カツオ 中西部太平洋


Skipjack, Katsuwonus pelamis



 

最近一年間の動き

 中型・小型の竿釣りによる16月における小笠原・伊豆・房総沖での漁獲量は1.3万トンで、豊漁だった昨年(2.2万トン)よりも少なかった(遠洋水産研究所 2006)。その後7月〜8月には常磐沖・三陸沖で漁獲は好調となったが、9月〜10月には低気圧や台風の通過により操業がかなり制限されるなどにより漁獲量は伸びなかった。

 わが国の大型竿釣り船(総トン数約300トン以上、冷凍魚を水揚げする)は1990年代初頭以来約40隻が稼働してきた。しかし刺身向け冷凍カツオの価格が長期にわたり低迷したことと、夏季のビンナガ漁において2004年および2005年の2年連続の不漁だったこと、さらに燃油の高騰したことから、経営が悪化し、2006年の初頭には約10隻が廃業もしくは休漁に追い込まれた。

 

利用・用途

刺身・たたきでの生食のほか缶詰や節の原料となる。

 

漁業の概要

 中西部太平洋のカツオの漁獲は、日本の竿釣り漁船による南方漁場(西部太平洋熱帯水域)の開発により1970年頃から全域にわたり本格化し、1980年代には各国のまき網船による熱帯水域漁場の開発も始まり漁獲量急増期に入った。1970年代まで40万トン台であった中西部太平洋での漁獲量は1990年代には100万トン前後に増大、さらに1998年以降には120万トン前後で推移し、2005年には暫定集計値で143万トンと、過去最高だった2004年の136万トンを約5%上回った (1)。この間、竿釣り・まき網両漁業ともに、漁具の改良に加え、操業機器の開発・改良(低温活餌槽、海鳥レーダー、ソナー、人工浮漁礁(FADs))と情報収集能力の向上(衛星情報、インターネット利用)が続いている。2005年の漁法別漁獲量(暫定値)では74%近くの102万トンがまき網漁業(日本・韓国・台湾・米国の遠洋漁業国が7割、他はフィリピン等)、竿釣りが約18%25万トン(このうち約半分が日本、他はソロモン、インドネシア等)、その他の漁業が11万トンとなっている(1)

1.中西部太平洋カツオの主要漁法別漁獲量の経年変化(万トン)(Williams and Reid 2006

 

 また、このうち20°N以北の日本近海は本種の分布縁辺部にあたり、漁獲は資源量と北上回遊・漁場形成に係わる海洋環境に影響されるが、1970年代以降1520万トンで推移している。中でも常磐・三陸沖漁場からの水揚げは4万トンから13万トンと変動しながらも一貫して日本周辺海域の中心的漁場となっている。この常磐・三陸沖漁場でも1980年代後半から竿釣りに加えまき網操業が増加している。2005年の常磐・三陸沖漁場の暫定漁獲量はまき網3.5万トン、竿釣り6.3万トンで、竿釣りは過去10カ年で最も多かった。

各国のまき網漁業が熱帯水域に大きく展開するまでの1980年台以前の本海域におけるカツオの漁獲は、主に日本により行なわれてきた(この段落は主として、「かつお漁業資源」水産庁研究部発行、昭和573月、63 p. による)。無動力の竿釣り漁業は江戸時代から始まり、大正初期に漁船の動力化が始まると漁場は急速に広がり、台湾北西部や小笠原諸島近海まで出漁するようになった。さらに、南洋諸島が日本の委任統治領となると、サイパン、トラック、ポナペ等を基地とした現地操業も始まった。昭和に入ると漁獲魚の冷凍も行なわれるようになり、漁場は東北海域では沖合600マイル、南方ではマリアナ諸島、スルー海まで広がり、もはや日本近海への来遊資源を待つ季節的操業に限定されず、近海から遠洋までほぼ周年にわたって操業するものも加え、戦前のピーク時には10万トンを超える漁獲量に至った。戦後まもなく大戦による落ち込みから回復し、1952年にマッカーサーラインが撤廃されるとさらなる未開発資源を持つとされたカツオへの関心の高まりから、漁獲量は1960年前後には10万〜17万トン、1970年には20万トンを超え1970年代後半には30万トン(それぞれ日本船による漁獲量のみ)を越える水準へと増大した。この間の漁獲の伸びは主に竿釣り漁業が中心となったが、漁場の拡大に伴う活餌保持の問題と共に燃油高騰等の経済的要因から、特に遠洋竿釣り漁船の数の減少・漁獲量の伸びの停滞が生じ、その後各国の大規模なまき網漁業が重要な地位を占める時代へと進んでいった。

 

生物学的特性

【分類・系群】 カツオ(Katsuwonus pelamis)1種のみでスズキ目サバ科カツオ属を形成し、3大洋すべての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布している(Matsumoto et al. 1984)。これら3大洋の系群は別系群と考えられているが、太平洋内については単一系群とする説と複数系群とする説がある。血清蛋白を用いた集団遺伝学的研究では、太平洋には西部に1系群、中部および東部に1つ以上の系群が存在するとの研究結果(Fujino 1996)もあるが、遺伝子頻度の差が遺伝的な隔離によって生じ維持されているかの確証はないのが現状である。一方で同様の手法から西部系群と東部系群の間の中部太平洋ではそれらの中間的な特徴を示す魚群が見られ、明確に区分された系群の存在に疑問を示す結果も示されている(South Pacific Commission 1981、以下SPC)。標識放流からは西部太平洋と中部太平洋の交流および東部太平洋から中部太平洋への移動が見られており、フィリピン群島付近も中西部太平洋の魚群の移動範囲に含まれる(2)。少なくとも魚群の交流が活発に行なわれていることは事実であり、遺伝的独立性を保つに充分な再生産時の分離が行なわれているかの点からも確認が必要であろう。資源管理上は、現状では分布の広範さに比べて移動拡散の速度が遅く常に資源全体が一様に変動するとは考えられないため、漁業の分布にあわせて東部太平洋と中西部太平洋に分けて資源評価が行なわれる場合が多い。

2. 標識カツオの移動(1,000海里以上の移動例のみ)、(Langley et al., 2005より)

 

【成熟・成長】 成熟は尾叉長4045 cmで開始可能とされる。1回の産卵数は魚体サイズに依存し30100万粒以上とされる。産卵は、表面水温24℃以上の水域で広く行われ、量の多少はあるものの特定の限定された産卵域は形成されない。産卵期は、熱帯水域では周年、亜熱帯水域では春〜初秋が中心となり、全体として年2回の産卵期のピークが見られる水域もある。日本近海では沖縄周辺はもとより伊豆諸島から35°N付近にも仔魚の出現が見られ、規模は小さいものの産卵が行われていると考えられる(上柳ほか 1973)。卵は分離浮遊卵で卵径約1 mm、水温27℃では約25時間でふ化する。なお、多回産卵とされているが、個体の産卵期間・頻度・間隔等は不明であり、価格的に栽培漁業対象種になりえないこともあり再生産機構についての研究は乏しく不明な点が多い。

カツオの成長についてはこれまで確実な齢形質が確認されていなかったこともあり統一的な知見が示されていなかったが、近年耳石の日周輪の観察によりその成長が明らかになってきた(Tanabe et al. 2003、嘉山 ほか 2003)。ふ化直後は全長2.6 mm程度であるが、その後の成長は早く1.5ヶ月後には10 cmを超え、6ヶ月で約30 cmに成長する(3)。その後、満1歳で尾叉長40 cm台前半、満2歳で60 cm弱、満3歳で60 cm台半ばに達するとされる。80 cmを超える大型魚は、はえ縄漁業等でわずかに漁獲されることがあり、最大体長は100 cmに達するとされる。これらの大型魚の年齢査定結果はまだ得られていないが、6歳以上まで達すると考えられる。

3. 中西部太平洋のカツオの成長パターン(Tanabe et al. 2003、嘉山ほか 2003より作成)

 

【分布・回遊】 太平洋における分布域は適水温帯の分布にあわせて西側で南北に広く東側では狭くなる(4)。一般に大型魚ほど南北方向に分布範囲が狭くなり、熱帯水域のみに分布する傾向があり、若齢ほど分布の南北範囲が広い。したがって、熱帯水域には仔稚魚から60 cm以上の魚まですべてのサイズが分布しているが、分布の縁辺部である温帯域では主に1歳魚の摂餌回遊群が季節的に分布する。本種は大洋の沖合域に広く分布・回遊するものの沿岸域へも来遊し、日本周辺では定置網で漁獲される場合もある。

4. 太平洋におけるカツオ分布および漁業分布

 

分布縁辺域である日本近海へは、主として尾叉長30cm台後半(1歳弱)以降の魚が北上来遊する。主要な北上ルートは、黒潮沿い・紀南・伊豆諸島沿い・伊豆諸島東沖のルートがあり、また、三陸沖漁場では沖合から現れる魚群もあり、標識放流魚の移動からも天皇海山漁場まで含めた東沖からの来遊が示唆されている。特に量的に重要なのは伊豆諸島沿い・伊豆諸島東沖ルートで、日本近海の主要漁場である常磐・三陸沖へ北上してくる。黒潮沿いのルートは、南西諸島から薩南海域に入り、一部は黒潮から分岐する対馬暖流沿いに九州西岸・五島付近に達するが、多くは薩南海域から四国沖・紀伊半島沖を通り遠州灘・伊豆諸島周辺に達する。その後、常磐・三陸海域に北上する魚群も見られる。小笠原諸島から伊豆諸島を北上する魚群は紀伊半島沖に西進する魚群と、5月以降に伊豆諸島東沖から来遊する魚群とともに房総沖から常磐・三陸沖へ北上する魚群が見られる。三陸沖の北上群は9月頃には41°N付近まで達した後、南下する。

【食性・被食 餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、餌生物に対する選択制は弱く、その水域に最も多いものや捕食しやすいものを食べていると考えられている。一方、カツオの捕食者はカツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、カマスサワラ、ウシサワラ、さめ類、海鳥が挙げられる。これらの種の胃内容物に見出されたカツオのサイズ範囲は3 70 cmにおよぶが、20 cm以下が最も多く観察されている。

行動】 漁獲対象となるサイズのカツオについてはテレメトリーや記録型標識による行動研究も行なわれている(小倉 2002)。夏季の常磐沖における北上群についての例ではあるが、カツオは時には250 m近くまで潜りながら、夜は極表層近くに滞在し時折20 m程度までを上下しながら泳いでおり、昼間には夜間より深い層を中心に泳ぎながら時々表面にまで浮上する行動が明らかにされている(5)。遊泳深度を昼夜別にまとめると、夜には45%の時間、5 mより浅い極表面を遊泳し、昼間も20%近くの時間が極表層を遊泳していた。昼間に目視等による魚群発見が可能と思われる表層(5 m以浅で計算)への浮上滞在時間は、全昼間時間の1/5程度であり、さらに昼間に観察された5 m以浅への浮上のうち2/310分未満しか継続浮上しておらず、ほとんどが20分以内の短い時間しか持続しないものであった。竿釣りやまき網の操業においては成魚の表層での行動が魚群発見の端緒とされているが、観察された結果からは、昼間も多くの時間は潜っており浮上してきた僅かな時間がカツオと漁業の接点となっている。

5. 記録式標識によるカツオの鉛直遊泳行動(青線:遊泳深度)と遊泳層の水温(赤線)、灰色部分は夜間を示す

 

稚仔魚期の生態】 仔稚魚の生態については田邉(2002)に整理されている。稚魚期の基本的な餌は魚類仔魚であるが、キハダ等のマグロ属の稚魚よりは魚食性は弱く、カイアシ類、オキアミ類や頭足類も捕食する。摂餌活動は昼間行なわれ、視覚捕食者である。成長に伴い捕食する魚類・甲殻類・頭足類のサイズは大型化するが、胃内容物には動物プランクトン等も引き続き出現する。餌の選択性は弱く周りの餌環境と遊泳能力・口の大きさ等で決まると考えられている。仔稚魚期の鉛直分布は表層混合層下部から水温躍層が中心で、これはマグロ類より深い。時間帯別の採集結果からは、夜になると表面近くへ浮上する日周鉛直移動を行っていると考えられており、さらに発生直後は水温躍層よりも浅い水深に分布するが、成長に伴ってより深い水深帯にも分布するようになると考えられている。また、消化管調査から、カツオ仔魚は朝から夕方にかけて摂餌活動を行い、夜間には摂餌を行わない典型的な視覚捕食者であることが示されている。稚魚期においても仔魚期同様、夜間には摂餌を行わない。

 

資源状態

中西部太平洋のカツオの資源評価はWCPFCの科学委員会(Scientific Committee, SC)で行われている。2006年の会合では資源評価は行われず、漁獲量、CPUE、サイズデータが更新された(Williams and Reid 2006)。また最新の資源評価は2005年に統合モデルを用いて行われた。これらについて以下にその概要を示す。

【漁獲とCPUEの動向】中西部太平洋における主要まき網漁業(日本、米国、韓国、台湾)の標準化を行なっていない単純なCPUEは、素群操業ですべての国が2005年には前年よりも明瞭に高く、流れ物(含むFADs)操業では全般的に高くなった。そのため操業群タイプを込みにした値でも2005年は前年よりも高く、結果として漁獲量が過去最高となった。(6)米国船のCPUEは近年5カ年ほど他国船よりも低かったが、2005年はかなり近づいた。これは米国船が2005年に他国船が操業する漁場で多く操業したことがひとつの原因と考えられる。

6.日本(緑三角)・韓国(青丸)・台湾(黄ひし形)・米国(赤四角)の標準化されていないまき網カツオCPUE1日あたり漁獲重量)、Anon. (2006)一部改変

 

【漁獲物魚体サイズ】漁獲物サイズ組成(重量ベース)は、尾叉長4060 cmが大部分を占めることが多い(7)。70cm以上の魚はまき網の素群操業で漁獲され、2040 cmの魚はフィリピン・インドネシアの漁業で漁獲される。2002年、2003年は6070 cmの魚がかなり多く漁獲されたが、2004年にはそれよりも小型の4050 cmの魚が、まき網の付き物操業によって多く漁獲された。

7. 本資源の年別漁獲物サイズ(尾叉長cm)組成(重量ベース推定値):青、竿釣り;緑、フィリピン・インドネシア沿岸漁業(2002年と2003年が同じ値);黄、まき網素群れ;赤、まき網流れ物操業(Anon. 2006一部改変)

 

【統合モデルによる解析】 中西部太平洋のカツオ資源への「統合モデル」MULTIFAN-CLの適用は、20007月の第13SCTBから始まった。この時の解析は極めて予備的なものであったが、その後対象海域を広げたり、日本の漁業・生物・標識データを積極的に取り込ませたりして発展してきた。2003年の第16SCTBで発表した解析結果には、通常のデータ更新に加えて感度分析の実施やモデルの設定について日本がより詳細に解析内容の検討に関与した。2005年の会議で示されたMULTIFAN-CLの解析結果はLangley et al. (2005)による。

MULTIFAN-CLの入力データは資源動態、成長および標識放流の部分に分けることができる。それぞれの入力データは漁業単位ごとの漁獲量・努力量データ、体長組成データおよび標識放流データであり、これらの入力データのうち前二者から、VPAのような年齢構造を持った資源動態が海区別に解析され、さらに標識放流データから海区間の移動が考慮される。本資源については、6つの海区(8)および24個の漁業単位(海域・規模・操業パターン等を考慮した12の竿釣り・7つのまき網・3つの調査はえ縄、およびフィリピンとインドネシアの国内漁業)を用いている。成長や加入は年単位ではなく四半期単位を用いている。

8. 解析に用いた海域区分と各海域での19902003年の漁法別累積カツオ漁獲量分布(Langley et al. 2005

 

データ・モデルの仮定

モデルの仮定については少しずつ改良されてきており、前回2003年の資源評価で用いた仮定から変更があったものはまとめて記述した。

加入については6海区それぞれで独立して変動するが、それぞれの海区で生じる加入の相互比の初期値として、好適環境条件等を取り込んだシミュレーションモデル(Lehodey 2001)により推定された海域間加入量比を用いた。これらの比は計算過程でモデル内で新たに推定されるが、初期値の設定は結果に少なからず影響を与えるようである。また、25年に1度の割合で、平均的加入量の3倍または1/3以上の幅の変動が生じる程度に設定した。成長については、体長組成は正規分布に従い、成長は基本的にvon Bertalanffy式に従うとし、16四半期齢構造を設定した。ただし最初の6齢は成長式から独立したパラメータ推定を行い、残りの10齢について成長式に従うとした。成熟の開始は第3齢と仮定している。自然死亡については齢依存と仮定しているが、経年的・海区間で変化しないとしている。標識魚は海区内で徐々に一般の魚と混合し、完全に混合するまで2四半期必要と仮定している。移動パターンは経年的に変化せず、各四半期の最初に生じると仮定している。

 2005年の資源評価モデルは前回2003年と比べ下記のような点が変更された。@日本の竿釣りの標準化されたCPUEのほかに、熱帯域のまき網漁業のCPUEGLMで標準化したものも使用した。A各漁業の漁獲効率qは全期間にわたり緩やかな変動を許す点は変更がないが、日本の竿釣りおよび近海まき網のqを四半期ごとにそれぞれひとつ推定させるよう変更した。Bフィリピン・インドネシアの国内漁業および熱帯水域のまき網漁業については、別途独立した標識混入調査等(Hampton 1997)による比較的情報量の多い事前情報を与えて、日本の漁業ではモデルにより独立に推定させる点のほか、報告率は解析期間中変化しないという仮定には変更がないが、いくつかある日本の漁業について、その標識報告率は同一の値であると仮定して推定させるよう変更した。C選択率の仮定は変更していないが、MULTIFAN-CLプログラム内部での選択率の推定法を変更した。D各海域の加入の割合を固定としたほか、E2年分の新しい年について漁獲量およびCPUEデータを更新し、新しい標識再捕データを追加した。

 

推定された各パラメータ

 推定された成長は、漁獲の体長組成とよく一致し、近年の年齢査定結果とも一致した。推定された年齢別自然死亡係数は、他の熱帯まぐろ類と同様、年齢ごとにかなり異なり、未成魚で高く(0.50.6)成魚で約0.4であった。

 

加入量の動向

 加入量は1980年代に増加が見られ、その後も高いレベルが持続しており、1990年代にはさらに高くなっていた(9)。1990年代には強いエルニーニョ年が多く、カツオの加入との間に相関があるものと考えられた。最近年に非常に大きな加入があったことが推定されているが、これは漁業からのデータが不十分であるため信頼性は低いと考えられた。

9. 中西部太平洋全体の加入量推定値の経年変化(四半期ごと)

灰色の部分は95%信頼限界、点線は解析した期間の平均値(Langley et al. 2005

 

 

資源量の動向

 資源量は主として加入によって決定づけられると考えられ、資源量が最も高く推定された1983-1988年および1998-2000年は、加入が高かった時期に続いて出現している(10)。近年の資源量は解析した期間の平均よりもかなり(20%)高くなっていることが示唆された。

10. 中西部太平洋全体の資源量推定値の経年変化(年ごと)

灰色の部分は95%信頼限界(Langley et al. 2005

 

漁獲係数の動向

 漁獲係数は、未成魚についてはすべての海区で非常に低いが、海区5ではやや増加する傾向にあり、これはフィリピンによる漁獲の増加によるものである。成魚については海区によって大きく異なり、海区5では漁獲係数の継続的な増加が見られ、同海区での漁獲量の増加と一致している。漁獲による資源利用の割合(1B/BF=0)は近年増加しているが、おおむね15%程度である。海区によるばらつきがあり、海区5では25%と高く、海区6では10%、そして海区4ではほとんど無視できる程度である。海区1から3では高い値となっているが、資源量が小さいので全体には大きな影響を与えない(11)。

11.海区別の漁業による資源利用度の経年変化(年ごと)

実線は漁業があった場合の資源量、点線は漁獲がなかった場合の資源量(Langley et al. 2005

 

生産量(Yield)および管理基準(Reference point)分析

 MULTIFAN-CLで推定された親子関係(12)を用いて平衡状態を仮定して推定したMSY200万トン、19992003年を現状(current)とするとFcurrent/FMSY0.17(=努力量を約6倍でMSYレベル)で、Bcurrent/BMSY3.0であった(13)。漁業による資源の減耗率(漁業がない場合の資源量に対する現存量の比)0.86と推定された。

12.ベバートン・ホルト型親子関係のあてはめ

灰色実線はベースケース、点線は感度テスト(Langley et al. 2005

13F-ratio(上)とB-ratio(下)の経年変化

点線はMSYレベルを示し、灰色の部分は95%信頼限界(Langley et al. 2005

 

感度テスト

 次のような感度テストが行われたが、いずれの場合も全般的にベースケースと同等であり、資源評価結果は大きくは異ならなかった。@まき網漁業の効率が年5%増加していると仮定して解析したところ、モデル全体のあてはまりはベースケースよりも良くなった。また、解析期間の初期の資源量はベースケースよりも増加したが、逆にベースケースで1990年代以降に見られた資源量の増大は見られなくなった。A熱帯域の海区5および6の日本の竿釣り漁業の漁獲効率qを同一の値とする制約を加えて解析した。これは海区6の資源量の絶対値を推定するのに寄与する標識放流データが少なく、困難となっているため、海区6の漁獲効率qは比較的性質の似ている海区5と同じと仮定したものである。その結果、近年の資源量、特に海区46はベースケースよりも大きくなったが、MSYはより小さく推定された。B海区5および6をひとつの海区としてまとめて解析したところ、加入量はベースケースよりも低く、ばらつきが少なくなり、ベースケースで見られた1980年代中頃および1990年代の加入の増加もそれほど顕著ではなくなった。資源量は、これと同様に、1980年代中頃および1990年代の増加はそれほど顕著ではなくなったが、全体的には、熱帯域の資源量の水準はベースケースと同等であった。C親子関係を示すパラメータ(steepness)を推定するための制約をより厳しくして生産量(Yield)解析を行った。その結果、MSY266万トン、Fcurrent/FMSY0.08 (=努力量を約12倍でMSYレベル)で、Bcurrent/BMSY3.38で、ベースケースよりも楽観的となった。

まとめ

資源評価の結果を要約すると、現在の漁獲圧はMSYレベルを下回っており、過剰漁獲にはなっておらず(Fcurrent /FMSY <1)、資源量もMSYレベルを上回っており(Bcurrent /BMSY >1)、乱獲状態ではない。漁獲圧は資源が持っている生産力と比べると小さい状況にあるといえる。

 

管理方策

 カツオは、豊富な資源量・速い成長と成熟・多産性・広範な海域での周年の産卵、短寿命(45歳程度)が特徴とされる。近年の漁獲量は連続して過去最高を記録するような高い水準となっているが、加入がこれまでの長期的な平均を下回らなければ持続可能であると考えられる。しかし、まき網漁業によるこれ以上のカツオ漁獲の増加はキハダやメバチへの漁獲圧の増加につながる可能性がある(Anon. 2005)。しかし、加入レベルが大きく低下した場合は、漁獲量を削減しなければならない可能性があろう。

 なお、200512WCPFC本委員会で、メバチキハダ小型魚混獲減少の観点から、まき網の努力量(20˚N20˚S)を2004年レベルに制限することが採択されており(Anon 2005)、カツオ漁獲量に影響するものと考えられる。

 

カツオ (中西部太平洋)の資源の現況 (要約表)

資源水準

高位

資源動向

横ばい

世界の漁獲量

(最近5)

113143万トン

平均:130万トン

我が国の漁獲量

(最近5)

2833万トン

平均:31万トン

管理目標

MSY200万トン

資源の状態

Bcurrent / BMSY: 3.01

Bcurrent / BMSY, F=0: 0.86

Fcurrent / FMSY: 0.17

管理措置

検討中

管理機関・

関連機関

WCPFC

 

 

 

執筆者

まぐろ・かつおグループ

カツオ・ビンナガサブグループ

遠洋水産研究所 かつお・びんなが研究室

魚ア浩司

水産総合研究センター本部

小倉未基

 

参考文献

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http://www.wcpfc.org/sc2/pdf/SC2_GN_WP1.pdf  (20061122)

 

付表1. 中西部太平洋における国別カツオ漁獲量(SPC 2005より集計)(単位:千トン)

日本

韓国

台湾

米国

ソロモン

パプアニューギニア

フィリピン

インドネシア

中国

その他

合計

1981

262

1

1

23

21

27

38

47

0

14

436

1982

296

9

1

51

18

0

52

50

0

9

486

1983

364

13

11

126

30

0

57

64

0

12

678

1984

437

11

21

115

33

2

45

70

0

15

750

1985

296

10

25

85

27

8

70

72

0

8

600

1986

392

20

36

89

39

0

84

76

0

13

749

1987

310

40

46

79

24

0

86

81

0

15

681

1988

413

64

68

96

35

0

64

85

0

16

839

1989

325

83

86

96

29

0

81

98

0

17

815

1990

281

134

106

111

22

0

116

94

0

16

880

1991

321

164

142

178

42

0

120

109

0

29

1,106

1992

276

147

171

157

24

0

109

127

0

27

1,038

1993

324

78

111

149

20

0

88

117

0

28

915

1994

287

152

136

152

27

1

99

126

0

34

1,014

1995

300

140

150

134

40

9

130

129

0

24

1,056

1996

268

130

167

121

26

9

135

141

0

30

1,027

1997

298

122

121

81

36

11

133

137

0

38

976

1998

373

136

199

132

39

36

149

185

0

56

1,304

1999

286

110

165

130

36

29

133

200

0

67

1,157

2000

331

141

200

81

9

53

141

190

0

90

1,236

2001

282

144

188

86

12

67

121

166

3

71

1,139

2002

294

167

233

88

14

91

130

162

8

97

1,283

2003

318

153

174

64

19

121

163

158

20

106

1,298

2004

303

152

186

47

19

175

170

160

20

143

1,377

注:2004年は暫定値で、図1のグラフに用いた数値と若干の差がある。