カツオ インド洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis

最近一年間の動き

2004年の総漁獲量は53.1万トンとなり、最近5年間の平均とほぼ同様であった。資源状態に関しては、カツオ(インド洋)の資源量推定が行われたことが無く、2003年のIOTC熱帯まぐろ作業部会において資源的に問題があるとは判定できないとされて以来、本年においても新たな動きは見られなかった。

 

利用・用途

缶詰、かつお節、乾燥品などの加工品の原料として利用される。

 

漁業の概要

インド洋でのカツオ漁獲量は、1950年から1982年(西インド洋でのまき網漁業が本格化する以前)までは最大6万トン程度であった。1983年から漁獲量は急増し10万トンを超え、1992年には30万トンを、1994年には40万トンを、さらに2000年には50万トンを超えた。その後もほぼ50万トンを超える漁獲が続き、IOTC科学委員会の報告書に掲載されたデータによれば2002年には56.3万トンの過去最大漁獲量を記録した。最近5年間(20002004年)の平均漁獲量は、52.9万トンである。最近年の漁業国としては、モルディブとインドネシアが10万トンを超え、次いでスペイン、イランが6万トン台、さらにフランス、スリランカ、セイシェルが3万トン台を漁獲している(図1付表1)。

1. インド洋におけるカツオの国別漁獲量(19502004年)(データ:Anon. 2006

 

最近の漁獲のうち約4割がEU(スペイン・フランス)とセイシェルを中心としたまき網漁業、約3割を流し網(主にインドネシア、イラン、スリランカ)、約2割をモルディブなどの竿釣りが漁獲している(2)。全漁業種の漁獲量が増加する傾向にあるが、そのうち特にまき網漁業の漁獲増大の比率が高く、FADsの利用拡大によるところが大きい。現在ではまき網による漁獲のうち80%FADsでの操業によるものである。

2. インド洋における漁法別カツオ漁獲量(19502004年)(データ:Anon. 2006

 

インド洋における日本のカツオ漁獲は、その殆どがまき網漁業によるものである。日本のまき網操業は、1978年からの海洋水産資源開発センター(現在:水産総合研究センター開発調査センター)による試験操業に始まり、民間船は19892001年に操業を行なった。漁獲量は19921993年には3万トンを超えてピークに達したが、その後減少し2004年は試験操業船による1,500トンとなっている。

 

生物学的特性

Matsumoto et al. 1984Stéquert and Marsac 1986Adam 1999等による。)カツオは3大洋すべての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する。インド洋では40°S以北に分布するが、紅海・ペルシャ湾には見られない(3)。インド洋のカツオ資源は他2大洋とは別系群と考えられている。

3. インド洋におけるカツオ分布、繁殖域、および漁場

 

インド洋のカツオの成長研究は確実な年齢形質が確認されておらず、標識魚の放流・再捕データを使っても生活史の限定的な期間における成長を推定するに留まっている。体長組成解析からは満1歳で30 cm台、満2歳で50 cm台、満3歳で60 cm台に達する成長パターンが示されている。体長体重関係は、尾叉長50 cmで概ね2.5 kgとされる。寿命に関して言及されてはいないが6歳以上には達するであろう。

成熟は尾叉長3943 cmで開始し、産卵は表面水温24℃以上の水域で広く行われ、仔魚は3036° Sから1115° Nまで出現する。産卵期は海域によりピークが見られるが、周年と考えられる。

餌は魚類・いか類・甲殻類で、カツオ成魚の捕食者はさめ・かじき類が挙げられている。また、未成魚以下の成長段階における捕食者は、他大洋と同様、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他大型の魚食性魚類や海獣、海鳥であろう。

 

資源状態

インド洋のカツオ漁獲の半分近くを占めるまき網による漁獲量変動はエル・ニーニョの影響を受けることや、カツオに対する漁獲努力の変動もキハダ等の漁況の好・不調と関連することなど、本資源には多くの評価計算し難い要因がある。このことから、現在のところインド洋のカツオ資源についてはいわゆる資源計算は行われておらず、漁獲物サイズとCPUEの動向が資源状態の判断材料とされている(Anon. 2003)。

インド洋で漁獲されるカツオの平均サイズ(まき網で2.7 kg、モルディブの竿釣りで3.0 kg)は他の大洋より大きいものの、最近のまき網漁獲物サイズが小さくなっている海域もある(4)。

4.まき網(モザンビーク海峡(青)、ソマリア(ピンク)、セイシェル西部沖(オレンジ))とモルディブの竿釣り(黒)で漁獲されたカツオの平均体重の経年変化 (Anon. 2003)

 

モルディブの竿釣り漁業は、1970年代から現在までの間に漁船の動力化が行われ(1974年に始まり1985年頃までに全船が導入)、それ以降漁船の大型化などの変化があった。これを考慮し機械的に補正したCPUEは近年増加傾向を示している(5)。

5.モルディブ竿釣りの漁獲努力量、漁獲能力向上を補正した努力量とそれによるCPUEの経年変化 19702002年)(Anon. 2003)

 

インド洋における日本のまき網船データのCPUE解析では、船齢が若く高度な機器を搭載した船が必ずしも高い漁獲効率を示すわけではないことが示された。日本のまき網漁業が多くの年・海域をカバーしているわけではないが、これらの船間格差を標準化したCPUEは、操業1日あたり漁獲量では増加傾向を示したものの、1操業あたりの漁獲量では減少傾向が見られた。

様々な海域におけるまき網のCPUEは、モザンビーク海峡を除き増加傾向にある(6)。

6.まき網の漁獲量とCPUE(上:ソマリア沖、中:セイシェル西部沖、下:モザンビーク海峡)

19802002年)(Anon. 2003、改変)

 

 漁業情報の不確実性が大きいために精度の高い資源評価を行うことはできないが、漁獲量の推移やCPUE・漁獲物平均体重の経年変化を総合的に見る限り、資源的に問題があるとは判定できない。近年の資源水準及び動向は、漁獲量および漁獲努力量の推移を判断材料にした。

 

管理方策

インド洋のカツオはIOTCによって管理されるが、管理策をすぐに考えなければならない状況にはないと結論付けられている(Anon. 2004)。

 しかしながら、カツオ漁獲の増加率(1980年から年間17千トン平均で増加)が継続し、さらに、東部大西洋においてはFADs利用等の操業方法の変化により狭い範囲に漁獲が集中し、漁獲物体長組成の小型化および漁獲の減少傾向に見られる地域的な乱獲の可能性が生じていることから、インド洋でも予防的な監視を行う必要がある。また、漁獲量の問題とは別に、モルディブの近年の流し網や竿釣り等におけるサイズデータの不備、まき網漁業と伝統的漁業の競合、まき網漁業によるFADsの利用拡大によるカツオ生態への影響が問題視されており、まき網およびモルディブの漁業データの包括的整理、各々の漁業におけるサイズ別漁獲量・CPUEデータの解析、FADsに集まるカツオの生態や資源との関連性等の調査が必要である。

 なお、2003IOTC年次会議で初めて本海域に保存管理措置、全長24 m以上の漁船の総隻数等の制限が導入された。また、IOTCにて実施されたメバチの資源評価では、現在のまき網FADs操業の漁獲圧でさえメバチ資源に悪影響を及ぼすことが懸念されており、まき網の規制が議論されている。しかしながら、これらのまき網はカツオを主として漁獲していることから、まき網の規制が実施されれば、資源状態が健全と考えられているカツオの漁獲をむしろ減少させることに繋がるといった懸念がある。以上のことから、カツオに関する直接的な規制が実施される可能性は低いものの、他魚種の資源評価を反映した漁業の規制がカツオ資源量に影響を与える可能性がある。

 

カツオ (インド洋)資源の現況 (要約表)

資源水準

高位

資源動向

増加

世界の漁獲量

(最近5)

49.756.3万トン

平均:52.9万トン

我が国の漁獲量

1.42.4千トン

平均:2.0千トン

管理目標

検討中

資源の状態

問題があるとは考えられない

管理措置

検討中

管理機関・関係機関

IOTC

 

執筆者

まぐろ・かつおグループ

カツオ・ビンナガサブグループ

遠洋水産研究所 かつお・びんなが研究室

齊藤宏和

 

参考文献

Adam, M. S. 1999.  Population dynamics and assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) in the Maldives.  Doctoral thesis of the University of London.  302 pp.

Anon. (IOTC) 2003.  Report of the fifth session of the IOTC Working Party on Tropical Tunas. IOTC-2003-WPTT-03-R[EN]. 42pp. http://www.iotc.org/files/proceedings/2003/wptt/IOTC-2003-WPTT-R[EN].pdf2004126日)

Anon. (IOTC) 2004.  Executive summary of the status of the skipjack tuna resource. IOTC-2004-SC-05[EN]. 9 pp. Draft documents distributed in 2002. http://www.iotc.org/files/proceedings/2004/sc/IOTC-2004-SC-05[EN].pdf2004126日)

Anon. (IOTC) 2005.  Executive summary of the status of the skipjack tuna resource.  In Anon. (IOTC) (ed.), Report of the Eighth Session of the Scientific Committee of the IOTC.  62-69 pp.  http://www.iotc.org/files/proceedings/2005/sc/IOTC-2005-SC-R[EN].pdf (2005129)

IOTC. 2006.  Nominal catch data. NC_WPTT06.  

http://www.iotc.org/English/meetings/wp/history/WPTT-06/data/NC_TROP.xls

(20061025)

Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon. 1984.  Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis.  NOAA Tech. Rep. NMFS Circ., 451: 1-92.

Stéquert, B. and F. Marsac. 1986.  La pêche de surface des thonidés tropicaux dans l’Océan Indien.  FAO fisheries technical paper 282.  FAO, Rome, Italy.  xiv +213 pp.

 

 

付表1. インド洋におけるカツオの国別漁獲量(千トン)

/国名

日本

インドネシア

モルディブ

スペイン

イラン

フランス

スリランカ

セイシェル

その他

合計

1985

0.3

49.3

 

18.6

 

29.8

13.0

 

68.0

179.0

1986

0.6

50.6

 

19.1

 

36.1

13.3

 

70.3

190.0

1987

0.9

50.8

 

27.9

 

35.6

13.8

 

75.8

204.8

1988

2.3

56.1

 

39.7

 

36.1

14.3

 

93.4

241.9

1989

3.4

66.9

 

63.9

0.3

43.1

14.4

 

101.3

293.3

1990

10.9

51.0

60.7

47.9

0.8

29.0

16.0

 

49.8

266.1

1991

15.9

56.3

58.3

41.8

1.1

39.4

17.6

1.8

52.0

284.2

1992

31.7

50.0

57.6

46.7

4.3

45.0

19.1

0.6

57.7

312.7

1993

31.4

71.6

58.0

51.3

4.4

48.2

21.1

 

76.6

362.6

1994

20.1

84.4

69.0

61.6

7.4

58.4

23.5

 

82.3

406.7

1995

16.1

88.4

69.9

69.6

1.1

48.7

30.2

 

83.0

407.0

1996

7.0

102.2

66.2

66.3

3.3

40.1

31.9

 

75.8

392.8

1997

6.7

111.3

68.1

62.9

9.3

31.3

33.7

4.9

89.5

417.7

1998

5.7

105.2

77.8

58.6

6.7

30.3

35.0

10.7

87.0

417.0

1999

4.6

111.8

92.3

74.3

16.6

42.7

37.3

15.8

113.7

509.1

2000

2.3

114.0

78.8

79.4

20.1

39.9

38.0

11.6

123.5

507.6

2001

1.8

109.3

86.8

68.5

26.1

36.3

36.3

26.2

105.6

496.9

2002

1.9

94.0

113.9

91.3

29.8

54.4

38.2

29.9

110.0

563.4

2003

2.4

94.3

107.5

88.0

42.7

38.9

35.5

36.8

100.3

546.4

2004

1.5

108.8

104.5

64.4

64.3

38.0

35.5

30.0

84.5

531.5

(データ:Anon. 2006)