メカジキ 北太平洋

Swordfish, Xiphias gladius


 

最近一年間の動き

 北太平洋のメカジキ資源については、200611月にISCメカジキ作業部会のデータ準備会合が開催され、資源評価に向けてデータの整備を行った。これまで北太平洋のメカジキは、東部太平洋域を除いた西経130度以西に分布する群を1つの資源と仮定して資源解析を行ってきた。しかしながら、今回の会合では、少なくとも北太平洋域のメカジキは一つの資源として扱うべきであるが、東部太平洋域熱帯域の漁獲分布に明瞭な不連続域が認められないことから、新たな資源評価を行う前に、東部太平洋南緯側の群を同じ系群と見なすかどうか再度見直すことになった。

また、同会合では北太平洋域の主要漁業国の漁獲データの整備が進んだが、同時にフィリピンや中米諸国等の情報が不足していることも明かとなった。

 

利用・用途

 切り身はステーキや煮付けなどに利用され、また刺身あるいは寿司として消費される。

 

漁業の概要

2006年のISCメカジキ作業部会データ準備会合では、北太平洋の漁獲データの集計を行った。北太平洋に於けるメカジキ漁獲は、1960年前後に2万トンを上まわったが、その後急激に減少し、1万トン前後に落ち込んだ。こうした総漁獲量の変動は、日本の漁獲量の変動を反映しているが、日本の漁獲量自体は1970年代中旬から漸減し続け、近年では78千トンとなっている。総漁獲量は、1980年代に米国が、1990年代に台湾が漁獲量を増加させたために、増加傾向をして示しており、15千トンを上まわっている。

北太平洋におけるメカジキの主要漁獲国は日本で、1970年代には全体の9割程度を漁獲していたが、近年、米国や台湾の漁獲量が増加したため、全体に占める割合は56割程度にまで落ち込んでいる。特に台湾は近年急激に漁獲を伸ばしているが、これは近海・遠洋はえ縄漁業の増加によるものである。また、近年のメカジキの漁獲量推定値は不完全で、1及び1のデータには、フィリピンや中米諸国等による漁獲が含まれていない。

1. ISCに報告された北太平洋の国別漁獲量

 

1. ISCに報告された北太平洋の近年の国別漁獲量 (トン)

 

2000

2001

2002

2003

2004

日本

8,661

8,848

8,600

7,770

9,048

台湾

2,855

3,806

4,168

4,291

4,066

韓国

161

349

350

311

350

メキシコ

2,216

780

465

671

 

米国

5,602

2,415

1,919

2,282

1,419

合計

19,495

16,198

15,502

15,325

14,883

 

2に北太平洋の我が国の漁業種別漁獲量を示す。漁獲量は、1980年代後半に1万トンを超えるまでに増加したが、その後減少傾向となり、2004年は8,848トンとなった。これは、遠洋・近海はえ縄による漁獲の減少によるものである。漁業種別の漁獲量では遠洋・近海はえ縄が全体の7割以上を占め、残りを沿岸はえ縄、突きん棒、大目流し網等が漁獲している。大目流し網による漁獲は1980年代には1,000トンを越える時期があったが、1992年のモラトリアム以降、操業水域が我が国200海里内に限られたため漁獲量は急激に減少し500トン以下にまで落ちこんだ。しかしながら、近年その漁獲量は増大傾向にあり、2001年には730トンを漁獲している。突きん棒の漁獲は1980年代には200トン前後であったが、その後増加し1990年代後半には350600トンとなった。しかし再び減少し2004年には33トンとなっている。

2. 北太平洋における我が国の漁業種別漁獲量

 

台湾によるメカジキの漁獲は1964年以降のものがISCに報告された。メカジキは主に、遠洋・近海はえ縄漁業によって漁獲されており、両者共に近年大きく漁獲量を伸ばしている。限られた情報ではあるが、台湾は1964年よりも前にもメカジキを漁獲していた可能性があるため、今後データを整備していく必要がある。

米国は、ハワイ基地のはえ縄漁業でメカジキを漁獲している。当該漁業は1980年代の終わりに始まり急速に成長し、1993年には6,000トンを漁獲した。2000年には125隻(内57隻がメカジキを主対象として操業)が操業して3,000トンを漁獲した。1999年の初頭に海亀混獲を削減するための規制がハワイのメカ縄操業に設定された。これらの規制は2001年に発効し、この規制によりハワイを基地とする米国のはえ縄漁船は赤道以北でのメカジキを対象とした操業を禁止された。この結果、多くのはえ縄漁船がハワイを去り、規制を受けないカリフォルニア基地の船団に合流した。このカリフォルニアのはえ縄船団は1991年に設立され、19992000年に急速に成長し、結果としてメカジキの漁獲量も増加したが(2000年の漁獲量は1,900トン)、カリフォルニア沖の漁期が限られているため、最近は一部の船がハワイ北方漁場まで進出している。ハワイのメカ縄操業は、2006年に再開されたがウミガメの混獲に関して厳しい制限が課せられている。

 

生物学的特性

【分布と回遊】漁場は亜熱帯収斂線と極前線の間に形成されるが、アーカイバルタグデータの解析結果、稚魚の採集結果及び季節別の漁場の移動から、南北回遊を行っていると考えられている。産卵場は小笠原諸島沖合とミッドウェー諸島周辺水域が知られているが、それ以外の熱帯亜熱帯の広い水域で産卵が行われていると思われる(3)。主産卵期は3月から7月頃であるが、産卵活動はほぼ周年行われていると考えられている。

3. 太平洋におけるメカジキの分布域(黒)と北太平洋におけるメカジキの漁場(青)

点線は、資源解析に使用した境界線を示す。

 

他の海域のメカジキ同様、北西太平洋のメカジキも日周鉛直移動を行うことが、アーカイバルタグ調査によって確認されている(4)。それによると、メカジキは日出前に深層へ潜水し、日没後に表層へ浮上する。また、夜間は水温に依らず表層20 m以浅に滞在しているのに対して、昼間は水深に依らず水温36の水帯に分布していることが示唆されている(5)。

4. アーカイバルタグから得られた親潮前線域でのメカジキの日周鉛直移動

データは199986日〜10日のもの。赤線が水深、水

色線が水温を示す。

 

5. アーカイバルタグで得られた親潮前線域におけるメカジキの水温帯別(上図)及び水深帯別(下図)昼夜分布パターン

 

【成長と成熟】北西太平洋のメカジキの成長に関する研究は、古くから多くの研究者によって行われているが、一番新しい報告はSun et al.(2002)が臀鰭第2棘を用いて行った研究であり(6、表2)、他の研究もほぼ同様の結果が得られている。他の海域同様、雌の方が早く成長し大型になる。下顎全長2 m以上の個体はほとんど雌だけである。50%成熟下顎全長は、ハワイ沖では雄で117 cm3歳)、雌で162 m6歳)と報告されている(DeMartini et. al. 1999)。

6. 雌雄別の成長曲線Sun et al . 2002

 

2. 推定された雌雄別の年齢別下顎前長(cm)

 

0

54.8

57.5

1

90.3

90.6

2

113.6

114.4

3

131.1

133.5

4

144.8

149.6

5

155.8

163.4

6

164.8

175.5

7

172.2

186.2

8

178.4

195.7

9

183.6

204.2

L

213.1

300.7

 

【資源構造】

太平洋のメカジキの資源構造に関しては、はえ縄漁業のCPUE分布、稚魚の採集状況、DNA解析などによって研究されている。主産卵場は、少なくとも北西太平洋・東部太平洋・南西太平洋の熱帯から亜熱帯域に存在し、南半球と北半球では主産卵期がほぼ半年ずれている。主漁場は、東沖水域・ハワイ北方水域・カリフォルニア沖・チリ沖・オーストラリア南東沖の5ヵ所に存在するが、隣接する漁場間では多少なりとも個体の交流が起こっている可能性がDNA解析によって示唆されている。しかし、これらの研究は極めて断片的な標本の解析結果によるものなので、今後、太平洋のメカジキの資源構造については詳しく調べていく必要がある。

 2006年のISCメカジキ作業部会データ準備会合では、少なくとも北太平洋域のメカジキは一つの資源として扱うことで合意したが、東部太平洋域熱帯域でメカジキの漁獲分布に明瞭な不連続域が認められないことから、資源評価を行う前に系群構造について再度見直すことを決めている。

 

資源状態

近年の統計は不完全で、台湾漁船の外地水揚分やフィリピン、中国等による漁獲量、最大で4千〜7千トンが含まれていないので、早急に漁獲統計を整備する必要がある。

20041月にハワイで行われたISCメカジキ作業部会会合においては、前回同様、北西太平洋系群の分布域を北緯10度以北西経130度以西と仮定し(3)、日本の遠洋・近海はえ縄漁業のCPUEを標準化した資源量指数の推定を行った。

CPUEの標準化は、北太平洋のメカジキの主要漁獲域を5つの海区に分割し(7)、海区・季節・漁具の設置水深(一鉢当たりの枝縄数で代表)の違いから生じるCPUEの違いを一般線形化手法によって補正し、資源水準の変化を取り出す方法と、上記の補正をハビタットモデルによって直接行う場合の2通りで行った。

7. CPUEの標準化に使用した海区割り

 

2つの手法で推定した資源量指数は1950年代の水準は異なっていたが、1980年代中頃以降、ともに一貫した減少傾向を示した(8)。2つの資源量指数とも20002002年の資源量指数の値は1980年代後半の半分以下となっており、近年資源水準が低下していることを示している。

8. 北西太平洋のメカジキの資源量指数

資源量指数は日本の遠洋・近海はえ縄漁船のCPUEを一般線形化法(赤線)と

ハビタットモデル(黒線)の2つの方法で求めた。ハビタットモデルは使用する

海洋データの制限のために1956年からとなっている。

 

2つの手法とも、東沖漁場(Area 1-3)とハワイ北方漁場(Area 4-5)で異なるトレンドを示しており(9)、2つの水域の系群が異なる可能性があるので今後調べていく必要がある。また、9で明らかなように、ハワイ北方漁場では1980年代に資源量指数のピークが見られ2000年以降は僅かだが回復傾向も認められるのに対して、東沖漁場では1980年代以降一貫して減少している。

9.水域別の資源量指数

上のグラフは東沖漁場(Area 1-3)、下のグラフは北沖漁場(Area 4-5)の

資源量指数を一般線形化法(青線)とハビタットモデル(桃線)で推定したもの。

 

上記の様にはえ縄のCPUEから推定した資源量指数は、資源水準の低下を示しており漁業に与える影響が懸念されるが、同時に行ったMULTIFAN-CLによる資源解析は、信頼できるような結果を得られなかった。これは、解析に用いた体長データから毎年の当歳魚の加入の多寡を推定できなかった事、日米以外の国のデータを解析に使用しなかった等によると考えられているので、今後体長データの詳細な解析や解析モデルの検討を行い、信頼できる資源解析結果を求めていく必要がある。

 

管理方策

20041月にハワイで行われたISCメカジキ作業部会会合では、MULTIFAN-CLによる資源解析がうまくいかず、漁業が資源水準に与えるインパクト等も評価できなかったので、“今後漁業の動向を注意深くモニターしていく”という勧告だけが出された。

本資源に関しては、資源の境界線や漁獲統計に関してまだ不確実な点が多いが、はえ縄のCPUEから推定した近年の資源量指数の減少傾向から考えて、早急にこうした問題に対処し、資源解析を行っていく必要があろう。

なお、今年のWCPFCに於いて南太平洋のメカジキ資源の漁獲に規制が導入されることが決まったため、同資源を漁獲していた漁船が漁場を北太平洋にシフトすることが懸念される。

 

メカジキ(北西太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準

中位

資源動向

減少

世界の漁獲量

20002004

14,90019,500トン

平均:16,300トン

我が国の漁獲量

20002004

7,8009,000トン

平均:8,600トン

管理目標

検討中

資源の状態

推定できず。ただし、日本のはえ縄のCPUEから推定した資源量指数は、1950年代の半分以下に落ち込んでいる。

管理措置

北太平洋の漁獲量を凍結する勧告がISCから出されている。

管理機関・

関係機関

ISC

 

執筆者

 まぐろ・かつおグループ

 かじき類サブグループ

 遠洋水産研究所 まぐろ研究室

 余川浩太郎

 

参考文献

Chang S.-K., and S.-P. Wang. 2005.  Recent status of Taiwanese tuna fisheries in the North Pacific Region for 2003.  ISC/05/Plenary/8.  12 pp.

Dreyfus, M., L. Fleischer, H. Robels and P. Ulloa. 2005.  Mexican progress report to the 5 ISC (Tokyo, Japan, March 28-30/2005).  ISC/05/Plenary/2.  14 pp.

ISC. 2004.  Report of the swordfish working group.  ISC4/2004/07.  24 pp.

Koh, J., K. Choi and D. Moon.  2005.  Korean National Reports to 5th ISC. By-catch of pacific bluefin tuna in the waters off Korea.  7 pp.

Ogura, M. 2005.  National report of Japan.  ISC/05/Plenary/3.  13 pp.

Pacific Islands Fisheries Science Center NOAA and Southwest Fisheries Science Center NOAA. 2005.  U.S. national report to the 5th ISC. On fisheries and research for tuna and tuna-like species in the North Pacific.  ISC/05/Plenary/5.  32 pp.

Yokawa, K. 2004.  Comparison of three abundance indices estimated by catch and effort data of Japanese offshore and distantwater longliners.  ISC/04/SWO-WG/06.  7 pp.

Williams, P.G. 2003.  Estimates of annual catches for billfish species taken in commercial fisheries of the western and central Pacific Ocean.  SCTB/SWG-3.  21 pp.

Barut, N. 2003.  National tuna report Philippines.  SCTB/NFR-22.  8 pp.