マカジキ 北太平洋

(Striped Marlin, Tetrapturus audax)


 

最近一年間の動き

 2005年に行われたISCかじき類作業部会データ準備会合で、北太平洋のマカジキを単一系群として資源評価することに決まった。ISCによる北太平洋マカジキ資源の資源評価作業は2006年のデータ準備会合において主要漁業国のデータが整備されたため、2007年に実施される予定である。

 

利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。

 

漁業の概要

北太平洋(赤道以北)における我が国のマカジキの漁獲量は、1970年代には1万トンを超えていたが、その後減少を続け、近年は3千〜4千トンに留まっている(1)。漁獲の多くははえ縄漁業によるが、一部は突きん棒漁業や流し網漁業、あるいはひき縄漁業でも漁獲される。我が国のマカジキの漁獲のほとんどはまぐろ類を対象とした操業の混獲物だが、常磐沖、南西諸島などでは季節的に小規模な本種が主対象の操業が、はえ縄、突きん棒、流し網等の漁具で行なわれている。沿岸漁業の漁獲量に関しては農林水産省統計部が発行している漁業・養殖業生産統計年報に依存しているため、これらの漁業の漁獲量は2004年分までしか得られていない。

1. 北太平洋(赤道以北)の我が国の漁業種別漁獲量

 

ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量を2、表1に示した。北太平洋におけるマカジキの漁獲量は1960年代前半までは1万トン以下であったが、その後急激に上昇し15千トン以上に達した。漁獲量は、1970年代中旬以降減少を続け、2001年以降は5千トン以下にまで落ち込んでいる。しかしながら、ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量には、中国や幾つかの中米諸国等の漁獲の情報が含まれていないので、今後更に整備を進める必要がある。

2. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)

 

1. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)

 

2000

2001

2002

2003

2004

日本

3,628

3,636

3,119

3,104

3,066

台湾

449

363

617

173

166

コスタリカ

97

151

76

79

19

韓国

436

206

153

172

75

メキシコ

312

237

305

322

 

米国

225

395

255

566

442

合計

5,147

4,988

4,525

4,416

3,768

 

生物学的特徴

太平洋に分布するマカジキは、大西洋のニシマカジキ(White Marlin, Tetrapturus albidus)とは別種である。太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄漁業におけるCPUEの分布から、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている(3)。太平洋のマカジキには外部形態の比較から南北太平洋の2系群があるといわれていたが、近年のDNA解析から東部太平洋に独立した系群が存在する可能性も報告されており、現在DNA解析を中心とした研究が進められている。一部の成果は、メキシコ沿岸のマカジキが、遺伝学的に他の北太平洋域の個体と遺伝的に異なる事を示唆しているが、解析した個体数が少ないので更に研究を進める必要がある。

3. 太平洋におけるマカジキの分布域(桃色)と主要漁獲域(青色)

マカジキを主対象とした漁業は、現在ごく小規模な沿岸漁業に限られているので、

はえ縄漁業によって主に漁獲される水域を青色で示した。

 

 活動水深帯は40 m以浅の躍層上部の混合層で、夜半から朝にかけては活動が極端に低下する。

体長(眼後叉長)組成の解析から1歳で64 cm3歳で150 cm5歳で200 cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されているが、正確な成長及び成熟年齢に関する情報は得られていない。160 cm前後(34歳)で約50%の個体が成熟するものと考えられている。産卵場は、稚魚の採集地点の分布状況から北緯20°前後の海域であろうと推定されている。東部太平洋での卵稚仔の採集報告はないが、卵巣の成熟状態から一部の個体は産卵している可能性がある。産卵月は46月である。

 

資源状態

20041月にハワイで行われたISCかじき類作業部会会合に、北緯10度以北、西経130度以西を1つの資源と仮定し、日本の遠洋・近海はえ縄のCPUEを標準化して資源量指数を推定した結果を報告した。CPUEの標準化は、北太平洋のマカジキの主要漁獲域を8つの海区に分割し(4)、海区・季節・漁具の設置水深(1鉢当たりの枝縄数で代表)の違いから生じるCPUEの違いを一般線形化手法によって補正し、資源水準の変化を取り出す方法と、上記の補正をハビタットモデルによって直接行う場合の2通りで行った。

4. CPUEの標準化に用いた海区割り

 

推定された資源量指数は、2つのモデルで異なる傾向を示した(5)。一般線形化法で得られた資源量指数は、1950年代からゆるやかな減少傾向を示した後、1980年代後半から急激に減少している。これに対してハビタットモデルで得られた資源量指数は、1950年代からゆるやかな増加傾向を示した後、1980年代後半から減少傾向に転じている。

5. マカジキ北西太平洋系群の資源量指数

資源量指数は日本の遠洋・近海はえ縄漁船のCPUEを一般線形化法(赤線)と

ハビタットモデル(黒線)の2つの方法で求めた。ハビタットモデルは

使用する海洋データの制限のために1956年からとなっている。

 

一般線形化法に関しては、解析に用いたモデルが、第14四半期に関して浅縄(1鉢当たり鈎数36本)よりも深縄(1鉢当たり鈎数10本以上)のCPUEが高いと推定している(6)。これは、表層性魚類であるマカジキの推定値としては明らかに不自然な値で、恐らく1980年代以降熱帯域で浅縄操業がほとんど行われなくなった事に起因すると思われる。

6. 一般線形化法で推定した四半期別一鉢当たりの鈎数別のCPUE

 

深縄の浅縄に対する相対的なCPUEを高く推定することは、深縄操業が主体となった近年の資源量指数を過小評価することにつながるので、一般線形化法で推定された近年の資源水準は実際よりも低くなっていると考えられる。

一方、ハビタットモデルに関しては、浅縄操業が主体であった19501970年代の漁具効率に関する情報が不足しているために、同期間の資源量指数推定値はあまり信頼性が高くない。また、マカジキの鉛直分布推定には僅か1尾のデータしか使用していないので、今後水域・季節・サイズによって鉛直分布確率がどの様に変化するか、情報を集める必要がある。

 

管理方策

20041月にハワイで行われたISCかじき類作業部会会合では、資源量指数推定値の信頼性が低いので資源評価は行われず、本資源の管理に関しては何等言及されなかった。 

北太平洋の群れを単一資源と仮定した新しい資源評価は2006年に行う予定であったが、漁獲統計の整備の遅れ等により2007年に行われることとなった。には06年んるいるるう

 

マカジキ(北太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準

(恐らく)中位〜高位

資源動向

(恐らく)減少

世界の漁獲量

20002004年)

3,8005,100トン

平均:4,600トン

我が国の漁獲量

(20002004)

3,1003,600トン

平均:3,300トン

管理目標

検討中

資源の状態

日本の遠洋・近海はえ縄のCPUEから推定した資源量指数は不完全ながらも近年減少傾向を示している。

管理措置

検討中

管理機関・

関係機関

WCPFCISC

 

執筆者

まぐろ・かつおグループ

かじき類サブグループ

遠洋水産研究所 まぐろ研究室

余川 浩太郎

 

参考文献

Barut, N. 2003.  National tuna report Philippines. SCTB/NFR-22.  8 pp.

魚崎浩司. 1995.  太平洋のマカジキ資源.  月刊海洋, 27(2): 96-100.

農林省統計情報部. 1973.  昭和51 漁業・養殖業生産統計年報.  農林統計協会, 東京.  (4) +317 pp.

農林水産省統計情報部. 1974-2003.  昭和52年−平成13 漁業・養殖業生産統計年報.  農林統計協会, 東京.

農林水産省統計部. 2004.  平成14 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額).  農林統計協会, 東京.  (8) +364 + (10) pp.

農林水産省統計部. 2005.  平成15 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額).  農林水産省大臣官房統計部, 東京.  (8) +272 + (10) pp.

農林水産省統計部. 2006.  平成16 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額).  農林水産省大臣官房統計部, 東京.  335 + (9) pp.

Williams, P.G. 2003.  Estimates of annual catches for billfish species taken in commercial fisheries of the western and central Pacific Ocean.  SCTB/SWG-3.  21 pp.

Yokawa, K. 2004.  Standardization of CPUE of striped marlin caught by Japanese offshore and distant water longliners in the north west and central Pacific.  ISC/04/MARLIN-WG/02. 13 pp.