ミナミマグロ

Southern Bluefin Tuna, Thunnus maccoyii

 

最近一年間の動き

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の科学委員会(20069月)において資源状態が検討され、近年の加入が低いこと等から、資源状況の悪化を防ぐため、同委員会は漁獲量を現状水準から直ちに削減するよう勧告した。これをうけてCCSBTは、年次会合(200610月)において2007年のTAC11,810トン(前年比3,115トン減)とすることに合意した。また日本のミナミマグロ漁業管理措置が変更され、船別漁獲割り当て制度、漁獲全個体に対する識別標識装着制度が20064月から導入された。

 

利用・用途

ほぼ全てが日本での刺身や寿司用途に用いられている。

 

漁業の概要

 主な漁業国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、インドネシアであり、フィリピン、南アフリカからも漁獲が報告されている(1)。漁法ははえ縄とまき網であり、まき網はオーストラリアのみが実施している(2)。

1. ミナミマグロの国別漁獲量の推移 (Data: Anon. 2006a)

 

2. ミナミマグロの漁獲量の推移 (Data: Anon. 2006a)

 

ミナミマグロ漁業の歴史はオーストラリアがその沿岸で小規模にのみ漁獲していた状態から始まり、日本船が1950年代初期に産卵場でのはえ縄操業を開始し、本格的な漁獲が始まった。日本漁船は1961年に最高の77,900トンを漁獲したものの、その後は肉質の良い魚を求めて索餌域である西風皮流域(南緯3545度の海域)へ漁場を移すとともに、産卵場、及び小型魚が多獲される海域での操業を1971年から自粛した。これらの影響もあり、日本のはえ縄漁業による漁獲は1961年以降漸減し、1985年には約20,000トンにまで減少した。一方、オーストラリアの主に竿釣による漁獲量は次第に増加し、1982年には21,500トンに達した後、自主規制及び産業の衰退によって激減した。1989年からは日本、オーストラリア、ニュージーランドの間でそれまでの漁獲実績を下回る漁獲枠(日本6,065トン、オーストラリア5,265トン、ニュージーランド420トン)を設定し、その後現在まで漁獲量がほぼ一定している。1980年代半ばから韓国、台湾、インドネシアによるはえ縄の漁獲も始まり、1999年には合計5,000トンを上回ったがその後は2,0003,000トンとなっている。最近5年間の合計漁獲量は約13,000トンから約16,000トン、日本は約4,700トンから約5,800トンで推移している。

オーストラリアは1990年代半ばより蓄養漁業を発達させた。まき網で漁獲した種苗を約36ヶ月間蓄養した後、ほぼ全量の年間6,00010,000トン程度を日本へ輸出している。

日本は2005年まで、漁場ごとに漁獲開始日と上限漁獲枠を設定して漁獲状況に応じて漁獲終了日を決定して、自国はえ縄船の操業を管理してきたが、2006年からは漁獲枠の個別割り当て制を導入し、また漁獲したミナミマグロ全個体に識別標識を装着する制度を導入して漁獲の管理を強化した。

 

生物学的特性

 産卵場はインド洋東部の低緯度域(東経100125度、南緯1020度)で、産卵期は9月から翌年3月までの約半年間に及ぶ(Farley and Davis 1998)。一回の産卵数は体重1 kg当り5.7万粒で、産卵雌個体はほぼ連日産卵すると考えられる。幼魚はオーストラリア西岸沖を南下したのち、オーストラリア南岸沖を東へ移動すると想定され、成長に伴い次第に南緯3545度の西風皮流域全体に広く分布、回遊するようになる(3)。主な漁場は、はえ縄では南アフリカ沖、インド洋南東海域、タスマニア島周辺海域およびニュージーランド周辺海域、まき網ではオーストラリア大湾である(4)。

3.ミナミマグロの分布()、漁場()、産卵場()

 

4. ミナミマグロの緯経度5度区画別の漁獲尾数(2005年暫定値。20尾以上の区画のみを示す。1-15CCSBT統計海区。主に1海区での、インドネシアによる漁獲を含んでいない点に留意。)

 

成熟尾叉長は約150 cm、年齢8歳と考えられているが、産卵場で操業するインドネシアの漁獲物の年齢組成がより高齢であることから、成熟年齢はもっと高いとの指摘もある。最大報告尾叉長は210 cm、寿命は少なくとも20年以上、耳石の解析から得られた最高齢は45である。

 成長は耳石の年齢査定結果と標識放流結果を総合して求められている。1970年代以前と1980年代以降で初期成長が変化したと考えられている。CCSBTの科学委員会では、1970年級以前にはvon Bertalanffy成長式を、1980年級以降にはvon Bertalanffy成長式とRichardの成長式の平均値を、間の年級は直線補完して用いている。体長−体重関係はいくつか求められているが、日本のはえ縄漁獲物に対してCCSBT科学委員会での資源シミュレーションでは以下の式を用いている。下記は内臓等を除かない重量であり、セミドレス重量は1.15で除して求めている。

130 cm未満の魚 体重=0.0000313088体長2.9058

130 cm以上の魚 体重=1.15×0.000002942体長3.3438

年齢別の体長、体重を、5、表1に示す。

5. CCSBTで用いているミナミマグロの成長曲線

 

1. ミナミマグロの年齢別の体長と体重の関係

年齢

体長

体長

体重

 

1970年代以前

1980年代以降

1980年代以降

0

 

 

 

1

55.0 cm

55.0 cm

3.6 kg

2

75.0 cm

81.5 cm

11.2 kg

3

89.9 cm

99.4 cm

19.9 kg

4

101.2 cm

113.4 cm

29.2 kg

5

114.3 cm

125.0 cm

38.8 kg

6

125.5 cm

134.7 cm

44.6 kg

7

134.6 cm

142.8 cm

54.2 kg

8

142.1 cm

149.6 cm

63.4 kg

9

148.1 cm

155.2 cm

71.7 kg

10

153.1 cm

159.9 cm

79.2 kg

11

157.1 cm

163.9 cm

86.0 kg

12

160.4 cm

167.2 cm

91.9 kg

13

163.1 cm

169.9 cm

97.0 kg

14

165.3 cm

172.2 cm

101.4 kg

15

167.1 cm

174.2 cm

105.4 kg

16

168.6 cm

175.8 cm

108.7 kg

17

169.8 cm

177.1 cm

111.4 kg

18

170.8 cm

178.2 cm

113.7 kg

19

171.6 cm

179.2 cm

115.9 kg

20

172.2 cm

179.9 cm

117.4 kg

21

172.8 cm

180.6 cm

118.9 kg

 

はえ縄漁獲物の胃内容物分析から、外洋域に分布する尾叉長約90 cm以上の魚は、主に頭足類と魚類を捕食していることがわかってきている。本種の捕食者は、他のまぐろ類と同様、かじき・まぐろ類、さめ類、海獣類などであると考えられている。

 

資源状態

 本種の資源評価は1994年に発効したCCSBTの科学委員会の下で行われている。チューニングVPAなどの資源評価モデルを用いた詳細な検討はおよそ3年に一度(前回は2004年)実施され、他の年は漁業指標及び科学調査結果から資源の現況を判断している。2006年は後者に当たるが、一部は評価モデルにより検討した。その結果は次の通り(CCSBT 2006a)。

加入量については、日本はえ縄のCPUE、ニュージーランドのチャーターはえ縄のCPUE、標識放流データ、航空機目視調査といった指標から、2000年級、2001年級が1994-1998年レベルより低いと判断された。日本はえ縄のCPUEからは2002年級以降の加入量の増加が示唆されている。411歳の資源は、日本はえ縄のCPUEから、過去10年間にわたって低位で安定している(6)。産卵親魚資源については、日本はえ縄における12歳以上の魚のCPUE1995年ごろに低下して以降、安定していることを示している。一方産卵場でのインドネシアの漁獲量は増加しているが、これは資源の増加を反映したものか、混獲種としての漁獲から漁獲対象種としての漁獲への変化なのかは定かでない。

6. ミナミマグロの年齢別Nominal CPUE1969-2005年。日本はえ縄船のCCSBT統計海区4-94-9月のもの。最近1-2年は暫定値。)

 

管理方策用に開発したオペレーティングモデルを用いた資源評価では、過去の漁獲量についていくつかの仮定のもとで計算を行ったが、得られた資源状態の評価は昨年と同様であった。すなわち、親魚資源量は初期資源量よりはるかに少なく、CCSBTの管理目標である1980年の水準、もしくはMSYを与える水準と比較してもかなり低い。この10年間の加入量は1950-1980年の水準よりもかなり低く、加えて2000年級、2001年級の加入はかなり低い。漁業指標からの解釈と異なり、シミュレーションでは2002年級以降も加入は低いと推測された。

これらの結果を総合し、現状のTAC14,925トン)の漁獲レベルでは資源をさらに減少させる可能性が高く、資源回復のためには漁獲量を直ちに現状以下にする必要があると科学委員会は勧告した。

 

管理方策

 本種の資源管理はCCSBTの下で行われている。2006年年次会合で2007年漁期の合計11,810トンのTACが合意された(CCSBT 2006b)。内訳は、加盟国については日本3,000トン、オーストラリア5,265トン、ニュージーランド420トン、韓国1,140トン、台湾1,140トンである。協力的非加盟国についてはフィリピン45トン、南アフリカ40トン、EU10トン、オブザーバー国についてはインドネシア750トンである。ただし韓国、台湾は自主的に1,000トンを上限とすることとしたため、合計漁獲量は11,530トン以下となる。資源に例外的な状況が生じない限り日本は5年間、他国は3年間に渡ってこのTACを維持することとなった。

なお、2005年に決定した管理方策(総TACを漁獲データなどの資源指標から自動的に計算するルール)は、インプットデータである漁獲量およびCPUEが不確実となったことから見直すこととなり、短期的な暫定的管理方策を早期に策定した後、資源回復を目的とした長期的な管理方策を改めて開発することとなった。

 

ミナミマグロの資源の現況(要約表)

資源水準

低位

資源動向

横ばい

世界の漁獲量

(最近5年間)

13,00016,000トン

平均:14,900トン

我が国の漁獲量

(最近5年間)

5,7707,855トン

平均6,489トン

管理目標

見直し作業中

資源の状態

産卵親魚量は112,272166,312トン

2006年産卵親魚量は初期資源の10.112.7 %

管理措置

TACの設定:11,810トン(日本3,000トン)、ただし韓国、台湾の自主規制を考慮すると11,530トン

CCSBT登録漁船以外の漁獲物の輸入禁止

管理機関・

評価機関

CCSBT

 

執筆者

まぐろ・かつおグループ

ミナミマグロサブグループ

遠洋水産研究所

温帯性まぐろ資源部長

宮部尚純

温帯性まぐろ研究室

伊藤智幸・高橋紀夫・黒田啓行・境

数理解析研究室

庄野

 

参考文献

Anon. CCSBT 2006a.  Report of the eleventh meeting of the Scientific Committee, 15 September 2006 Tokyo, Japan. CCSBT, Canberra, Australia. 73 pp. http://www.ccsbt.org/docs/pdf/meeting_reports/ccsbt_13/report_of_SC11.pdf 2006118

Anon. CCSBT 2006b. Report of the thirteenth annual meeting of the Commission, 10-13 October 2006 Miyazaki, Japan. CCSBT, Canberra, Australia. 137 pp. http://www.ccsbt.org/docs/pdf/meeting_reports/ccsbt_13/report_of_CCSBT13.pdf 2006118日)

Anon.  (CCSBT)  2006c. Review of Japanese SBT Fisheries in the 2005 Fishing Season. Attachment 12-5, in Anon. (CCSBT), Report of the thirteenth annual meeting of the Commission, 10-13 October 2006 Miyazaki, Japan. CCSBT, Canberra, Australia. 118-123 pp. http://www.ccsbt.org/docs/pdf/meeting_reports/ccsbt_13/report_of_CCSBT13.pdf 2007220日)

Farley, J.H., and Davis, T.L.O. 1998. Reproductive dynamics of southern bluefin tuna, Thunnus maccoyii. Fish. Bull., 96: 223-236.