に収集するシステムを早急に確立する必要がある。

 

執筆者

 水産庁 増殖推進部 研究指導課

 中野秀樹

 まぐろ・かつおグループ

 混獲生物サブグループ

 遠洋水産研究所 混獲生物研究室

松永浩昌

 

参考文献

独立行政法人水産総合研究センター ().  2002-2006.  平成13年度-平成17年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書.  独立行政法人水産総合研究センター, 横浜.

遠洋水産研究所().  2002-2005.  平成13-16年度国際資源調査等推進対策事業 混獲生物グループ報告書.  遠洋水産研究所, 静岡.

FAO Fishery Information, Data and Statistics Unit. 2006. Total production 1950-2004. FISHSTAT Plus - Universal software for fishery statistical time series [online or CD-ROM]. Food and Agriculture Organization of the United Nations. http://www.fao.org/fi/statist/FISOFT/FISHPLUS.asp 2006119日)

農林水産省統計情報部. 1986-2003.  昭和61年−平成13 漁業・養殖業生産統計年報.  農林統計協会, 東京.

農林水産省統計部. 2004.  平成14 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額).  農林統計協会, 東京.  (8) +364 + (10) pp.

農林水産省統計部. 2005.  平成15 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額).  農林水産省大臣官房統計部, 東京.  (8) +272 + (10) pp.

水産庁 (). 1993-1997.  平成4年度-平成8年度 日本周辺クロマグロ調査委託事業報告書.  水産庁, 東京.

水産庁 (). 1998-2001.  平成9年度-平成12年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. (まぐろ類等漁獲実態調査結果).  水産庁, 東京.