メカジキ

(南大西洋、SwordfishXiphias gladius

 


最近一年間の動き

20063月のICCATのメカジキの資源構造に関するワークショップでは、地中海・北大西洋・南大西洋にそれぞれ独立した系群が存在することが再確認され、大西洋南北系群の境界線は現行の北緯5度よりも北側に存在する可能性を示唆するDNA分析結果が複数提出されたが、境界線の改訂に十分な結果は得られていない。資源量の動向については、情報源によって矛盾した結果が得られており、今後のさらなる研究が必要である。

 

漁業の概要

南大西洋においてメカジキは、1980年代末までは、主に日本・台湾・韓国といったまぐろ類を狙って操業するはえ縄漁業において混獲物として漁獲されてきたために、総漁獲重量は5,000トン未満と少なかった(1、図2)。1989年からメカジキを主対象として浅縄操業を行なうスペインはえ縄船団が参入して漁獲量が急増し総漁獲量は1995年に21,780トンに達した。これは、一つには努力量が徐々に北大西洋及び他の大洋から南大西洋へとシフトしたことに起因しているが、加えて、ブラジル等の沿岸国が漁獲を伸ばした事にもよる。1995年以降は、規制の導入、努力量の他の大洋への移動、及び主対象魚種の変更によって漁獲量は減少している。2004年の漁獲量は1995年の4割減の12,888トンであった。2005年の報告漁獲量は12,781トンであるが、これは暫定値であり、おそらく過少である(表1)。

1. 漁法別漁獲量の年推移 ICCAT 2006b

 

2. 国別漁獲量の年推移 ICCAT 2006b

 

1. 近年の国別漁獲量・投棄量

 

2001

2002

2003

2004

2005

ブラジル

4,082

2,910

2,920

2,998

3,785

中国

200

423

353

278

91

台湾

1,149

1,164

1,254

745

744

スペイン

5,789

5,741

4,527

5,483

5,402

ポルトガル

393

380

354

345

493

日本

685

833

924

632

269

ナミビア

751

504

191

549

832

南アフリカ

547

649

293

295

199

米国

43

200

21

16

0

ウルグアイ

789

768

850

1,105

843

その他

581

413

826

442

123

合計

15,008

13,985

12,513

12,888

12,781

(データはICCAT 2006b

 

大西洋における我が国のメカジキは主に熱帯・亜熱帯域で操業するメバチ操業の混獲物として漁獲される。1995年以降メバチの漁場がそれまでの南大西洋から徐々に北大西洋に移行したため、我が国のメカジキの漁獲量も南大西洋で減少した(3)。この結果、2005年の我が国の南大西洋の漁獲量は269トンと過去最低を記録したが、北大西洋では漁獲が急増したため、生きて漁獲されたメカジキを放流する措置が取られている。

3. 日本の大西洋でのメカジキ漁獲量

 

生物学的特性

ICCAT20063月にメカジキの資源構造に関するワークショップを開催した。このワークショップで、地中海、北大西洋、南大西洋にはそれぞれ独立した系群が存在することが再確認された。ワークショップには大西洋南北の境界線が現行の北緯5度よりも北側に存在する可能性を示唆するDNA分析結果が複数提出されたが、どの研究も使用している標本がカバーする水域や時期が限られており、境界線を変更するには不十分であると判断された。現在の系群境界線を見直すためには、広範な水域及び季節をカバーする十分な量の標本を各国が協力して収集・解析する必要がある。

南大西洋のメカジキの産卵場は熱帯及び亜熱帯域と考えられており、成長したメカジキは、アフリカ沿岸方面やウルグアイ沖合水域に摂餌のために回遊すると考えられている(4、図5)。

南大西洋のメカジキの年齢、成長、成熟に関して本格的な研究はまだ行なわれていない。

4. 2001年のはえ縄漁業の漁獲量分布 ICCAT 2004
南大西洋系群は、北緯5度(太点線で表示)以南に分布するとされている。

 

5. 本資源の分布域

 

資源状態

本系群に関しては、2006年のICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)メカジキ作業部会に提出された日本、台湾、スペイン、ブラジルのはえ縄漁業のCPUEから推定した資源量指数に基づいて解析された。これら4ヶ国の資源量指数は、混獲でメカジキを漁獲している日本・台湾と、主対象で漁獲しているブラジル・スペインの間で、メカジキを主対象とした漁業と混獲している漁業で、1990年代中期以降反対の傾向を示しているが、どちらがより正確に資源の状態を反映しているかを判別するには、さらなる研究が必要であると考えられた。それぞれが、資源の異なる部分の変動を示している可能性もあり、それは、2つの漁業の漁獲物体長組成が異なることからも支持されるが、現時点ではあくまで作業仮説であり、今後のデータ収集及び解析によって検証する必要がある。

上記のような可能性を検証するために、@日本・台湾の資源量指数(混獲漁業の資源量指数)をGLMで平均化した資源量指数、Aブラジル・スペインの資源量指数(主対象漁業の資源量指数)をGLMで平均化した資源量指数、及び4つの漁業の資源量指数全てをGLMで平均化して求めた資源量指数の3つのケースで非平衡プロダクションモデル解析(ASPIC)を行った(6)。

6. プロダクションモデルに使用した3つの資源量指数と漁獲量(ICCAT 2006a

赤、紺、黒の線はそれぞれ、主対象漁業、混獲漁業及び両者を複合した資源量指数を表し、破線は漁獲量を表す。

 

 メカジキを混獲種として操業している漁業のデータから推定した資源量指数(ケース@)を使用して行ったプロダクションモデル解析の結果は、かなり悲観的になった一方、メカジキを主対象としている漁業データから推定した資源量指数(ケースA)を使用して行ったプロダクションモデル解析の結果は楽観的なものとなっている。前者の解析から推定された各種パラメータは現在知られているメカジキの生態等から考えて非現実的な値となっている。一方、主対象漁業のデータから推定した資源量指数は、近年主対象魚種の歴史的な変遷等を十分に補正できておらず、近年の資源水準の上昇傾向を過大評価している可能性があることが指摘された。そのため、今回の資源評価では、上記2種類の漁業から得られた資源量指数を平均化して求めた資源量指数(ケースB)を用いて、プロダクションモデルによって資源解析を行った。これは暫定的な措置であり、資源評価結果の信頼性を向上するためには更なる調査・研究が必要である。

 プロダクションモデル解析の結果は、資源は良好な状態にあり、近年のFFMSYよりも低く、資源量はBMSYよりも上にある可能性が高いことが示していた。推定されたMSY(約17,000トン)は、最近年の報告された漁獲量よりも1/3高くなっている(図7)。

7. ブートストラップ法を使ったプロダクションモデルモデル解析で推定された、

MSY(上段)、B2006/BMSY値(中段)及びF2006/FMSY値(下段)(ICCAT 2006b)

 

管理方策

 資源評価結果には、不明な点が多く、それを明らかにできる十分な調査・研究が行われない限り、漁獲量は、推定されたMSY(約17,000トン)を超えるべきではないと考えられる。

 現在大西洋全域について、@125cm以下の魚の混獲率を15%以下に押さえる、A119cm以下の魚の混獲率を0%とする、という2つのオプションを持った最小体長規制がある(当該規制は2007年以降南大西洋メカジキ資源に対しては解除される予定)。2000年の大西洋全体の125cm以下の割合は21%(尾数)で、もしこれに投棄を含むと25%と推定される。近年北大西洋で加入水準が高レベルにあると推測されているにもかかわらず小型魚の漁獲割合はさほど上昇していない。

しかしながら漁獲量規制の導入に伴って、混獲されるメカジキの水揚げ量を調節する目的で生きて漁獲されたメカジキを放流し、それらについて詳しい情報を集めていない国が有ることが今回の会合で報告された。こうした事は、資源評価の信頼性を低めることに繋がるので、今後改善していく必要がある。

 

メカジキ(南大西洋)資源の現況(要約表)

資源水準

おそらく中位水準

資源動向

おそらく漸増

漁獲量

(最近5年)

12,50015,500トン

平均:13,400トン

日本の漁獲量

269トン(2005年)

管理目標

MSY

目標値

17,000トン

資源の現状

恐らくB2006/BMSY >1

恐らくF2005/FMSY <1

管理措置

2007年のTAC17,000トン(日本の割当は1,315トン)

資源管理・

評価機関

ICCAT

 

執筆者

 まぐろ・かつおグループ 

 カジキ類サブグループ

 遠洋水産研究所まぐろ研究室

 余川 浩太郎

 

参考文献

Chow, S. and K. Nohara. 2003.  Further implication on boundary between north and south Atlantic stocks of the swordfish. SCRS/2002/141. ICCAT Col. Vol. Sci. Pap., 55: 1719-1722.

ICCAT. 2002.  Recommendation by ICCAT on South Atlantic swordfish catch limits. 02-03-SWO. Entered in force: June 3 2003. http://www.iccat.es/Documents/Recs/compendiopdf-e/2002-03-e.pdf  (2005127)

ICCAT. 2004.  8. Executive summary of species. 8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain – 4-8 October 2004). 90-99 pp. http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2004 ENG.pdf  (2004129)

ICCAT. 2006a.  8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp.  http://www.iccat.int/Documents/SCRS/SCRS%202006%20ENG.pdf 2007111日)

ICCAT. 2006b. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf 2007111