ビンナガ インド洋

(Albacore, Thunnus alalunga)


 

最近一年間の動き

台湾のはえ縄漁業はビンナガ価格低迷のため、メバチをより漁獲しており、2004年の総漁獲量は2001年に比べ半減した。

 

利用・用途

刺身および缶詰として利用されている。

 

漁業の概要

本種の漁業は、1950年代前半より、日本のはえなわ船により開始された。その後、台湾・韓国のはえなわ漁業が、1954年、1966年よりそれぞれ参入しはじめた。はえなわ漁獲量は、操業開始以来急速に増加し、開始後8年の1959年に1万トンレベルに達した。その後、漁獲量は1993年までは、1974(2.9万トン)1982年(2.4万トン)を除き、1万トンから2万トンの間で変動した。1985年から1992年まで、8年間にわたり台湾の流網漁業が行われ、2万トン近くの漁獲があり、この間の総漁獲量は3万トンレベルに達した。刺網漁業が終わった翌年の1993年には、漁獲量は2万トン以下に減少した。翌年1994年からはえ縄の漁獲量が急増し2001年には4万トンに達したが、その後減少傾向が続き2004年には2.3万トンまで落ち込んだ (IOTC 2006)(図12、附表12

図1. インド洋のビンナガの漁法別漁獲量 19502004年)(*その他は僅少)

 

2. インド洋のビンナガの国・地域別漁獲量(19502004年)

 

はえなわ・刺網漁業ほか、1984年からは、西インド洋でまき網漁獲が始まり、最大3,300トン漁獲した。本種漁業では、刺網漁業の行われた8年間と1950-51年を除き、89100%の漁獲量は、はえなわ漁業による。また、台湾はえ縄の漁獲量は1970年以来、総漁獲量の59割を占める(1、附表1

 

生物学的特性

分布】インド洋のビンナガの分布範囲は、5°N40°Sである。メバチやキハダが赤道海域を中心に分布するのに対し、本種の主要分布域は中緯度海域で、5°N25°S が成魚分布域、その中の1025°Sに産卵域、3040°Sに索餌海域があり、魚群の密度が高い。分布の南限や北限は季節によってやや異なる(図3

3. インド洋ビンナガの分布とはえなわ漁場

 

海流は、大きな空間スケールでビンナガの分布や漁場形成を左右する最も重要な要因と考えられている。赤道反流の南10°S付近に一種の収歛線が形成され、ビンナガ好漁場の北の境界となっている。

【回遊】ビンナガはよく発達した胸鰭を持ち、索餌または産卵のために大規模な回遊をする。インド洋における、回遊の研究は皆無で、経路などは不明である。

【形態】体は紡鍾形で肥厚し、完全に鱗でつつまれている。胸鰭は著しく細長くてリボン状を呈し、その先端は第2背鰭の基低の下方よりもさらに後方に達する。鰓耙数は30本以下、体の背面は黒青色、腹面は銀白色である。

【食性】ビンナガも他のまぐろ類と同様に、魚類・甲殻類・頭足類を主な餌として、生息環境中に多い餌生物を、主として昼間に無選択的に捕食する。したがって、胃内容物組成は海域や季節によってかなり変化する。西部インド洋では、ギマ科・ミズウオ科・ホウネンエソ科・アジ科・クロタチカマス科・ヒシダイ科などが主に捕食される(Koga 1958a)

【産卵】インド洋においては、現在のところ詳しい知見がない。以下は太平洋の場合である。西部太平洋のビンナガは、卵巣が200g以上になると産卵すると思われ、その最小体長は87cmである。雄では精巣重量150g以上のものが成熟個体とみなされるので、その最小体長は97cmである。卵巣卵の直径は成熟期では0.6mm以上となり、卵巣重量は100200gが普通だが、大型の成熟したもので200 g以上になる。体重20 kg前後の魚体で、1尾の抱卵数は180210万粒である(上柳 1955)。1産卵期中に複数回の産卵が推定されるので、実際の産卵数は抱卵数よりかなり多いと思われる。成熟に達する年齢は5歳あるいはそれ以上である。

【系群】太平洋とインド洋のビンナガの分布はオーストラリアの南側で、またインド洋のビンナガと大西洋のビンナガの分布はアフリカ南端で連続し、一部交流する可能性もあるが(古藤 1969)、血清学的見地からはそれらはかなり異質な反応を示し、別個の系群であることが示唆されている(鈴木 1962)。また、体長組成、仔稚魚、分布の特性から、インド洋は単一系群とみられている(Hsu 1994)。

【体長・体重関係】以下の体重(w: kg)・体長(尾叉長、l: cm)の関係式が報告されている。

Lee and Kuo (1988)

w = (3.383 × 10-5 ) l2.8676

w = (4.183 × 10-5 ) l2.8222

【年齢・成長式】インド洋ビンナガは、Huang et al. (1990)の鱗による研究によると、8歳まで確認されている。以下3つの成長式の報告がある。

L:尾叉長(cm)t:年齢

Huang et al. (1990)

Lt(cm) = 128.13(1-e-0.162[t-(-0.897)])

Lee and Liu (1992) 脊椎骨

Lt(cm) = 163.7(1-e-0.1019[t-(-2.0668)])

Hsu (1991) 体長組成解析

Lt(cm) =136(1-e-0.159[t-(-1.6849)])

【自然死亡係数】以下2件の報告がある。

Lee et al. (1990)

M = 0.206 Pauly (1980)の方法により推定。

Lee and Liu (1992)

M = 0.2207 はえ縄データを用い、Z=q*F+Mより推定。

 

資源状態

本種の資源評価は、 1998年以前はIPTP(インド洋・太平洋まぐろ開発管理プログラム)、1998年以降IOTC(インド洋まぐろ類委員会)が行ってきている。資源評価は、プロダクションモデル、はえなわCPUE解析、コーホート解析(VPA)などにより行われてきている。1998年におけるIPTPまぐろ専門家会議で行われたプロダクションモデル解析では、MSY3.1万トンと推定された。

その後、しばらく資源解析はされなかったが、2004IOTCの第1回温帯性まぐろ作業部会(清水)で、台湾のはえなわおよび刺網、ならびに日本のはえなわのCPUEを用いてプロダクションモデル(ASPICモデル)により行われた(IOTC 2004a)。日本のはえなわの対象魚の変化を考慮して、日本のCPUE時系列を5通り準備して解析が試みられた。これらのうちから比較的現実的な解が2つのケースで得られた。最も現実的と考えられるケースではMSY2.6万トン、内的増加率(r)は0.4と推定されたが、推定された資源量の変動は、近年のCPUEのトレンドとのフィットが悪く、これを説明していないと考えられた(図4。結論として、近年の漁獲量の増加が見られる一方でCPUEが比較的安定しているという状況は、プロダクションモデル解析では説明できないと考えられた。

4. ASPIC解析(ケース2

 

19851992年に台湾による流網漁業で最大2万トンもの漁獲圧があり資源状況が心配されたが、その後3万トン以下の漁獲が19931997年まで5年間継続したので、流網のあったころより漁獲圧が下がったと思われた。

しかし、1998年から2001年まで台湾のはえなわ漁獲量が2.12.6万トン以上に急増した。その結果、総漁獲量が4万トン前後といった高レベルとなり、1998年に推定されたMSY(3.1万トン)より1万トン近く上回る傾向が2002年まで5年間継続していた。しかし、2001年より漁獲量が継続的に減少しており、2004年には2.3万トンまで減少しMSYレベル以下の漁獲量となっている。

 

管理方策

2004年に実施されたプロダクションモデル解析では、前述のように頑健な資源評価結果は得られなかったが、一つのシナリオにおいて、ある程度現実的な結果が得られた。それによると、その時点での漁獲量は持続的レベルでないという見解が得られたものの、他の指標(平均体重、CPUE)は最近年減少傾向が見られなかった。これらの点を考慮し、2004年の第7回科学委員会では、信頼のできる資源評価結果がないことやprecautionary approach (予防的方策)の必要性を考慮し、信頼ある資源解析結果が得られるまでは、漁獲量、漁獲努力量は現状(2002年レベル)より増加すべきでないと提言した(IOTC 2004b)

 

執筆者

まぐろ・かつおグループ

カツオ・ビンナガサブグループ

遠洋水産研究所 国際海洋資源研究

西田

 

ビンナガ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準

中位から低位

資源動向

減少

世界の漁獲量

(最近5年間)

2.34.1万トン

平均:3.2万トン

我が国の漁獲量(最近5年間)

2,2423,690トン

平均:2,961トン

管理目標

MSY(不確実性があるものの23万トンとみられる)

資源の状態

持続的レベルでない

管理措置

漁獲量、漁獲努力量を、2002年レベルより増加すべきでない。

漁船数(24m以上)増加禁止。

他国漁船の受入制限。

はえ縄船トリポール使用(南緯30o以南)

管理機関・

関係機関

IOTC

 

参考文献

上柳昭治. 1955.  印度洋から得られたビンナガの成熟卵巣について.  水産学雑誌, 20(12): 1050-1053.

Hsu, C.C. 1991.  Parameters estimation of generalized von Bertalanffy growth equation.  Acta Oceanog. Taiwan., 26: 66-77.

Hsu, C.C. 1994.  The status of Indian Ocean albacore stock - A review of previous work. TWS/93/2/12.  In Ardill, J.D. (ed.), Proceedings of the 5th expert consultation on Indian Ocean tunas, Mahé, Seychelles, 4-8 October, 1993.  IPTP Col. Vol., (8): 117-120.

Huang, C.S., C.L. Wu, C.L. Kuo and S.C. Su. 1990.  Age and growth of the Indian Ocean albacore, Thunnus alalunga, by scales.  FAO IPTP/TWS/90/53.  12 pp.

IOTC. 2004a.  Report of the first session of the IOTC Working Party on Temperate Tunas.  IOTC-2004-WPTMT-R[EN].  19 pp.  http://www.iotc.org/English/documents/index.php  (20051129)

IOTC. 2004b.  Report of the seventh session of the Scientific Committee.  IOTC-2004-SC-R[EN].  91 pp.  http://www.iotc.org/English/documents/index.php  (20051129)

IOTC. 2006.  Nominal catch database.  http://www.iotc.org/English/data/databases.php (2006616)

Koga, S. 1958.  On the stomach contents of tuna in the west Indian Ocean.  Bull. Fac. Fish. Nagasaki Univ., 6: 85-92.

古藤 . 1969.  ビンナガの研究-XIV. はえなわ操業結果から見たインド・大西洋におけるビンナガの分布と魚群の移動についての若干の考察.  遠洋水産研究所研究報告, (1): 115-129.  http://www.enyo.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou1-115.pdf  (2006117)

Lee, Y.C., C.C. Hsu, S.K. Chang and H.C. Liu. 1990.  Yield per recruit analysis of the Indian Ocean albacore stock.  FAO IPTP/TWS/90/56.  14 pp.

Lee, Y.C. and C.L. Kuo. 1988.  Age character of albacore, Thunnus alalunga, in the Indian Ocean.  FAO IPTP/TWS/88/61.  8 pp.

Lee, Y.C. and H.C. Liu. 1992.  Age determination, by vertebra reading, in Indian albacore, Thunnus alalunga (Bonnaterre).  J. Fish. Soc. Taiwan, 19(2): 89-102.

Pauly, D. 1980.  On the interrelationships between natural mortality, growth parameters, and mean environmental temperature in 175 fish stocks.  Cons. Int. Explor. Mer., 39(2): 175-192.

鈴木秋果. 1962.  マグロ種族系統の血清学的研究VI.  南海区水産研究所報告, (16): 67-70.

 

付表1. インド洋のビンナガの国別漁獲量(トン)(19502004)(…:操業なし)

 

日本

台湾

韓国

インドネシア

はえ縄(FOC)

その他

合計

1950

6

6

1951

6

6

1952

61

6

67

1953

1,094

0

1,094

1954

2,734

90

6

2,830

1955

3,059

276

6

3,341

1956

5,075

530

6

5,611

1957

4,662

656

6

5,324

1958

6,285

991

6

7,282

1959

10,410

1,228

6

11,644

 

 

 

 

 

 

 

 

1960

11,062

1,062

6

12,130

1961

15,241

1,384

6

16,631

1962

17,649

1,337

6

18,992

1963

12,559

1,591

6

14,156

1964

17,814

1,536

97

19,448

1965

11,366

1,138

527

179

13,210

1966

13,058

1,740

647

168

15,614

1967

14,102

1,608

6,223

59

21,991

1968

10,053

7,560

910

831

19,354

1969

8,567

7,704

4,390

218

20,878

 

 

 

 

 

 

 

 

1970

4,926

7,196

1,659

670

14,450

1971

3,318

7,007

2,447

595

13,367

1972

1,409

6,976

3,848

545

12,778

1973

1,982

11,961

9,124

423

23,489

1974

2,793

17,421

9,760

41

262

30,277

1975

1,261

6,381

3,875

52

105

11,674

1976

1,173

9,748

4,194

135

70

15,321

1977

404

9,803

2,135

114

86

12,542

1978

418

12,808

4,626

205

103

18,160

1979

393

14,990

2,019

257

31

17,690

 

 

 

 

 

 

 

 

1980

621

10,971

1,842

229

35

13,697

1981

1,186

12,326

942

194

110

14,759

1982

1,292

22,048

647

185

549

24,721

1983

1,669

17,087

579

246

219

19,801

1984

1,830

13,933

368

314

913

17,357

1985

2,281

6,876

495

323

49

758

10,781

1986

2,501

26,228

365

56

726

330

30,207

1987

2,268

25,387

441

287

704

425

29,511

1988

1,312

25,781

367

336

1,769

416

29,981

1989

890

21,855

257

424

1,444

151

25,021

 

 

 

 

 

 

 

 

1990

954

27,782

164

370

1,760

429

31,460

1991

982

28,299

283

305

3,045

2,431

35,345

1992

1,778

12,430

111

509

2,416

3,434

20,678

1993

1,281

11,964

106

440

3,772

1,602

19,165

1994

1,787

14,435

145

604

4,921

2,899

24,792

1995

2,039

14,226

93

684

4,646

1,518

23,207

1996

2,413

16,930

222

1,300

7,544

1,988

30,397

1997

3,233

15,204

284

1,561

5,053

2,414

27,749

1998

3,214

21,572

231

1,461

9,071

2,608

38,158

1999

2,282

22,514

63

1,707

9,511

1,623

37,700

 

 

 

 

 

 

 

 

2000

2,567

21,650

177

2,659

8,293

2,522

37,867

2001

3,033

26,865

79

2,865

4,502

3,320

40,664

2002

3,271

21,503

13

2,628

2,916

2,825

33,157

2003

2,242

13,057

110

4,835

1,217

3,418

24,879

2004

3,690

12,451

376

4,419

667

1,214

22,817

(IOTC データベース:20066月現在)

 

付表2.インド洋のビンナガの漁法別漁獲量(トン)(19502004)(…:操業なし)

 

はえ縄

刺網

まき網

その他

合計

1950

0

0

6

6

1951

0

0

6

6

1952

61

0

0

6

67

1953

1,094

0

0

0

1,094

1954

2,824

0

0

6

2,830

1955

3,335

0

 

6

3,341

1956

5,605

0

0

6

5,611

1957

5,318

0

0

6

5,324

1958

7,276

0

0

6

7,282

1959

11,638

0

0

6

11,644

 

 

 

 

 

 

1960

12,124

0

6

12,130

1961

16,625

0

6

16,631

1962

18,986

0

6

18,992

1963

14,150

0

0

6

14,156

1964

19,442

0

0

6

19,448

1965

13,204

0

0

6

13,210

1966

15,608

0

0

6

15,614

1967

21,979

0

0

12

21,991

1968

19,336

0

0

18

19,354

1969

20,860

0

0

18

20,878

 

 

 

 

 

 

1970

14,444

0

0

6

14,450

1971

13,336

0

31

13,367

1972

12,747

0

31

12,778

1973

23,464

0

25

23,489

1974

30,247

0

30

30,277

1975

11,652

0

22

11,674

1976

15,297

0

24

15,321

1977

12,522

0

20

12,542

1978

18,132

0

28

18,160

1979

17,664

0

26

17,690

 

 

 

 

 

 

1980

13,674

0

0

23

13,697

1981

14,737

0

0

22

14,759

1982

24,172

118

12

419

24,721

1983

19,637

129

0

35

19,801

1984

16,689

0

558

110

17,357

1985

9,315

721

726

20

10,781

1986

14,796

15,176

218

17

30,207

1987

17,002

12,247

243

19

29,511

1988

14,960

14,733

267

21

29,981

1989

10,238

14,758

6

18

25,021

 

 

 

 

 

 

1990

9,051

22,022

341

45

31,460

1991

17,844

15,186

2,245

70

35,345

1992

16,013

1,322

3,298

45

20,678

1993

17,778

0

1,335

52

19,165

1994

22,153

0

2,577

61

24,792

1995

21,853

0

1,295

59

23,207

1996

28,756

0

1,584

56

30,397

1997

25,646

0

2,031

72

27,749

1998

36,516

0

1,569

72

38,158

1999

37,047

0

556

97

37,700

 

 

 

 

 

 

2000

36,586

0

1,164

117

37,867

2001

39,245

0

1,281

138

40,664

2002

32,277

0

776

103

33,157

2003

23,287

0

1,496

95

24,879

2004

22,457

0

243

117

22,817

(IOTC データベース:20066月現在)