メカジキ

(北大西洋、SwordfishXiphias gladius

 

最近一年間の動き

  ICCATでは20063月にメカジキの資源構造に関するワークショップを開催し、地中海、北大西洋、南大西洋にそれぞれ独立した系群が存在することを再確認した。2006年のICCATのメカジキ作業部会ではVPA(コホート解析)と非平衡プロダクションモデルによる資源解析が行なわれ、資源量が恐らく1990年代中期に出現した卓越年級群と近年の漁獲量の減少によって回復したことが示された。2006年年頭の資源量は、MSYを生産するために必要な資源量(BMSY)の99%と推定された。2005年のTACはほぼMSYと同じで、この漁獲水準であれば、資源量は上昇すると予想された。

 


漁業の概要

北大西洋のメカジキは、かつて米国において肉に水銀が多く含まれているという理由で水揚げが禁止されていたが、その後当該規制が緩和されたために、1970年代後半から漁獲量が急増し、1987年にピーク(20,236トン)に達した。

過去10年の平均漁獲量は11,900トンであるが、2005年の水揚げは死亡投棄も含めて12,710トンと推定された。これは、過去最高を記録した1987年の4割減であり、規制の効果及び漁船の南大西洋及び大西洋外への移動によるものと考えられる。また従来メカジキを専門に漁獲していたカナダ、スペイン、米国、ポルトガルのはえ縄漁船は、経済的な理由で一部主対象魚種をマグロ類及びサメ類に変更している。(1、表1)。

図1. 国別漁獲量の年推移 ICCAT 2006b

 

1. 近年の国別漁獲量及び投棄量 (トン)

 

2001

2002

2003

2004

2005

カナダ

1,079

959

1,285

1,203

1,558

カナダ投棄

26

33

79

45

106

中国

102

90

316

56

108

台湾

299

310

257

30

140

スペイン

3,968

3,957

4,586

5,376

5,521

ポルトガル

735

766

1,032

1,320

900

日本

0

0

0

574

778

日本投棄

567

319

263

0

00

モロッコ

523

223

329

335

334

トリニダード・トバコ

75

92

78

83

91

米国

2,217

2,384

2,513

2,380

2,162

米国投棄

308

263

282

275

262

その他

187

349

524

692

750

合計

10,086

9,746

11,542

12,368

12,710

(データはICCAT 2006b)

 

北大西洋においてメカジキは、専らはえ縄漁業によって漁獲されている。このうち、米国、カナダ、スペイン、ポルトガル、ブラジル、モロッコ、ベネズエラ等はメカジキを専門に狙って操業する浅縄(夜縄)操業による漁獲が大部分であるのに対して、日本、台湾、中国の漁獲は、マグロ類を狙った深縄や普通縄操業による混獲である(表1)。

 また、近年本系群の資源水準が悪化している事を受けて、各国が次のような自主規制を行っている。

日本;5年のブロッククォータを全て消化してしまった為に、20002月より漁獲されたメカジキのうち、生きて漁獲された個体は放流し、死んで漁獲されたものは海上投棄している(20041月より死んで漁獲されたものの投棄措置は解除)。放流・投棄された個体の内、死亡投棄された部分だけが、日本の漁獲としてICCATの統計に計上されている。これら放流・投棄されたメカジキは我が国の漁獲成績報告書に報告されないため、漁船からの旬別電報報告によりその量が推定されている。

米国;2001年から5つの海区と時期で小型メカジキの漁獲を規制している。

カナダ;クォータ管理を徹底するため19992001年はメカジキを主対象としたはえ縄操業を8月末で打ち切りとした(通常は10月まで行われる)。しかしながら2002年からはITQIndividual Transferable Quota)システムを導入したため、主対象操業は11月まで可能となった。ただし最近は、メカジキの市場価格の低下により他のまぐろ類を狙う操業が増えている。

 こうした一方で、スペインのはえ縄漁船の多くは、近年モノフィラメントの幹縄を導入し、操業の効率化を図っている。

メカジキは前線域や海山周辺で多く漁獲される事が知られているが、北大西洋でも同様の水域に主漁場が形成されている(2)。

2.  2001年のはえ縄漁業の漁獲量分布 ICCAT 2004
南北の系群は北緯5度(太い点線)で仕切られている。

 

生物学的特徴 

【成長と成熟】最新でかつ最も多くの標本を用いた成長の解析結果は、Eharhardt et al. (1995)に報告されている(3、表2)。メカジキの成長は、若齢時に急激に大きくなる事と、雌雄で成長が異なり、雌は雄よりも成長が早くかつ大型化することが特徴である。成熟年齢は雌雄とも5歳と考えられている。

3. メカジキの成長曲線(Eharhardt et al. 1996

 

2. メカジキの性別年齢別下顎全長(cm)

 

1

95.1

93.0

2

118.2

119.0

3

134.9

139.9

4

146.1

158.1

5

154.3

172.1

6

162.1

186.2

7

169.1

198.6

8

169.5

207.5

9

176.3

218.1

10

178.0

226.1

L

189.6

364.7

Eharhardt et al. 1996

 

Eharhardt et al. (1995)は、2,000個体以上の標本について臀鰭第2棘に出現する年輪を用いて年齢査定を行った結果を基に成長を推定しており、この解析結果は、ICCATで漁獲物体長組成を漁獲物年齢組成に変換する際に用いられている。しかしながら、解析に用いた個体の中に下顎全長250cm以上のものがほとんど無かったので、雌の大型個体に関しては、推定精度が悪くなっている。

【産卵と回遊】産卵は西大西洋熱帯域(カリブ海〜南米北西岸)において春から初夏にかけて長期に続くことが示唆されている(45)。北大西洋のメカジキは、季節と共に熱帯域から温帯域へと摂餌回遊を行なうが、最近の研究によって、雄は産卵場からあまり離れず、雌の方が長距離回遊を行なうことが指摘されている。

4. 本資源の分布

 

5. 北大西洋メカジキの水域別分布形態 Ortiz et al. 2000
エリア7817は産卵域、12399293は摂餌域、4561091は移行域を表す。

 

 また成魚は日周鉛直移動を行ない、昼間は水深300400mに夜間は水温躍層の上部に生息することが、アーカイバルポップアップタグデータの解析から示されている(6)。メカジキの胃内容物を調べると、浮魚類、底魚類、深海魚、軟体動物など幅広い生物が出現するので、活発な鉛直移動を行いながら幅広い水深帯で捕食活動を行っていると考えられている。

6. アーカイバルポップアップタグによるメカジキの鉛直行動パターン Matsumoto et al. 2003
上の図は水深を下の図は水温を表す。20023月にダカール沖で操業中の日本のはえ縄漁船で漁獲された個体(推定下顎全長160cm)から得られたデータに基づいて作図。

 

【資源構造】ICCAT20063月にメカジキの資源構造に関するワークショップを開催した。このワークショップで、地中海、北大西洋、南大西洋にはそれぞれ独立した系群が存在することが再確認された。ワークショップには大西洋南北の境界線が現行の北緯5度よりも北側に存在する可能性を示唆するDNA分析結果が複数提出されたが、どの研究も使用している標本がカバーする水域や時期が限られており、境界線を変更するには不十分であると判断された。現在の系群境界線を見直すためには、広範な水域及び季節をカバーする十分な量の標本を各国が協力して収集・解析する必要がある。

 

資源状態

2006年のICCATのメカジキ作業部会においてVPA(コホート解析)と非平衡プロダクションモデルを用いて資源解析が行なわれた。プロダクションモデルには資源量指数として、米国、カナダ、日本、スペインのはえ縄漁業データを一つにまとめて標準化したCPUEが使用され、VPAのチューニングには、資源豊度指数として上記4つの漁業の性別年齢別CPUE(釣り鈎1,000本当たり漁獲尾数)が用いられた(7)。

7. 資源量指数と漁獲量 ICCAT 2006a

資源量指数の単位は釣り鈎1,000本当たりの漁獲重量(kg)、漁獲量の単位はトン。

 

 これらの結果は、資源量が、恐らく1990年代中期に出現した卓越年級群と近年の漁獲量の減少によって回復したことを示していた。プロダクションモデルが推定したMSYは約14,100トンであった。2006年年頭の資源量は、MSYを生産するために必要な資源量(BMSY)の99%にあると推定され(8)、2005年の漁獲死亡係数(F)はMSYレベル(で漁獲を行った時のF; FMSY)よりも14%低いと推定された(9)。解析には幾つかの不確実な点があるものの、ブートストラップ法によってこれらの値の信頼限界を推定したところ、ほとんどの場合に於いて最近のFFMSYよりも低いと示されたが、約半分に於いて最近の資源量はBMSYよりも低いと示された。2005年のTAC14,000トン(ほぼMSYと同じ)であったが、この漁獲水準であれば、資源量は上昇しつづけることが予想される。

8. 非平衡プロダクションモデルから推定した漁獲係数の年推移 (ICCAT 2006b)

漁獲係数はFMSYに対する相対値として表してある。茶線は80%信頼限界を示す。

 

9. 非平衡プロダクションモデルから推定した資源量の年推移 (ICCAT2006b)

漁獲係数はBMSYに対する相対値として表してある。茶線は80%信頼限界を示す。

 

VPA解析の結果は、非平衡プロダクションモデルの結果と良く一致した。各国から提出された年齢別の資源量指数は最近年を除いて、良く一致したトレンドを示しており、それは、1990年代中期に比較的強い年級群の加入があり、それらが順調に産卵親魚に成長している事を示している。この事が、近年の漁獲の減少と相まって産卵親魚量の増加をもたらしている。各漁業からのデータをまとめた資源量指数は、1990年代後期より資源量が増加している事を示しているが、最近年の加入水準に関する情報は、(小型魚の主たる情報源であったスペインのはえ縄漁船の近年の資源量指数が提出されなかったこと、及び米国が小型魚漁獲規制の目的で禁漁期・禁漁区を設定したことにより)、情報が不足している。

 

管理方策

 資源をMSY14,000トン)を生産するために必要な資源水準に維持するために、これまで通り14,000トンのTACが勧告された。2006年に行われた資源解析の結果は、14,000トンレベルの漁獲は将来に亘って継続可能であり、最大生産量は現在の海洋環境及び漁業の状況下で達成することが出来ると考えられる。

現在大西洋全域について、@125cm以下の魚の混獲率を15%以下に押さえる、A119cm以下の魚の混獲率を0%とする、という2つのオプションを持った最小体長規制がある。2000年の大西洋全体の125cm以下の割合は21%(尾数)で、もしこれに投棄を含むと25%と推定される。近年の加入水準は高レベルにあると推測されるが、それにもかかわらず小型魚の漁獲割合はさほど上昇していない。

しかしながら、上記規制あるいは、各国が独自に導入している漁業規制によって、幾つかの漁業に於いては、漁獲及びサイズデータの質及び継続性が損なわれ解析の質的な低下が認められた。こうした事が今後も続くと、将来の資源評価に悪影響を与える事が懸念される。

 

 

メカジキ(北大西洋)資源の現況(要約表)

資源水準

中位水準

資源動向

増加傾向

漁獲量

(最近5年)

9,70012,700トン

平均:11,300トン

日本の漁獲量

778トン(2005年)

(注)暫定値。生存放流分は含まれていない。

管理目標

MSY

目標値

14,133(12,800-14,790)トン

 

資源の現状

B2006/BMSY0.99

0.871.27

F2005/FMSY0.86

 (0.65 - 1.04)

管理措置

2007年のTAC14,000トン(日本の割り当ては842トン)とする。

小型個体(下顎叉長125cm/体重25kg未満)の水揚げ量を15%以下に抑えるか、下顎叉長115cm/体重15kg未満の個体の水揚げ量を0%にする。

資源管理・評価機関

ICCAT

(注)括弧内の数字は80%信頼限界を示している。

 

執筆者

 まぐろ・かつおグループ 

 熱帯性まぐろ類サブグループ

 遠洋水産研究所まぐろ研究室

 余川 浩太郎

 

参考文献

Eharhardt, N.M., R.J. Robbins and F. Arocha. 1996.  Age validation and growth of swordfish, Xiphias gladius, in the northwest Atlantic. ICCAT SCRS/95/99.  Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 45 (2): 358-367.

ICCAT. 2003.  Recommendation by ICCAT relating to the rebuilding program for North Atlantic swordfish. 02-02 SWO.  http://www.iccat.es/Documents/Recs/compendiopdf-e/2002-02-e.pdf  (2005126)

ICCAT. 2004.  8. Executive summary of species. 8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain – 4-8 October 2004). 90-99 pp.

http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2004 ENG.pdf  (2004129)

ICCAT. 2006a.  8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp.  http://www.iccat.int/Documents/SCRS/SCRS%202006%20ENG.pdf 2007111日)

ICCAT. 2006b. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf 2007111

Matsumoto, T., H. Saito and N. Miyabe. 2003.  Report of observer program for Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean from September 2001 to March 2002. SCRS/2002/140.  Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 55(4): 1679-1718.

Ortiz, M., V. Restrepo and S.C. Turner. 2000.  North Atlantic swordfish sex-ratios at size keys: Analysis and development.  SCRS/1999/083.  Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 51 (5): 1480-1508.